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それのどこが悪い!?【完全版】  作者: ぬこのここぬこ


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29/62

第29話:購買のたまごサンド、いつもの特等席


4時間目のチャイムが鳴り響いた瞬間、教室の空気は一気に甘く、賑やかなものへと塗り替えられた。


「お腹すいたーーっ!」


マイが机の上にだらんと突っ伏して、大げさに声を上げる。


「はいはい、ゆらりん、早く行かないとたまごサンド売り切れちゃうよ」


チカが手早く筆箱を片付けながら、クスッと笑って揺里の袖を引いた。


三人で廊下を急ぎ、無事に手に入れたお目当てのパンを持って、いつもの中庭が見える渡り廊下のベンチへと向かう。ここは、一番高い位置にある太陽の光がまっすぐに差し込む、私たちのちょっとした特等席だ。


「いっただっきまーす!」


マイが購買のいちごオレのストローを勢いよく吸い込み、揺里はふわふわのたまごサンドを一口齧った。口いっぱいに広がる優しいマヨネーズの味が、午前中の授業の疲れをすうっと溶かしていく。


「ねえねえ、さっきの数学の先生のモノマネしてよ、チカ」


「え、嫌だよ、恥ずかしいし」


「いいじゃん、誰も見てないって!」


揺里がチカの肩をつつくと、チカは困ったように眉を下げながらも、眼鏡を押し上げる仕草を完璧に再現してみせた。その絶妙なクオリティに、揺里とマイは同時に吹き出し、ベンチがガタガタと揺れるほど笑い転げた。


「もー、チカ最高! お腹痛い!」


お腹を抱えて笑っているうちに、揺里の目からじんわりと涙が溢れてきた。可笑しくてたまらないのに、なぜだか一度出た涙がどうしても止まらなくなってしまう。視界がにじんで、二人の顔がぼやけていく。


「あれ? ゆらりん、笑いすぎだってば……って、え? 大丈夫?」


マイが慌てて覗き込んできて、チカも持ってきたパンを膝の上に置いた。


二人の顔からさっきまでの笑顔が消え、急に真剣な、心配そうな表情に変わる。


「ゆらりん、本当に笑い涙? どっか痛い?」


チカがポケットから素早くティッシュを取り出し、揺里の手に握らせてくれた。


「ううん、本当に面白かっただけだよ。ほら、涙が止まらなくなっちゃって」


揺里はティッシュで目を押さえながら、困ったように笑った。


マイは揺里の肩を優しくさすりながら、「もー、びっくりさせないでよ。最近のゆらりん、ちょっと疲れ気味だったから心配になっちゃうじゃん」と、少し眉を下げて顔を近づけてくる。


「ありがと。もう大丈夫」


涙を拭い去ったあとの瞳に、正午の眩しい光が反射する。


ただじゃれ合って、笑って、心配されて。

友達の真っ直ぐな温かさが、揺里の胸の奥を柔らかく包み込んでいた。

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