14-新たな取引
数時間後、ラインハルトがレアのいる部屋に訪れた。
そろそろパーティも終わりの時間か。
立ちあがろうとするレアをラインハルトは制止する。
「少し話そう」
ラインハルトは向かいのソファに腰掛ける。
「……ジークフリートの様子がおかしかったが、何か心当たりはあるかね?」
話したくなかった、話していいものなのかもわからない。
レアはただ一言「わかりません」と言おうとした。
だがラインハルトの眼光は鋭く、それはまるで「知らないなどとは言わせないぞ」と語っているようであった。
(この人に変に隠し立てをしてはいけない……)
「私は……ジークフリートさんの想い人に、似ているらしいです」
ラインハルトはその言葉に、目を細めた。
「余は正直者は嫌いじゃない」
そう前置きすると、再び質問を投げかける。
「ヴィヴィアン殿下、お前はジークフリートをどう思っている?」
「……それはどういった意味ですか」
「お前は余ではなく、ジークフリートを愛せるか?」
この人は一体何を言っているんだ……
まったく意図のわからない質問に返す言葉が見つからず、レアはジークフリートの青い瞳をただ見つめることしかできない。
「ジークフリートは余の異母弟だ」
「え……」
さも当然のことのように放たれた言葉は、衝撃的なものだった。
ジークはかつて父親には会ったことすらない、と言っていた。
(つまりこの国の皇帝が、彼の父親だということ……?)
「不思議なものだ……同じ男を父に持ちながら、産まれた胎が異なるだけで、その後の人生を左右されてしまう」
ジークが皇太子であるラインハルトの異母弟、そう言われると納得ができた。
二人の顔立ちは似ている。
あの青い瞳も、全く同じ。
「余は奴をずっと気にかけていた。なんとかして余のそばに置きたかった。一ヶ月ほど前、軍隊内で揉め事を起こしたと聞いたとき、好機と思い無理矢理宮殿に連れてきた。
ジークフリート自身は、自分の父親が誰か知らなかったようだがな」
なぜ、ラインハルトはこのような話をレアにするのか。
「余は父のことを憎んでいる」
「あの男は皇帝という立場を利用して好き勝手に振る舞い、二人の女を不幸にし、死に追いやった。
……一人はジークフリートの母親で、もう一人は余の母親だ」
「ジークフリートは余にとっては唯一の大切な家族だ、だが誰もそれを認めようとはしない。
それどころか、奴を側に置くのは危険などとほざく連中すらいる」
ラインハルトは真剣な面持ちでレアを見つめる。
「だから余はエーデルラント皇家に、ジークフリートの血を残したい。
そして奴を皇家に繋ぎ止めたい、ずっと余の側に置くために……
そのためには、ヴィヴィアン王女には余ではなくジークフリートを愛してほしい」
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