記録22:SHOTGUN
学校解説 ツァーリ騎士団付属特殊技能学校
昔からロシアに存在した学校で、主に諜報員や殺し屋を育成する学校である。教諭には主に軍人があたっており、なかなか厳しい教育がされる。
「代表のアナスタシア学生!何故、中学生ながらに射撃訓練を行うか、分かるか!?」
軍人の怒号混じりの質問に、私は大きな声で胸を張って答えた。
「有事に備え、自分のみを自分で守るためであります!」
「そうだ!」
大きな声に体が縮こまってしまいそうだったが、何とか背筋を伸ばして軍人の目を見つめた。
彼は小さく鼻で笑って、今度は全体に向かって言った。
「では、順番にこの銃を使って五メートル射撃をしてもらおう!」
それから、すぐに実射訓練が始まった。離れている人型を模した的に当てるのも難しいが、何より難しかったのが、反動の制御だ。時々その反動に驚いて泣いている子もいた。私は普通に狙って撃った。強い反動が腕を伝ってお腹の底にやってくる感覚がした。
初段の命中を皮切りに、そこからの四発はすべて命中した。
「やるじゃないか。アナスタシア学生」
軍人に褒められ、少し喜んでいると、彼らは私に言った。
「なあ、せっかく代表をしてくれたんだ。別の銃も撃ってみないか?理由はもちろんあるぞ。他の銃器は反動が強すぎて子供には撃てないことを証明するんだ。だから、気楽にできるぞ」
「では、やります!」
私は、目の前に並べられた、初めて撃つ大型の銃たちを眺めながらため息をついた。
なんて美しいんだろう...
その中でも、ひときわ異彩を放つものが一つあった。
私は、その中から一つを選んだ。
「お、IzhMash Sayga12か、なかなか良いセンスしてるな。だが、そいつは年代物だ。もっと新しいやつとかは使わねえのか?ほら、このAK30とか、結構使いやすい部類だぞ」
「いえ、申し訳ありませんが、私はこれが良いのです」
「ハッ、そうかい。せいぜい楽しみな。ショットガンだから距離は十メートルだ」
軍人は急いで私のために的を十メートル先にいくつか用意してくれた。
私はマガジンに弾薬を装填して両手で抱えた。
程よい重さと重厚感が私の腕を伝う。セーフティを外して弾薬を装填した。
リアサイトとフロントサイトをあわせて、トリガーに指をかけた。私は立ったまま撫でるようにしてトリガーを引いた。
ズドォン!
拳銃弾とは比べ物にならない銃声が響き渡り、的の頭部分に命中した。イヤーマフの上からでもその空気の揺れが伝わるほどだった。私は深呼吸して次の的に狙いを定めた。
ズドォン!
散弾が今度は狙い通り胸部分に命中した。三発目も同じく撃って、他の的の首元に命中した。
後一発残っている。しかし、目の前にある的には、全て散弾の跡が残っている。私は、遠くの的に目を凝らした。一つだけ、三十メートル以上離れていたが、的があった。
私はその的を狙ってトリガーを引いた。
ズドォン!
最後の弾は見事的に命中し、軍人は驚きの声を上げた。
「す、すげぇな。アナスタシア学生。アンタ、プロか?」
「いえ、初めてです」
「そうか...」
何故か感慨深そうにため息を付く軍人に、私が首を傾げていると、そのまま私達の実射訓練授業は終了し、即座に学校に帰還した。
学校に到着するなり、私は先生に呼び出された。
先生の前に行くと、先生は何かを決心したかのような顔で言った。
「アナスタシア、ここを卒業したら、特別な学校に行くつもりはないか?」
「どんな学校ですか?」
「お前の成績と身体能力、それから射撃センスを見て決めたんだ。帝国の運営する、帝国直属の兵士を育成する秘密学校『ツァーリ騎士団付属特殊技能学校』にお前を推薦する。今、ここで決めてくれ。君の親御さんには言えないような機密なんだ」
「先生、一つ質問いいですか?」
「なんだい?機密に反していない限り何でも良いぞ」
「この前先生と話した通り、人を笑顔を守ることってできるんですか?」
先生は少しもためらうこと無く笑って『もちろん』と言った。
私は迷う間もなく、その学校に行くことに決めた。先生は私と固い握手をしてくれて、それから数日経つと、先生は私に一つのサングラスを渡してくれた。
アルビノの私には、太陽光のもとでの活動はしんどいだろうから、これを掛けていなさいと言って、サングラスをもらった。サングラスはただのサングラスではなく、極小のチップが入っていて、それで熱源探知や司令部からのメッセージも受け取ることができるといった代物だった。
私はそれを、夜は頭に引っ掛け、昼間は装着してずっと身につけていた。流石に親も心配になったようで先生に何度も質問をしに言ったが、先生は大丈夫ですの一点張りで特に何もしなかった。
そのせいで私が両親から以上なほど心配される羽目になったので、この前あった時には、苦言を言った。
そんなこんなで、私は中学校を卒業し、すぐに全寮制であるツァーリ騎士団付属特殊技能学校に入学した。
◆
入学式、それは新しい生活の始まり。
私は、高校の正門をくぐった。
ここは極寒の地、シベリア。下手したら凍死するような寒さが年中続いている。ので、私はもこもこの防寒具を何枚も着込んでいた。
私の他にも何十人家の人が一緒に校門をくぐっているのが見えた。全員がもこもこの防寒具を顔は見えなかった。
ため息を付けば、すぐに氷の塊ができて地面に落ちるそうな空気の中、私は校舎に入った。
校舎の中には何故か武装した軍人が数人待機していて、私の名前を確認するなり、教室に通してくれた。
『1-1』それが私のクラスだった。
秘密学校ということもあって、結構物静かなものかと思っていたが、皆結構わちゃわちゃしていて楽しそうな雰囲気だった。
教室に入ると、もうすでに何人かは到着していて、皆私の姿を見て驚いていた。その中で、一人だけ私に話しかけてくれた女の子がいた。
「私、ミハイルっていうの!あなた、真っ白ね!名前は?」
「私は、アナスタシアって―――」
「へぇー!アナスタシアっていうのね。じゃあ、ナターシャって呼んでも良い?」
「うん、まあ...良いよ」
「じゃあ、ナターシャ。早速だけど、どうしてこの学校に?」
彼女の猛烈な言葉責めに、私がオドオドしてしまっていると、彼女の後ろから優しそうな赤い髪の男の子が顔をひょっこりと出してミハイルの頭を小突いた。
「ミハイルがごめんね。こいつは初対面の人に話しすぎるから、今回は許してやってくれないか?」
「ええ、良いけど...二人は知り合いなの?」
私が聞くと、ミハイルと彼は顔を見合わせて首を傾げてから私に言った。
「ほんの数日前に知り合ったばかりだから、最近知り合ったっていうのが正しい表現だね。ああ、自己紹介が遅れたね。僕はウラジミール。気軽に呼んでくれていいよ」
そうして三人で暫くこの学校に来た経緯を話し合った。
しかし、話し合い始めてすぐに三人とも先生の紹介でここに来たということが分かった。
それからは普通の高校生活に軍事訓練とそれ用の教養が混じった授業を受け、私達は段々と暗殺者や特殊部隊員に育て上げれれることとなったのだった。
お読み頂きありがとう御座いました。次回もこうご期待!
次回『血の雨はまだ降らない』




