第15話 ラーナ・スローバット
カフェの窓際の席を取れた。
日差しが差し込んできて心地いい。
ラーナは鮮やかな色のオレンジジュースにパンケーキをチョイス。
彼女はコーヒーが飲めないようだ。彼女いわく、
「あんなに苦いものよく飲めるよね」
と舌を出しながら言っていた。
かくいう私も飲んだことは無い。今日で初チャレンジだ。
まずは香りを嗅ぐ…
これがいわゆるコーヒーの匂いと言うやつなのだろうか、非常に苦い。
意を決して1口。
にっっっがい!
思わずむせる
ラーナが心配そうにこちらを見ている
「だ、大丈夫!?むせたの?」
涙目になりながら答える
「いや、大丈夫、平気だ。」
ヴィヴィリアが私の肩に乗ってきて一言
「…口に合わなかったのだな。」
私は涙目になりながらコーヒーを完飲した。
もはや二度と飲むことのないだろうコーヒーの皿を返却し、新しくパフェを注文した。
逆にめちゃくちゃ甘かった。でもこれが美味しい。
「懐かしいな。パフェ。」
何か遠くのものを懐かしむような目でパフェを見つめる。
「何かパフェに思い入れがあるのか?」
そのままの目でラーナは話し始める
「私にこんな技術を教えたのは誰だと思う?」
考えてもいなかった。
しかし考えてみれば当たり前である。誰かから学んでその知識を得た。盗賊の知識も、ソウルギアの知識も。
「その人は、今どこに?」
ラーナは頬杖をついて天気雨の降り始めた外を見る。
「…死んだ。
君ぐらいの歳だったかな?
元気いっぱいで、将来にはお金を貯めて普通に暮らしたいって言ってた。」
ヴィヴィリアが私の肩をおりて、机に着地する。
「無理してさ。ソウルギアも沢山使って。
沢山自分を傷つけて。
とある日の仕事の日にさ。
頭がクラクラするって言ったんだ。
じゃあ、今日は帰還しようって言った。
そしたらあいつは倒れた。」
外は更に雨が強くなり、青空を雲がどんどん覆っていく。ヴィヴィリアはラーナを見上げる
「一体何故?」
ラーナはもはや涙声になっており、顔は私からは見えないほど逸らしていた。
「分からない。
まるで寿命が尽きたように安らかに眠った。」
「ねぇ。」
顔を私の方に向ける
「君はそうはならないよね?」
「私を置いていったりしないよね?」
ラーナの顔は涙に溢れていた。
約束なんて出来ない。しかし
この顔を見ると、約束しない訳には行かなかった。
「あぁ。居なくなったりしないさ。」
ラーナは手で涙を拭う。
「ごめんね。せっかくの休みなのに暗い話して。
さ、パフェ食べちゃお、冷たいうちの方が美味しいよ。」
ラーナがオレンジジュースに手をかける。
しかし掴みそこねてこぼしてしまう。
「…え?」
ラーナらしくもないミスだった。
「あっ…ごめん。
店員さんに拭くもの貰ってくるね!」
ヴィヴィリアと2人残された。
…気まずい沈黙が流れる。
ラーナの方を見た。やはり心配だ。彼女も色々と背負っているものがあるのだろ…う?
……私のパフェは?
まだ八割はあったと思われるパフェはいつもの間にか何もなくなっていた。
そこに残されたのはからのパフェ皿と、口元をクリームで汚したヴィヴィリア。
ヴィヴィリアと目が合う。
「………」
「ヴィヴィリア、猫ってクリーム食べたらダメらしいよ。」
「何故だ?」
「猫が食べたら駄目な成分が含まれているらしいぞ。」
ヴィヴィリアは固まる。
「何故早く言わなかったのだ!」
私は笑いながら答える。
「冗談だ。」
ラーナも、笑ってくれるだろうか。




