15-看破
彼がレアをアランから引き離し、ジークフリートに個室まで案内させたのは、紳士的に振る舞っていたわけではなく、最初からこの話をするためだったのか。
「そんなことをしたら……」
まったく予想していなかった話に、思考が追いつかない。
私はジークとまた会うために、あなたに婚約破棄をしてもらうために、ここにいる。
だがこの男の申し出は……
「わかりやしない、奴は余に似ている。あの髪の色も、皇帝の髪と同じ色だ。誰も気付きはしない」
「王女を入れ替えることだってできるんだから」
耳を疑った。
ラインハルトの目は冬の海のように冷たい。
「余は何年間も奴を監視してきた。奴のことは全て知っている」
ラインハルトの青い瞳は、レアを捉えて離さない。
「奴が一時期足繁く娼館へ通い、そこの女と一緒になろうとしていたことも」
「だがその女は事故で亡くなった」
「その一ヶ月後に、死んだ女によく似たお姫様が自分の目の前に現れるなんて、運命的ではないかね」
「なぁ、レア?」
レアの心臓が跳ね上がる。
この男は全て知っている。
私がヴィヴィアン王女でないことに、とっくに気付いている。
全身から血の気が引いていくのを感じる。
手足の感覚がなく、震えが止まらない。
ラインハルトが立ち上がる。
こちらを冷たく見下ろすラインハルトの顔を見ていると、ジークフリートから責められているようで、レアは苦しさすら覚えた。
「本来であれば、皇室欺瞞罪で即刻処刑だ」
彼は社交パーティの場でも、騎士がいたとしても、今この場でも常に腰に剣を携えている。
腰の剣が、冷たい目が「その気になればお前などいつでも殺せる」と語っている。
「だが余の目的のために、お前を生かす価値がある……
ジークフリートを余の側に置き続けるために、」
彼は薄ら笑いを受けべながら手を差し出す。
「余と偽装結婚をしよう」
「シャルマニアではなく、余のためにヴィヴィアンであり続けろ」
私はどうすればいい。
だがきっと、自分がこの取引を拒否すれば、ただでは済まされないだろう。
私はジークとまた会うために、ヴィヴィアンになった。
しかしラインハルトの取引は、自分にとって悪い話でないのではないか。
レアに二度と戻ることができないとしても、自分の願いが叶う。
一呼吸置いた後、レアはラインハルトの手を取った。
ラインハルトはレアの躰を引き寄せ、囁いた。
「日をまたぐ頃、北の離宮の中庭、白薔薇の咲く庭園に来るといい」
「ヴィヴィアン、その顔を使って、ジークフリートに愛されてみろ、」
それがラインハルトと交わした、新たな取引だった。
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