第二話 確信:小さな的中が、未来を狂わせる
第二話「確信」です。
偶然だと思っていた夢が、少しずつ現実と重なり始める。
小さな出来事の積み重ねが、康介の中で「確信」へと変わっていきます。
夢を見ることは、未来を知ることなのか。
それとも、別の何かを見せられているのか。
今回もお楽しみいただければ幸いです。
三度目は、もう疑いの余地がなかった。
木曜の午後、康介は会議室の扉を開けた。先輩の机にマグカップがあった。手を伸ばす前から、嫌な感じがあった。覚えのある嫌な感じだった。
倒した。中身はコーヒーで、資料の上に広がった。
先輩は舌打ちもせず、ただティッシュを取りに席を立った。康介はその後ろ姿を見ながら、ようやく思い出した。今朝見た夢の中で、自分は同じ扉を開け、同じ机の前で、同じ動きをしていた。手のひらの冷たさが、夢の中のものか、今のものか、康介には区別がつかなかった。
その晩から、康介は夢の内容を記録するようになった。スマートフォンのメモ機能に、起きた瞬間に箇条書きで残す。改札、くじ、マグカップ。次は何が来るのか。来るとしたら、いつなのか。
記録は増えていったが、当たるのは決まって些細なことだった。電車が三分遅れる。コンビニの店員が変わる。誰かが咳をする。康介はそのどれにも丸をつけた。丸の数だけが、夜ごと増えていった。
河原には、また寄った。理由は自分でもうまく説明できなかった。ハルは決まった場所にいて、探す手間はなかった。
「お前にも、こういうことあるのか」
猫は答えず、前足を一度舐めた。康介はベンチに腰を下ろし、スマートフォンのメモを見返した。丸のついた項目を、もう一度上から数えた。
数えても、何の役にも立たなかった。それでも数えるのをやめられなかった。
眠る前、康介は願ってしまった。次は大きなことが当たればいい、と。何かが変わるくらいの、はっきりしたことが起きればいい、と。
願ったことを、すぐに後悔した。後悔しても、願いはもう手の中から出ていった後だった。
第二話「確信」を読んでいただき、ありがとうございます。
偶然なのか、それとも本当に未来を見ているのか。
康介は少しずつ、その答えに近づいていきます。
でも、知ることができる未来が、必ずしも幸せなものとは限りません。
次の夢が何を映すのか。
引き続きお楽しみいただければ嬉しいです。




