√トゥルース -011 フェマの陰謀
「ちょ、ちょっと待ったぁ!!」
しかし、トゥルースの両腕を細くしなやかで柔らかな二人の掌が揉みだしたところで、我慢出来なくなったトゥルースが二人を止めた。
トゥルースにとって、二人は守る……いや、護るべき存在だと思っている。しかし、二人の暴走とも言える行動に流されて手を出してしまっては、何か取り返しのつかない事態になりそうな、そんな予感がある。将来、どんな関係になったとしても、今は先に進む時ではないとトゥルースの中で何かが警笛を鳴らしているのだ。読者|(?)にチキンだと言われようが、今、流されて手を出すのは絶対間違いだという事は確信できる。
山の間を伝ってか、遠くから雷鳴がゴロゴロと聞こえてきた。
「二人とも、どうしたんだ!? いつもの二人じゃないぞ? さっきまでおかしかったけれども、今はもっとおかしい。何か無理してないか? って、そうか。フェマだな? フェマが何かを二人に吹き込んだんだな?」
ビクッと震える二人。今度は二人が固まる番だ。その様子から、フェマが何か良からぬ事を吹き込んだのは確定だ。
あのロリババアめ、と心の中で悪態をつくトゥルースだが、今は暴走する二人にブレーキを掛けさせてこの場を切り抜けなくてはならない。取り敢えず今はアクセルを離してブレーキペダルに足を乗せたところだろう。再びアクセルペダルに足を戻さない様にするか、直ぐ様この場を脱出しなければならない。
遠くで聞こえていた雷鳴は徐々に近付いている感じである。
「何を吹き込まれたのかは知らないけど、兎に角今の二人の姿は俺には刺激が強すぎるからっ! これ以上二人に迫られると何を仕出かしちゃうか自分でも分からないからっ! 俺は先に出るから、二人はゆっくりと入っていて」
そしてトゥルースが選んだのは早々の逃亡。ザバッと音を立てて立ち上がると、くるっと回れ右をして沢の方を向く。
しかし、その姿勢は二人の少女には刺激が強過ぎた。目の前にシャウエ〇センからフラ〇クフルトに姿を変えていたトゥルースのトゥルースが存在をアピールしていたのだから。トゥルースの大事なところは沢の方に置いていた松明に照らされて雫によって眩しく光り輝いており、思わず二人は目を細める。
対してトゥルースは隠す余裕もなく逃げる様に石造りの湯船の縁を跨ごうとして……暗かった為に目測を誤り躓いてしまった。のわっとつんのめったトゥルースは前から転倒するより尻もちをつく方を選んで身を捩る。
「あたたた」
石がゴロゴロしているところへの転倒は時として大怪我に繋がるが、柔らかな尻から落ちた事で痛みはあるが怪我は避けられたようだ。
しかし、心配して振り返った二人の目に飛び込んできたのは、そびえ立つトゥルースのピサの斜塔。あのまま前から転倒していたら大参事だったであろうソレは、真横にあった松明の光でピクピク動いているのが丸見えだ。
男が女性の裸に神秘性を感じるのとは少々ニュアンスは違うが、男のソレにある意味別の神秘性を見出す少女二人。しかし、神秘性を感じる状況なのは少女たちだけではない。腰上の高さしかない露天風呂の縁は少女たちの上半身を隠せる筈もなく……。小振りだったフランク〇ルトが大振りのそれへと姿を変えるのに、漸くご本人様が気が付いて手で隠しながら目を逸らした。
が、手を突いて立ち上がろうとしたトゥルースが異変に気が付くのと、寄り掛かった少女二人の体重に耐えかねて崩れる露天風呂の縁と、より大きな雷鳴が鳴り響くのはほぼ同時だった。
ドッゴーーーン ガラガラ ザッパーン
「「きゃああああ」」
近くに落ちたであろう落雷の音でなのか、身体を預けていた石積みの縁が崩れたからなのか、ビクンビクンと脈打つ斜塔を見たからなのか分からないが、悲鳴を上げる少女二人。
だが、そこに切羽詰まった声が鳴り響く。
「ヤバい! 二人とも直ぐに上に上がるんだ! 既に沢が増水してきている!」
「やい、坊たち! 早う上ごうて来い! 天が荒れおるぞ!」
沢の異変に気付いたトゥルースだけでなく、崖上に残っていたフェマも声を上げた。
上流では既に雨が降っているのだろう、沢に流れる水の量が急激に増えてきている。このままではこの沢も飲み込まれるかも知れない。
