第9話 ソウルギア
また朝が来た。
船漕ぎの時は鐘の音で目が覚めるのが普通だった。
今でも自然に同じ時刻に目が覚める。
ラーナは既に起きており、朝食を作っていた。昨日買っていたパンを焼いている。
「おはよ。」
目覚めはとても良かった。というより、船漕ぎ時代が悪かっただけかもしれない。
朝食ができたようだ。ラーナが机の上にトーストを置く、私の分もあるようだ。
私はラーナに感謝を伝えつつ、トーストにかじりつく。
焼きたてのパンなど食べたことがなかった。こんなものなのか。小麦の香り、このサクサク感。
うーん。なんとも美味。初めてかもしれない。まとも食べ物を食べたのは。
しかし、彼女には聞かないといけないことがある。
「なぁ、ラーナ。
仕事の時のあれ、なんなんだ?」
「ん?あれって?」
「あれだよ、あのナイフ。お前が自分に刺した。」
「あぁ、あれね?
知らないの?ソウルギア。」
「一体なんなんだ。それは。」
「人の願いが形になったもの、って言われてる。」
「言われてる?」
「私もよく分かってない。」
「分かってないのに使っているのか。」
ラーナが手で髪をクルクルさせている。
「使えればどうだって良くない?仕組みとか。」
「…それもそうか。」
「私の場合は、命だろうと物だろうと、なんでも盗むことができる。」
「そんなめちゃくちゃな。」
人差し指を突き立てる。
「ただし条件がある。相手がこの物が無くなるかも、盗まれるかもって思っておかないといけない。それと、1日1回しか使えないね。」
「とはいえ、なんでも盗めるってのはかなりの手札になるな。」
「私は思ってるんだろうね。
奪われたものを奪い返すって。」




