12-予想外の再会
「緊張をしているようだな」
ラインハルトが口を開く。
「療養から戻ったばかりだと聞いているが、調子は如何かね」
自分はラインハルトに嫌われるためにここへ来た。
そのことを忘れてはいけない。
「皇太子殿下だけには嘘は吐けません……
正直に言いますと、体調は芳しくない状態です」
ラインハルトにはあえて気を使わず、王族としてのモラルから外れない範囲で図々しく振る舞う。
アランからの指示だった。
「ご迷惑をおかけする前に、シャルマニアに帰りたいです」
招かれておいて帰りたいなどと言うのは、失礼極まりないだろう。
ラインハルトからの返答はない。
「実は病も完治しておりません、治る見込みも……」
レアがそこまで言うと、ラインハルトが口を開く。
「自分に瑕疵があることを包み隠さずに伝える、それはマイナスにしかならないが、時と場合によってはプラスに働くこともある」
「余は後者だ」
失敗だった。
レアの言葉をまったく意に返していない様子だった。
ラインハルトに伴われ、ヴィヴィアンに扮したレアは会場に入る。
会場中の視線がラインハルトとレアに集まる。
「ラインハルト皇太子殿下と、シャルマニア王国王女・ヴィヴィアン殿下です!」
宮仕が声を上げると、会場中の人間が二人にかしずく。
パーティが始まった。
このパーティの主役であるラインハルトとレアの周囲には、貴族たちが集まり人だかりができる。
貴族たち一人一人に挨拶をしていると、ラインハルトが口を挟む。
「そなた達、あまりシャルマニアの王女を囲むな。これではパーティが挨拶だけで終わってしまう」
ラインハルトが合図を送ると、楽団が音楽を奏で始める。
「今夜は挨拶ではなく踊るための宴だ、皆、遠慮することはない」
皇太子の呼びかけを拒むわけにも行かず、貴族達は挨拶もそこそこにそれぞれのパートナーと踊り始めた。
「そこの侍従も、パーティに来て一曲も踊らないのは無礼であるぞ」
ラインハルトはアランにそう言い放つ。
「皇太子殿下の仰る通りでございます、」
アランは愛想笑いを浮かべ、近くにいた女性に声をかける。
その様子を見送ると、ラインハルトがレアの耳元で囁く。
「個室でパーティが終わるころまで休んでいれば良い、貴族たちのことは気にするな」
先ほどレアが「体調が優れない」と言ったから、この人は無理やり貴族達を引き上げさせたのか。
「余は公務がある故、余の騎士に個室までの案内と護衛を任せる、何か用事があればそいつに言うといい」
「はい……」
レアが思っていたよりもずっと、ラインハルトは紳士的な振る舞いを見せる。
だがこのままだとアランと引き離されてしまう。
しかし体調が悪いと言ってしまった手前、無下にすることもできない。
「ラインハルト殿下、」
レアとラインハルトに、騎士団の制服を着た青年が近づく。
「ちょうどいいタイミングだ。
王女殿下を個室に案内し、パーティが終わるまで護衛をしてくれ」
レアはその騎士の顔を見て、我が目を疑った。
「余の騎士のジークフリートだ。まだ雇い入れたばかりだが実力は本物だ」
騎士の青年__ジークフリートも同様だった。
二人はしばしの間、硬直し見つめ合った。
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