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記録26:ついてきちゃった♥

組織フィクションチーム解説 米特殊海兵隊『MARINE Code:Claws』

WW3後に組織された米海兵隊の中のエリートを十数人集めた部隊。全員が数百億円から数千億円するような人体改造を行っており、ほとんどがただの殺戮兵器と化している。

合衆国に絶対的な忠誠を誓い、合衆国のためならば恋人や家族であろうと、殺さんとする精神を見込まれた者のみその部隊の選抜試験に志願できる。

数々の障壁を乗り越え、生き残った者のみ人体改造が施される。

彼らの基本的な能力は上陸や空挺降下など、局所戦闘に特化したものになっており、夜間行動時が最も強い。音の出ない移動方法や、銃火器を一切使わず、鉤爪だけで敵を殺す(Code:Clawsの由来)といった戦術を取るため、無音である。基本的に襲われたら勝ち目はない。

また、基本的に人の形をしているが、全身を改造しているので、感情などは人間のそれとは全く異なる。

しかし、衣食住など、最低限のことは徹底しており、ある程度の会話も可能である。

港町についた僕達は、一旦車から降りて、船の時間まで近くを散策することにした。


「アレックス、この近くでなにか食べない?」

「おう、いいぜ。ロシア料理でも食べに行くか?」

「うん、そうしよう」


僕達は大通りに出て近くにいい店がないか見て回った。

店頭に、ロシア料理の看板をぶら下げた雰囲気のいい店があったので、僕達はその店に近づいた。近づくに連れ、漂ってくる温かいトマト料理の香りは、極寒の地にいる僕たちの鼻を優しく包みこんだ。

二重ドアを開けて、入店すると、店員が元気よくロシア語で挨拶してくれた。


案内されるがままに、席につき、メニュー表を開いた。

ボルシチセットがどうやらこの店の一番人気のようで、でかでかとおすすめと印字されたシールが貼られていた。

ロシア料理店でボルシチを食べたら負けな気がして、僕はビーフストロガノフセットを頼んだ。


アレックスは堂々とボルシチセットを頼んだ。


料理が到着するまでの間、僕とアレックスは本当にとりとめのない話をして時間を潰していた。


そんな時、平穏を一瞬で打ち砕くように、二人組の男が来店した。二人共真っ黒なフルフェイスヘルメットを被り、黒いコートを着ていた。ちらりと見えたコートの下は戦闘服を着ていた。

戦闘服の胸には合衆国の国旗と爪痕のような刺繍の入った黒い徽章が付けられていた。


店の扉が閉まったと同時に、息が詰まるほどの緊張感を感じた。冷や汗が全身から吹き出し、離れているのに明確な『死』を感じた。件の脚部触手女よりも強いだろう。


何も知らない店員が彼らに近づいた。アレックスと僕は、銃に手を伸ばしていたが、男の内の一人がこちらを見たような気がして、二人共手を止めた。


店員が声をかけて反応を待っていると、彼らの内の一人が、胸元から写真を出した。

写真には僕とアレックスではない誰かの顔が写っていた。

店内を見渡しても、それらしき人はおらず、店員も誰か分かっていない様子だった。


彼らはお互いに顔を見合わせて店から出ていこうとした。

そのとき、最終確認のために振り返った一人と目が合った。実際に目があっていた時間は一秒にも満たないほどだったが、僕にはそれが一日のようにながく感じられた。


彼は僕の方に歩み寄ってきて、顔をじっくりと見た。そして、何も言わずに立ち去り、店から出ていった。

店の扉が閉まると、再び空気が暖かくなり、僕達は大きく深呼吸をした。


「...死ぬかと思ったぁ」


恐怖からの開放で、僕は情けない声を出してしまった。アレックスもため息をついて脱力し、天を仰いでいた。どのくらい長くそうしていたのかは分からない。ただ、気づいた時には困惑した店員が僕達の前に料理を置いてくれていた。


「あぁ、ありがとうございます」


呆けた声で返事をする僕を不審に思いながらも、店員は伝票を机の上において立ち去った。

まだ上の空のアレックスを引き戻して、一緒にロシア(元ウクライナ)料理を平らげた。初めて本場の民間の食事を食べたが、結構舌に合っていて、僕は舌鼓をうった。


会計を済ませて店の外に出た。

もうそろそろ時間だ。

僕達は再び車に戻って船に乗り込むことにした。

車を船着き場まで走らせた後、パスポートと事前に用意されていた船のチケットを見せて車の待機場所まで車を誘導された。


港に張っている薄い氷を砕きながら、すぐにタンカーのような大きい船がやってきて、僕達は車で船に乗り込んだ。船の中に会った駐車スペースに車を止めて、僕達は一度甲板に上がることにした。

