表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/34

19-兄弟


 母親に似ていると言われたことは一度もなかった。

 顔立ちも、髪の色も、目の色も、どれ一つとして母から受け継いだものはない。


 だが母から「あなたは父親に似ている」と言われたこともない。

 それでも鏡を見る度に、自分の父親がどんな顔をして、どんな髪の色で、どんな目の色をしているのか、否が応でも直視させられた。


 目の前の男は髪の色こそ違えど、その顔も、目の色も…… 


 この男に感じている、初めて会ったとは思えない懐かしさにもよく似た既視感……

 それはまるで、自分の鏡に映った姿を見ているかのような気味悪さと合わさり、恐怖すら感じた。


 ブロンドの青年は、ゆっくりと口を開く。


「……ジークフリート・フォン・ヘッセンバーグ。


 母親の死後、皇帝の側近であるアメリア・ミュラーの親友の子ということで、皇帝の取り計らいでヘッセンバーグ伯爵家の養子として迎えられる」


 なぜこの男は自分のことを知っているのか。

 どうしてこの手紙を持っているのか。


「だがヘッセンバーグの家はお前を息子たちと同じように扱いはしたが、息子たちと同じように愛してはくれなかった」


 問い詰めたいという気持ちと、これ以上聞きたくないという感情がせめぎ合う。


「自分を愛してくれた者を失い、新しい家族からは愛されず、最後には愛する者を失ってしまった……哀れなものだ」


 もしこの手紙の内容が本当だとしたら、自分は……


「余の名前はラインハルト・ユリウス・フォン・エーデルラント」

 

「お前の兄だ」


 エーデルラント。

 この国の名を名乗れる人間は限られている。


 ジークフリートはその名前を知っていた。


(この国の皇太子……)


 いや、そんな馬鹿げた話があるはずがない。


 この手紙だって、悪い冗談だ。

 目の前の男は自分を皇太子と言い張る、ただの狂人と言われた方が真実味がある。


 半信半疑のジークフリートを前に、ラインハルトと名乗った男は立ち上がる。


「余と一緒に来い」


 断る間も無く、ラインハルトはジークフリートの手を取る。

 そして応接室から出て行き、肩で風を切り兵舎の廊下を堂々と歩く。


 監視役は応接室を出て行く二人を止めようとすらしなかった。

 それどころか、すれ違う軍の人間たちも、誰一人として彼らを止めることはない。


 二人と目を合わせようともせず、黙って道を譲る。

 中には会釈する者すらいた。


(一体、何が起こっているんだ……)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