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24-阻止


 疑問が確信に変わり、ジークフリートの行動から迷いが取り払われた。

 立ち去ろうとするレアの腕を掴み、抱きしめた。


「あ……」


 違います、と振り払うことも、抱きしめ返すこともできなかった。

 レアはされるがままとなり、ジークフリートの腕の中で躰の力が抜けていくのを感じた。


「レア……どうして君が……」


 もう隠すことはできない。


「ヴィヴィアン殿下!」


 庭園に、男の声が響く。

 ジークフリートはすぐにレアから離れる。


 アランが焦りを浮かべて二人に駆け寄る。


「こんな時間に何をされているのですか!」


 レアが部屋を抜け出したことに気付き、探しに来たのだろう。

 アランはジークフリートの姿を見て、目を丸くする。


「あなたは……」

「皇太子殿下の命でここで探し物をしておりました……王女殿下とは偶然、」


 アランからの疑問にジークフリートが答える。

 レアも頷く。


「そうですか、偶然ですか……」


 納得はできない様子だが、アランはレアに向き直る。


「もう夜も遅いです、部屋に戻りましょう」


 



 部屋に戻る途中、アランは言葉を漏らした。


「私も今日、初めてジークフリート殿が皇太子の騎士になっていたことを知りました」


 そう言いながら、焦りを隠しきないのか乱暴に頭を搔く。


「以前にも彼のことを調べていましたが……

 おそらくどこかの有力貴族の落胤か何かなんでしょうけど、まさかこのような形で再会するとは……」


 六つの時に突然伯爵家の養子として迎え入れられ、十六で軍に入隊、異例の昇進を重ね僅か五年で准尉。

 かと思いきや何の前触れもなくラインハルト直属の騎士に大抜擢。

 だが、彼の出自に関してはアランも知らない様子だった。


「先ほどは、ジークフリート殿とどのような会話を?」

「いえ……偶然会っただけなので……何も」


「それなのに抱き合ってたんですか? こんな馬鹿広い宮殿で偶然会って?」


 先ほどの様子はしかと見られていたようで、隠し切ることは難しそうだった。


 アランは溜息を吐き「これだから娼婦は……」などと呟く。


「ヴィヴィアン殿下、あなたはパーティの時は皇太子と何か密談をされていたようですが……

 何を話されていたかお聞かせいただけますか?」


「……体調が優れないから個室で休ませてもらっていただけです」


 ラインハルトにヴィヴィアンではないことを、とっくに気付かれている。

 偽装結婚を持ちかけられ、異母弟のジークフリートを愛せと命じられた。


 この話をアランにするべきだろうか。

 アランは『シャルマニアに不利にならない形で婚約破棄を達成すること』を目的に動いている。

 一方でラインハルトは『自らの目的のために婚姻を成立させたい』


 だが、本来であればシャルマニアにとって一番の利益となるのは、本物のヴィヴィアンが生きていた頃のように『婚姻が成立すること』なのではないのか。


「アラン……もし私がラインハルト殿下から婚約破棄をされなかったら、どうなりますか」


「シャルマニアは爆弾を送り出したいとは思わないはずです。

 もしヴィヴィアン王女が偽物だと知られることになったら……そんな不安を抱えるくらいなら、頃合いを見て刺客を送り込むでしょうね」


 婚約破棄をされた場合は、ほとぼりが冷めた頃に『ヴィヴィアン』の死亡を偽装する手筈になっている。

 どちらにせよ『ヴィヴィアン』は死ななければならないのか。


 だが刺客を送られる場合、自分は本当に命を落とすことになる。


「詳しい話はシャルマニアに戻ってから伺います。

 オーギュスト殿下には私から報告をするので、どうかこれ以上勝手な行動はお控えください」


 アランは呆れきった様子でそう言うと、レアを侍女に任せ、立ち去った。

 

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