第8話 初仕事・続
「警備もいるな。一体どうやって侵入するつもりなんだ。」
柵も2mは超えている。
「そりゃあこうよ。」
敷地の後ろの方の柵を引っ張り始めた。
「まさかとは思うが、柵を壊そうとしているのか?」
「形が歪んで入れるぐらいになるまでやる。
幸いこの街は夜に出歩くような奴はいないからね。
荒くれ者たちにこの時だけは感謝だね。」
もっと、スタイリッシュに柵を乗り越えるのかと思っていたので表情抜けしていると、それを察したように言う
「かっこいい方法で侵入すると思った?
残念ながら我々はそのようなものには無縁だよ。
さ、引っ張るの手伝って。そっちの方が力強いでしょ。」
柵に人が1人ギリギリ入れるほどの穴ができた。
これなら中に入れる。
ラーナが先行した。先程より声を潜めてラーナが言う。
「ここからとしては、まず天井にフックを使って登る。
音を立てるな。
そして屋根裏から侵入だ。」
と言うと、ラーナはフックを伸ばし、天井に着地した。
それに続いて、私も屋根の縁を…つかみ損ねた。
まずい落ちる。
落ちかけた私の手をラーナが掴み、引き上げる。
「すま…」
謝ろうとすると、ラーナは口に人差し指を当てる。
静かにしろということだろう。
屋根裏に続く屋根の扉を見つけて、中に侵入した。
埃臭い屋根裏だ。紙が放置されている。
恐らく税金の取り立ての書類、あるいは闇金関係だろう。
ここから下に降りるには梯子を降りないといけない。
すると、コツ、コツと音がする。
なんと梯子を登って来ているではないか。私が焦っていると、ラーナは梯子が着いていない側の場所に位置し、ナイフを構える。私は物陰に隠れた。
「物音が聞こえたような気がしたんだが…」
言い終わるとラーナがその男の首を左手で締め、口を閉じ、目や腹にナイフを数箇所刺した。
鮮血が飛び出てラーナにかかる。
しばらくすると男が動かなくなる。
その死体を床に置いた。自分についている血は気にも留めていない様子だ。
そいつは死んだ。
人の死体は船で見慣れたつもりであった。しかし、目の前で命の灯火が失われるは初めて見た。彼女と私では見てきた世界が違うのだろう。
ラーナの目の合図により、私たちは下におりた。
長い廊下になっていた。
廊下には巡回している警備がいる。
素早く使われていなさそうな部屋に駆け込んだ。
するとラーナが取り出したのはあの特徴的なナイフ。
そう。倉庫にあったものだ。
取り出すと円を指で一回転回す。そしてラーナは自身の胸の方にそのナイフを近づける。
「…何を!」
躊躇いもなくそれをラーナ自身の胸に突き刺す。痛そうに右目のみを瞑る。突き刺した瞬間である。ナイフは光って消えた。
そして廊下の方でバタッと倒れる音がする。
さっきの警備だ。
胸に手を当ててみると、心臓が止まっている。
死んでいた。
「これは…?」
私は言いようのない恐怖に襲われていた。
唐突に自分の胸をナイフで貫いた事、警備が死んだこと。
ナイフが消えたこと。あまりにも聞きたいことが多すぎた。
「説明は後、今は今に集中して。」
ラーナは気にもとめず、廊下のドアを片っ端から開けて中を物色していく。
私もその姿を見て、別のドアを開けた。
中は執務室のような構造だ。
紙やペンが机の上に置かれている。
引き出しの中を漁ると、金貨の入った袋がいくつか発見されたので回収した。
部屋の外に出るとらラーナは物色を終えたらしく、梯子の方を指さしている。撤退だろう。
ラーナをが先にいった。
私は素早く動くラーナの背中を必死に追っていただけだった。
警備兵は見当たらない。
このまま脱出するだけだ。
夜の街、特に盗みをした後の街は普段とは変わって見えた。同時に初めてやったのだと言う実感も湧いてきた。
いや、やってしまったの方が近いか。