無愛想な鉄の階段を登っていくと、徐々に窓がついて外の景色が見えるような階段になっていって、甲板の扉を開けると、冷たすぎる潮風が僕の顔に吹き付けた。


その冷たさに一度目を閉じてもう一度開けてみると、そこには見知った顔がいた。


「あれ?アナスタ...シア?」

「さっきぶりね。元気?」


アナスタシアはサングラスを外して目を細めて僕に微笑みかけた。

アレックスは僕がもう一度ムルに鳴るのではないかと経過していたが、問題なく僕は僕のままだった。


「こっちに任務でもあるの?」


僕がそう聞くと、アナスタシアはふふっと笑って僕に近寄ってきて言った。


「ついてきちゃった。去年の休暇が余ってたから、しばらくは他の人に任せて、私は貴方達と旅行にでも行こうと思って」

「普通の旅行じゃないことは分かってるんだろうけど...あれ?じゃあ、さっきの涙は偽物?」


僕が聞くと、彼女は少し恥ずかしそうに言った。


「あれは本物よ。貴方達が行ったすぐ後に同僚がそのことを思い出してくれて、行ったらどうですかって言ってくれたの」

「そりゃ、随分と良い同僚を持ったもんだな。それで、俺達と同行して何しようってんだ?」


アレックスが威嚇している。僕はアレックスの方を向いて彼を諭した。

彼はブツブツ言い訳を並べていたが、僕がずっと見つめていると段々黙っていった。

アナスタシアはその間に持っていた紙袋を僕に渡した。紙袋はずっしりと重かったので、僕は驚いてアナスタシアの方を見た。彼女は微笑んで言った。


「プレゼント。あげるわ、あなたに」

「私、何もしてないし、靴も買ってあげてないんだけど、中身はわからないけど、貰えないよこんなにたくさん」


良いの良いのと言って僕に紙袋を渡して、彼女は僕に自分の部屋番号だけを伝えて船の中に戻っていってしまった。

アレックスは決まりが悪そうな顔をしていた。僕は彼の腕を引っ張って、とりあえず僕達の部屋に向かった。


長い廊下の突き当りをに回ほど曲がって、そこから階段で二階程下った。僕達の部屋はほんの二畳ほどのスペースに二段ベッドがあるような部屋だった。アレックスは下段のベッドに荷物をおいて僕の荷物を上段のベッドに置いてくれた。

アレックスが大きなため息をついてベッドに座り込んだのを見て、僕は労いの意味で彼の肩を揉んでやることにした。


「アレックス、ちょっと後ろ向いて」

「ん?ああ、分かった」


結構疲れているようで、ふわっとした返事しかしなかったが、僕の指示通り、きちんと後ろを向いてくれた。僕は彼の方に手を伸ばして、できるだけ力強く揉んだ。

アレックスは最初ビクッとして驚いていたが、しばらく肩もみを続行していると、アレックスは小さな声で僕に聞いた。


「なあ、明日香。お前も女なんだ。多少の警戒心は持てよ。急に女にそんな事されたら、勘違いするやつだっているんだぜ?俺はお前の中身を知っているから何ら問題はないが―――」

「こんな事、私はアレックスにしかしないよ」

「...そうか」


それから暫くの間、アレックスは黙って僕のマッサージを受けていた。


僕が揉んでいる間に気づいたことなのだが、彼の肩がものすごく硬い。随分疲れが溜まっているのだろう。頑張って揉んでいると、誰かが扉をノックする音が聞こえた。


僕は一旦アレックスの方から手を離して、扉の方に行った。恐らくアナスタシアだろうと思ってドアスコープを覗くと、案の定彼女で、僕は扉を開けようとした。

アレックスが急に僕の腕を引っ張って扉を開けさせないようにした。


「何をするの?」

「あ、ああ...悪い、つい、手が動いちまって。その...なんだ...」

「二人の時間に水を差されたくなかったの?」


長い沈黙の後、アレックスはコクリと頷いた。僕は彼に微笑みかけてから扉を開けて、目の前のアナスタシアに言った。


「ごめんね、アナスタシア。今ちょっと作戦会議中だからさ」

「そうなんですか?では、お邪魔でしたね。また後で来ることにしますね」

「うん。ありがと」


僕はそう言って扉を締め、アレックスの方を向いた。彼は頬を赤くして、少し恥ずかしがっているようだった。僕はそんな彼を再びベッドに座らせ、肩もみを続行した。

揉んでいるうちに、彼の肩も段々ほぐれてきたのだが、ずっと揉んでいるせいで、僕の腕も疲れてきた。


「ねえ、アレックス」

「何だ?」

「交代!」


僕はアレックスの肩を大きく叩いて、今度は僕が彼の前に座り込んだ。コートを脱いで、彼に首と肩を差し出した。特段肩こりが激しいというわけでもないが、貸し借りをなくすという意味をこめている。

まあ、人並み以上にはつかれているのでマッサージをしてもらうのは悪い気はしない。むしろ嬉しいのだが、ムルの体がどう出るかがわからない。


まあ、とりあえず任せてみるか。


アレックスの手が僕の方に伸びて、触れた。薄いガラスを触るような優しい手つきで僕の方をもんだ。


「んっ...」


やべっ、変な声出た。アレックスの方を向いた。顔が赤い。


ここで僕は少し邪な考えを思いついてしまった。それは、今みたいなちょっとエッチな声を出してアレックスがどこまで耐えられるか、検証すると言ったのものだ。


しばらく手を止めていたアレックスに、続けるように催促すると、彼は大きく深呼吸をして続けた。


「んっ...はぁ......あぁっ...」

「明日香、ちょっと待ってくれ」

「どうしたの?」


僕は首だけ振り返って、彼の顔を見つめた。下を向いて深呼吸をしているが、おおよそどんな表情をしているかは見当がついている。

僕は彼に背を向けたまま謝った。

アレックスは少し怒ってしまったようで、僕の肩を強く握った。

お読み頂きありがとう御座いました。次回もこうご期待!


次回『船に乗ったら海兵隊と鉢合わせた件』

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