第32話 がらくた屋
明日の約束の時間まで暇だ。
ここはあえて、大通りから出て、小道へと進んだ。
陽の差す大通りと違い、ここは少し薄暗い。
その時、私の左側の方からチリン。
という音が聞こえる。
それと同時に扉が開く。
「おっと。
失礼。」
メガネをかけていていかにも知的そうな男性が出てきた。
そのドアをちらっと見る。
扉には張り紙がされていた。
がらくた屋
大きな文字でそう書かれていた。
その下に、
いらないもの、変わったものを買い取ります。
そう書かれていた。
……変わった店だな。
入ってみるか。
私は店のドアを開けた。
チリンと、再び鈴の音が響く。
「らっしゃーい。」
店の奥の方から声が響く。
店はカウンターで仕切られており、カウンターの奥には部屋がある。
その部屋から店員と見られる人が姿を見せる。
黒みがかった赤い髪の毛をストレートで長く伸ばしている。ジト目で、こちらを見つめてくる。
多分女だ。
「初めての顔だな。」
「そうだな。
ここはどんな店なんだ?」
店員が私の後ろの棚を指さす。
棚の上には、なぞの緑色に発光する金属片や、何かの角のようなもの、そして瓶に詰められた紫色の液体。
「ああいう物を買い取り、販売している。
売るでも、買うでも、好きにればいい。」
店員は接客中なのにも関わらず、煙草を取り出した。
……ん?
店員の手が少し光ったと思うと、あっという間に煙草には火がついていた。
「ちょっと待て。」
「なんだ?
言っておくが吸うのはやめないぞ。」
「そうじゃなくて。
今手のひらから火を出したように見えたが。」
「は?
普通に恩寵だが。」
「……なんだそりゃ?」
店員は首を傾げる。
「知らないことなんてあるか?
教会風に説明すると、神からのお恵みだそうだよ。
だとしちゃぁ1ミリも信じてない俺が使えるのはおかしいけどな。」
そんなものがあるのか……
やはり世界は広く、私の知る世界は狭い。
「で、買うのか?
売るのか?
冷やかしはお断りだ。」
「今日はやめておく。
また用事があればまた来る。
それでは。」
私は店を後にした。
がらくた屋か……
買取の価格がいいなら売るのもいいかもしれない……
ナナシの読書記録
神なる力
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恩寵
神、あるいは別の上位の存在が人間の魔力の性質を変えることによって様々な特徴を持ったもの、あるいはその現象を指す。
使うための条件は明確にされていないが、一説によれば信仰心や聖印などが必要だと考えられている。




