第28話 夜に掻く
近すぎたら勘づかれる。
私は少し距離を置き尾行した。
男は既に酒場を出たようだ。
私も時間を置いて酒場を出て男を探す。
ちらりと男の来ていた服の端が視界の端に映る。
路地裏……
もはや危険な匂いしかしない。
私は恐る恐る路地裏を覗き込んでみた。
……間に合わなかったか。
男が肩に大きな布を担いでいる。
明らかに何かが中に入っている。
いくらなんでも早い。手練ている。
男は人攫いか何かだったのかもしれない。
ここで焦って身を出せばやられる。
男はこちらよりもガタイがいい。
さらに、いくら路地裏とはいえここで殺す訳には行かない。
そのまま後を追うと、2階立ての家の前に立った。
男がドアを叩く。
そして、
「丑三つ時の春。」
と呟く。
すると、ドアが開き、男は中に入った。
私は窓から様子を見ようと試みるが、中は見えないようにされていた。
……やむを得ないか。
私はドアを叩く。
「丑三つ時の春。」
ドアが開き、女と目が合う。
恐らく男の仲間だろう。
私は言葉を交わすことなく女の喉にナイフを突き立てる。首にナイフが突き刺さり、鮮血が吹き出て、カーペットに血が飛び散る。
女は首を抑え藻掻く。
……路上に血が飛び散るとまずいか。
私は女を部屋に蹴り飛ばす。
トドメは刺す必要はないだろう。
すぐに死ぬ。
1階には武器、そして怪しげな薬、そしてこれは……銃?
船漕ぎ時代に見たものとはまるで形が違うが似ている。
そして中心部は青い光をこれでもかと輝かせている。
念の為に持っておくか。
2階に向かった。
男は……いなかった。
寝室だ。
人はいない。
となると……私は1階に戻り、カーペットを捲る。
やはりな。地下に繋がる階段だ。
男の怒号が聞こえてくる。
急ごう。
階段の先には例の男とは別に、もう1人男がいる。
少女は手を吊るされており、つま先が辛うじて着く程度だ。
男が少女の腹に拳を一撃。
「ふざけんじゃねぇ!」
少女の呻く声も聞こえる。
……おや?
そうか。それならこれでいい。
私は近い方の男に近づく。
左手を首に回し拘束する。
右手で首元にナイフを突き立てる。
「動くな!」
もう1人の男が振り返る!
「てめぇ!
誰だ!」
「聞こえなかったのか!
動くなって言ったんだ。」
「ぐっ。
卑怯者が!」
何を言う。
少女の攫う者が正義を語る……か。
私は拘束している男の首にナイフを突き刺す。
男の喉から「ガッ」という音が聞こえる。
「てめぇ!やりやがったな!」
男がこちらに向かってくる。
が、頭が大きく揺れ、倒れる。
頭には風穴が空いている。
そう、私は少女に銃を蹴って渡していた。
いやいや、少女は拘束されているではないか。手を拘束されている者が銃を使えるものか。
しかし、私は気づいていた。少女はあれほどの怒号と暴力を受けながらも、小さな刃物で自身のナイフの縄を切っていた。
「よくやってくれた。」
少女は震えた手で銃を下ろす。
「誰?」
「話があってな。
聞いてくれるとありがたいんだが。」




