24-阻止
疑問が確信に変わり、ジークフリートの行動から迷いが取り払われた。
立ち去ろうとするレアの腕を掴み、抱きしめた。
「あ……」
違います、と振り払うことも、抱きしめ返すこともできなかった。
レアはされるがままとなり、ジークフリートの腕の中で躰の力が抜けていくのを感じた。
「レア……どうして君が……」
もう隠すことはできない。
「ヴィヴィアン殿下!」
庭園に、男の声が響く。
ジークフリートはすぐにレアから離れる。
アランが焦りを浮かべて二人に駆け寄る。
「こんな時間に何をされているのですか!」
レアが部屋を抜け出したことに気付き、探しに来たのだろう。
アランはジークフリートの姿を見て、目を丸くする。
「あなたは……」
「皇太子殿下の命でここで探し物をしておりました……王女殿下とは偶然、」
アランからの疑問にジークフリートが答える。
レアも頷く。
「そうですか、偶然ですか……」
納得はできない様子だが、アランはレアに向き直る。
「もう夜も遅いです、部屋に戻りましょう」
♢
部屋に戻る途中、アランは言葉を漏らした。
「私も今日、初めてジークフリート殿が皇太子の騎士になっていたことを知りました」
そう言いながら、焦りを隠しきないのか乱暴に頭を搔く。
「以前にも彼のことを調べていましたが……
おそらくどこかの有力貴族の落胤か何かなんでしょうけど、まさかこのような形で再会するとは……」
六つの時に突然伯爵家の養子として迎え入れられ、十六で軍に入隊、異例の昇進を重ね僅か五年で准尉。
かと思いきや何の前触れもなくラインハルト直属の騎士に大抜擢。
だが、彼の出自に関してはアランも知らない様子だった。
「先ほどは、ジークフリート殿とどのような会話を?」
「いえ……偶然会っただけなので……何も」
「それなのに抱き合ってたんですか? こんな馬鹿広い宮殿で偶然会って?」
先ほどの様子はしかと見られていたようで、隠し切ることは難しそうだった。
アランは溜息を吐き「これだから娼婦は……」などと呟く。
「ヴィヴィアン殿下、あなたはパーティの時は皇太子と何か密談をされていたようですが……
何を話されていたかお聞かせいただけますか?」
「……体調が優れないから個室で休ませてもらっていただけです」
ラインハルトにヴィヴィアンではないことを、とっくに気付かれている。
偽装結婚を持ちかけられ、異母弟のジークフリートを愛せと命じられた。
この話をアランにするべきだろうか。
アランは『シャルマニアに不利にならない形で婚約破棄を達成すること』を目的に動いている。
一方でラインハルトは『自らの目的のために婚姻を成立させたい』
だが、本来であればシャルマニアにとって一番の利益となるのは、本物のヴィヴィアンが生きていた頃のように『婚姻が成立すること』なのではないのか。
「アラン……もし私がラインハルト殿下から婚約破棄をされなかったら、どうなりますか」
「シャルマニアは爆弾を送り出したいとは思わないはずです。
もしヴィヴィアン王女が偽物だと知られることになったら……そんな不安を抱えるくらいなら、頃合いを見て刺客を送り込むでしょうね」
婚約破棄をされた場合は、ほとぼりが冷めた頃に『ヴィヴィアン』の死亡を偽装する手筈になっている。
どちらにせよ『ヴィヴィアン』は死ななければならないのか。
だが刺客を送られる場合、自分は本当に命を落とすことになる。
「詳しい話はシャルマニアに戻ってから伺います。
オーギュスト殿下には私から報告をするので、どうかこれ以上勝手な行動はお控えください」
アランは呆れきった様子でそう言うと、レアを侍女に任せ、立ち去った。
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