22-レアとヴィヴィアン
ヴィヴィアンに、レアのことを話してしまおう。
「レアは娼婦です、」
その言葉に、ヴィヴィアンは僅かに肩を強張らせた。
「あの場所から助け出したかった、」
ジークフリートは、ヴィヴィアンに近付く。
今すぐ頬を叩いてくれたってかまわなかった。
「もっとあの子のことを知りたかった、いろんな場所に連れて行って、楽しそうに笑う顔が見たかった……」
「でも、事故であっさりと死んでしまった」
「自分は遺体を見ることすら叶わず……彼女の死を信じきれないまま今日まで生きてる」
「もっと自分に力があれば、もっと早くあの子をあの場所から連れ出して……」
ジークフリートは言いかけた言葉を飲み込む。
過去のことを思い返して、ああすればよかった、こうだったらなどと言うのは愚かしいことだ。
「……それだけです」
ヴィヴィアンはそれらを聞くと、顔を上げてジークフリートを見つめる。
「話してくれて、ありがとうございます」
そして、微笑んだ。
ヴィヴィアンは彼が思っていたよりもずっと寛大な態度を取った。
王女であるはずの自身が娼婦と重ねられていたとしても、怒るどころか不快な態度すら見せない。
「自らの意思に反して娼婦として生きるのは……きっと、女性にとって辛いことでしょう」
必死で言葉を選んでいるのか、ヴィヴィアンの言葉はたどたどしい。
「レアさんは、ジークフリートさんのような方に想われて、自分を助け出そうとしてくれて、きっと幸せだったはずです。彼女は、最後に希望を抱きながら死ぬことができたのではないでしょうか」
それはその場しのぎの慰めとは明らかに異なる、全てを包み込むかのような、優しい語り口調だった。
「ジークフリートさんが後悔することではない、私はそう思います」
ジークフリートの手を取る。
彼は動揺を示したが、それを振り払う様子はなかった。
ヴィヴィアンの目にはわずかに涙が浮かんでいるように見えたが、彼女はそれを知られまいとすぐに目を伏せ、ジークフリートの胸にもたれかかった。
「私の存在が、あなたの慰めとなるなら……」
ジークフリートは恐る恐るといった様子でヴィヴィアンの髪に触れ、そのまま頰を優しく撫でる。
ヴィヴィアンは目を瞑り、その手に身を委ねた。
だが、彼女に降り注がれた言葉は、期待と真逆の言葉だった。
「……あなたじゃだめなんだ」
__拒絶。
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