第29話 秘密会議
私達は人攫い共の塒を後にした。
向かった先は私の家だ。
何故か?
当たり前だ。服に血がついている。
こんな状態では外を歩けない。
そして少女の服にも……
洗わなければ。
下手したらこの服の弁償だけで破産する。
裾に血が付着しただけだ。
すぐに洗えば落ちるはず。
……ふう。
約1時間の格闘の末、ようやく汚れを取れた。
ヴィヴィリアが洗う際に口出しをしてきたことは言わなくてもわかるだろう。
「にしても、随分と肝の据わっているお嬢様だ。」
少女は指を2つ立てる。
「聞きたいことが2つありますわ。
なぜ私がお嬢様だと分かったのか。
そして、肝が据わっている。とはどういうことでして?」
「悪いが貴族の娘なんだってことは調べさせてもらった。
で、肝が据わってるのはもちろんさっきだ。
小型の刃物で縄を切ろうとしてたな。
あと、いくら命が関わるとはいえ、あそこで引き金を引けるやつは中々いない。
そして、君はミーア・トラステルダ。
合ってるな?」
「ええ。
そうですとも。
事前に調べたとは。
余程大事な話なのでしょう。
それで、話、とは?」
攫われた恐怖はもう消えているようだ。
良かった。
ヴィヴィリアが机に飛び乗る。
「おいお前。
すぐに済ませないとまずいぞ。」
「ん?
なんでだ?」
「貴族の娘が帰ってこない。
これでまずさが伝わるといいが。」
……あ。
冷や汗が額に流れる。
傍から見ればこれはただの誘拐では……?
私は急いで事を進めることにした。
「ここの領主が誰かは知っているか?」
ミーアは首を縦に振る。
「どんな人かは?」
「お父様にはいっつも媚びているハゲですわ。」
……ハゲというのは余計だな。しかも断言したよ。この人。
私は例の日記帳を机に置く。
「これは?」
「ガルバ・リーエスの日記帳だ。
あいつは愚か者で、自分の犯罪の形跡をこれでもかと書いてる。」
少女は疑うような目を向ける。
「証拠はありますの?」
ヴィヴィリアが少女の方をむく。
「貴族ならば筆跡が分かる者ぐらいはいるはずだ。」
「それもそうですわね。
それで、これが?」
「これを使って、あいつを失脚させたい。」
少女は考えるような仕草をする。
「驚かないんだな。」
ヴィヴィリアが意外そうに聞く
「犯罪の証拠、領主。
この辺の材料が揃えば大抵そんなこと分かりますこと。」
机に手を乗せる。
「でだ。君にはその失脚の協力をしてほしい。
具体的には、君、もしくはその父があいつを告訴すればいい。
それと、私の前では使いたくもない口調なんてしなくていい。酒場で見ていたぞ。あれが本来の君だろう?」
驚いたような表情をする。
「なんだ。猫かぶりは必要ないのか。
まぁいい。無駄な言葉を使わなくて済む。
しかしだ。
私が君を手伝ったとて、メリットは果たしてあるのか?」
ヴィヴィリアが間髪入れずに畳み掛ける。
「一応言っておくが、我々は君を1度助けている。
それとも、お前は受けた恩を返さないような者か?」
ミーアは目を逸らす。
「あぁ。
礼がまだだったな。感謝する。これで満足か?」
まるで謝意は感じられないぶっきらぼうな感謝だ。
「恩を貰いっぱなしってのも性にあわない。
いいだろう。やれることはやってみる。
それでいいだろ?」
「そうしてくれるなら、助かる。」
「あと、お前、臭うぞ。」
私は自分の匂いを嗅ぐ…
「そんなに臭いか?」
ミーアは皮肉っぽく答える。
「あぁ。臭うとも。
無知の匂いがな。」
「はいはい。
そうですね。」
私は軽く流す。皮肉にはヴィヴィリアで耐性がついている。
もとかく、これで爆弾処理の第1段階が終了した。




