第27話 燻り
酒場に入るのは初めてだった。
中からは騒がしい輩の声が聞こえる。
……本当にこんな場所にいるのだろうか?
疑問を抱きつつ私は中に入った。
正面には酒場のマスターと見られる髭面で禿げた男がいる。そしてカウンターがある。
右の方では様々な人物が騒ぎあっている。
腰に剣を刺していたり、杖を所持している者も見受けられた。
そして左側。
恐らく賭場だ。
……居た。
明らかにこの場所にそぐわない人物がそこにいた。
金髪の髪で、今日はこの前とは違い、白いシャツに紫色のチェックの入った服を上から着ており、帽子もつけている。
とはいえ、やはり生地などが見るからに高そうで、目立っている。
いま絶賛賭け事をしているのだろう。
お互いにカードを出し合っている。
終わるまで待とう。
——ドン!
少女の相手であった男が机を叩く。
「もう1回!
もう1回だ!」
酒場に声が響き渡る。
少女はやれやれという表現をしながら、落ち着いて答える。
「私は構わないが……?
もうお前は賭ける物もないだろう。
そんなやつと勝負ができるか。」
相手は声を荒らげ机に体を乗り出す。
「ふざけんじゃねぇ!
お前のせいで俺は今月生きていけねぇよ!」
少女が手を顔に当ててため息をつく。
「賭けると決めたのはそちらであろう。
私の知ったことでは無い。
私はここでお暇させていただく。」
少女は背を向け、酒場を後にする。
……いや、追わないと!
そう思った時であった。
対戦相手が少女の後を追う。
あれほどの口論を挟んだ後だ。
トラブルになっていてもおかしくはない。
私は少女を追う男の背を追いかけた。




