27-強硬手段
おそらく、オーギュストたちは強硬手段に出るのだろう。
王女ヴィヴィアンの持病が悪化し、結婚などは絶対に不可能なほど異常な状態にする。
パーティの準備のために鏡の前に座らされ、レアは二ヶ月ぶりに見る自分の姿にひどいショックを受けた。
髪は痛み、顔は青ざめ、顔も体も骨と皮だけ……まるで骸骨のような様相だった。
(よく生きてるな……)
レアの姿は誰が見ても重病により間も無く死ぬ人間にしか見えなかった。
どう考えてもエーデルラントに嫁ぐことなど不可能で、偽装結婚を持ちかけたラインハルトでさえも、この姿を見たらまともに妊娠出産はできないと判断し、取引をなかったことにするのではないだろうか、そのようなことを彼女は考えた。
侍女たちは弱り切った王女を前に言葉を失い、目を合わせることもなく淡々と仕事をこなした。
パーティのために用意をされていたドレスはサイズが合わなくなっており、仕立て屋が急拵えでサイズを直し、背中の傷を隠すためにケープを用意して着せてやる。
侍女たちは背中の傷が鞭で打たれてできたものだと気付いてはいるものの、誰も触れようとはしなかった。
髪結いは傷んだ髪を誤魔化すように結い上げ、メイクは少しでも血色が良く見えるように頬紅を何回も肌に重ねた。
だがそれらは全て逆効果だった。
豪華なドレスは痩せ細った体を強調し、飾り立てられたヘアスタイルは傷んだ髪をありありと見せ付け、頬紅の赤と青白い肌のコントラストが、レアの衰弱しきった姿をより強調させた。
ドレスを着ただけで、レアはふらついた。
二ヶ月間の監禁生活によって足の筋肉が落ちてまともに動くこともできず、会場まではオーギュストの押す車椅子で運ばれることになった。
既に『ヴィヴィアン王女が持病の悪化』は国中に知れ渡っていた。
すれ違う貴族や侍従たちは痩せ細ったヴィヴィアンの姿に哀れみを隠せない様子だった。
会場に通され、国王アンリが開会の挨拶を行い、楽団が音楽を奏で始めても、レアは車椅子に座ったままだった。
当初の予定である、来賓者であるラインハルトが王女ヴィヴィアンと踊るダンスは健康上の問題で取りやめになっていた。
ラインハルトが挨拶に訪れる。
「ヴィヴィアン殿下、こんなに痩せ細って……」
ラインハルトがレアの前に跪くが、顔を上げる気にもなれなかった。
近くにジークフリートはいない様子だった。
(よかった……こんな姿、見られたくない……)
「オーギュスト殿下、王女と二人で話したいのだが」
ラインハルトからの申し出をオーギュストはすぐに却下する。
「申し訳ございません、医者からここへの長居は控えるように言われておりますので……」
「でしたら、私が王女の休む部屋を訪ねましょう」
「ラインハルト殿下、まだあなたは妹と婚約すらしておりません」
オーギュストはあくまで穏やかな態度を崩さないが、会話の端々に強い拒絶があった。
「あまり誤解を招くような行動は控えた方がよろしいのではないでしょうか」
ラインハルトの側近たちはレアの姿を見て眉を顰めている。
おそらく、彼らは国へ帰ったら婚約破棄のための手続きを始めるのだろう。
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