山の天気は気まぐれだ。それに加え、小さな沢は雨が降ると一気に水嵩が増える。山に住む者であればそれは常識であるが、沢から遠い町中や平地に住まう者は増水する沢の怖さを知らない。しかし、トゥルースは夢の中でテレビのニュースを見てその怖さを知っていた。
「ぇ、そんな急な……」
「もう、服を着ている暇もない! 直ぐに上がるんだ!!」
「ええっ!?」
素っ裸のまま沢を登る岩場に駆ける三人。辛うじて脱いだ服を拾い上げたが、松明を拾う余裕もなく走っていくトゥルースの様子に、ティナやシャイニーも慌てて脱いだ服を抱えてトゥルースのプリっとした尻の後を付いて行く。
「急げ、水嵩が急激に上がってきている!」
先に途中の木のあるところまで登ってその木に掴まり、一人一人引っ張り上げつつ最後の崖をお尻を押して登らせるトゥルースだが、岩場を登る途中で抱えた服が邪魔になり放り投げていた為、素っ裸である。
しかし、この切羽詰まった状態でそれを気にしている余裕などはない。二人の少女もそれに倣い、登るのに邪魔になった自分の抱えていた服を放棄して素っ裸のまま両手をつきながらトゥルースにお尻を押されて登る。最後にトゥルースが二人に引っ張り上げられた頃には二人が沢に持って行っていた松明は水の流れに掻き消され、暗闇に包まれていた。
「……間一髪だったな。あのまま俺と入れ替わりで二人が入っていたら、二人とも取り残されて流されていたかも」
轟々と音を立てて流れる水の音で、つい先程までいた露天風呂までもが水に飲み込まれている事を察し、ブルリと震える三人。あわやという危機に、お互い素っ裸で手を取り合い生尻を押し押された事などは、暗闇の中の些細な出来事として問題にもしていなかった。
しかしその時、またもや強烈な光と共に轟音が鳴り響いた。山の中で鳴り響く雷鳴は山彦効果によって非常によく鳴り響く。今の雷鳴も近くに落ちたのか少し離れているのか、それとも落ちずに上空を走ったのかも判断出来ない程だ。
その轟音に、二人の少女が悲鳴を上げて思わずトゥルースにしがみ付くのだが、未だにお互い裸である。湯から上がって身体を拭き取る時間もなかったので、入浴で身体が温まっていたと言っても風に曝されて既に冷えてきており、押し付けられた二人のその素肌がとても温かく感じた。
「今のは近かったの。おぉ、三人とも無事じゃったか。おおう、上の方は酷い土砂降りのようじゃの。ほんに無事で何よりじゃ」
火の点いた枝を手に持ったフェマが慌てた様子で駆け付けてきたが、余程慌てたのだろう。手にしていたのは松明としては頼りのない小枝だった。
火の番をしていたフェマには元々灯り用の松明は用意されてなかったが、緊急事態に声を掛けに走った後、自分が灯りを持っていない事に気が付いて一旦戻り直ぐ火の着きそうな小枝に火を分けて駆け付けたのだ。その頼りない火を沢の方に翳して様子を見た後、カタカタと震えながら寄り添いあう三人に灯りを向けた。
「それにしても……仲ようなれたようじゃの。そうのような格好でくっつきおって……」
三人が無事と見るや、途端にニヤニヤしだす幼女に、ハッとして離れ前を隠す三人。しかし直後に降り出した雨で更に体が冷えてきて再びトゥルースにくっつく少女たち。失った物はそれぞれが着ていた服だけではなく羞恥心もなのだろうか。
確かに大事なところはそれで隠れるし、お互い温かいのだが……柔らかさや温もりを直に感じてしまい、トゥルースはそれで良いのかと心の中で叫びつつ意識し過ぎない様にと、その原因たる幼女を睨み付ける。
「フェマぁ! 一体何を二人に吹き込んだんだぁあ!!」
「ふむ。二人ともお主との関係に悩んでおったからの、ええ解決策とその近道を教えてやったまでよ。三人とももう成人しておるのじゃから、身を固める事を考えても良かろう? ほれ、これ以上雨に濡れて身体を冷やす前に、早う焚き火のところまで戻るぞ」
悪びれもせず、しれっと言い放つフェマ。どうやら二人とも妻に娶れば二人の悩みは解決だろうと、既成事実を作って外堀を埋めさせる方法をそそのかしたようだ。以前、そういう行いは認めないという様な発言をしていたのに、何て身勝手なと憤るトゥルース。
「フェマぁぁぁあああ!!」
スタスタと前を行くフェマに言い寄ろうとするが、両脇を二人にくっつかれて歩き難いトゥルースは、仕方なく震える二人の腰に手を回して転ばない様にゆっくりと歩く。二人の目が露わになって左右に揺れるトゥルースの斜塔を捉えているとは気付かずに。




