√トゥルース -007 姫、ご乱心!?
お待たせしました
添削もしてないので、随分と要らない文が……
「結婚……かぁ」
無人の集落を後にしたトゥルースたちは森の中を順調に進み、その翌日である今はその森を抜けて崖にある道を登っていた。
先行するミアスキアが荒れた道を切り開いてくれているおかげで、ラバから降りる事なく迷う事もなく進む事が出来ている。ミアスキア様さまである。
が、同時にミアスキアのせいで出立が遅くなったとも言える。本来、朝一で集落を出る予定だったのが、ミアスキアが狩ってきて血抜きされていた兎や猪を処理するのに半日を費やしたからだ。おかげで幾分か減っていた食料がこの酷道に入る前よりも多くなってしまった。進んだ距離としては本来より半日以上の遅れとなっているだろう。
しかし、元々予定などあって無いようなものだ。草を刈りながらであれば、更に遅れていた事を考えれば順調そのものと言えよう。
「え? 何か仰いましたか? あなた様」
ふとつぶやいたトゥルースの言葉を拾い、後ろに乗るティナが顔を傾げて覗き込んできた。
「あ、いや。ちょっと夢を見てね」
「夢……ですか?」
「うん、女の子は男よりも大人になるのが早い、ってね」
「……え?」
一体どんな夢を見られたらそのような……と顔を顰めるティナ。
通常、夢というものは、先ずは記憶を整理する過程で見るもので、そこから心配事であったり希望する事であったりと、様々な夢へと発展していく事が多い。だが、トゥルースが口にしたのは、誰かとそういう話でもしなければ出てこないであろう内容だった。
「まあ、俺の夢はちょっと特殊でね」
言い淀むトゥルースの様子に、これ以上は聞いても詳しくは話して貰えないと察したティナ。
勿論、ティナも夢は見る。最近で言えば、自分の体が燃えるように熱くなり竜の姿になってしまう夢だ。
だが、悪夢とも言えるそれはまんま過去の出来事が記憶として蘇るものであり、呪いによって竜化が再発する事を恐れている表れであるとも言える。その懸念があるからこそ、故郷の王国から逃れるようにトゥルースたちに付いてきたのだ。
偶然にも彼らの機転で、助けられた際に監視していたであろう軍から遠ざかる事が出来たのは、行幸だったと言わざるを得ない。もし王国に見付かるような事があれば、監視されていた辺境の地に再び連れ戻されるか、見付かったその場で殺されるやも知れない。
兎に角、自分が王国の王女だったという事実がバレないように立ち振る舞わなければならない……のだが、早々に帝国の|第三王子(ミックティルクに妃として迎え入れたいと、シャイニーと共に目を付けられた。取り敢えずは丁重に断って逃げるようにトゥルースとの旅に同行している訳だが、既に鈴がふたつも付けられてしまっている。
ひとつは、その同行しているトゥルースに石の加工を依頼し、出来上がったら帝都に届けさせるよう言い付けられている事。
もうひとつは、先行しつつもトゥルースたち一行を監視するかのように付かず離れずのミアスキアの存在だ。確実にミアスキアは、一行が行方不明にならないように立ち回っている。先日に遭遇した際には夕食こそ一緒に食べたが、明らかに一同から極力離れて行動している。恐らくそれもミックティルクから指示を受けているのだろう。
たぶん、この場で反転して道を戻っても、ミアスキアが後ろから確りと監視するように付いてくるだろうと、安易に想像できる。
「……あなた様は、わたくしがミック様の元に行く事になったら、どう思われますか?」
「えっ!? ティナ、ミック様のところに行きたいの!?」
急な話の振り方に、トゥルースは驚いて大声を上げると、前を行くシャイニーが何かあったのかと振り返った。
だが、ミックティルクの元に嫁げば、究極の玉の輿だ。出会って日の浅い、特定商材しか扱っていない一商人では相手にもならない。普通に考えれば当然の選択だ。
「あ、いえ! 違います、違います。わたくしとニー様が、ミック様に言い寄られたのが原因で、そのような事を思われるような夢を見られたのかと。もしそうであれば……」
嬉しいかも、と口にしようとして思わず自分が何を言おうとしたのかに驚くティナ。
今までは、助けられた恩とあられもない姿を見られた為に、その相手であるトゥルースに責任を取ってもらう、そうせざるを得ない状況なのだと自分に言い聞かせていたのだが、いつしかトゥルースを同年代の一人の男性として見るようになっていた。
自宅でもあった王宮では幾人もの貴族の男に卑しい目で見られていたので、トゥルースをもそれと同じ目線で見ていたのだが、どうやら連中とは違うようだと気が付いていた。そもそもそんな貴族の男たちと同じようなら、そういう事に敏感なシャイニーが懐く事もなかっただろう。
「あ~、成る程。それもあるのかなぁ……。でも、今回はちょっと違うような……」
歯切れの悪いトゥルースだが、それもその筈だ。夢の中の真実が体験した内容を口に出来ようもないのだから。そんな事を口にすれば、何を馬鹿な、頭がおかしくなったのか、と要らぬ心配をされるのがオチだ。
「違うのですか?」
「あっ、いや全く関係ないって事もなくて……。知り合った人が、結婚を目の前で決めたって夢でさ。その人が言っていたんだ、女の子は大人になるのが早いってね」
実際に同い年であるティナとシャイニーがミックティルクから求婚を求められている。二人とも一度はそれを断ってはいるが、旅のサポートにミアスキアを付かせているところを見ると諦めた訳ではなさそうだ。
身近な者たちに突然降って湧いたような結婚という馴染みの無いキーワードに、結婚など随分と先の話の様に感じていたトゥルースは内心で戸惑っていた。
「……随分と具体的な夢なんですね。でも……わたくしから言わせれば男の人たちの方が先に大人になられていくと感じますが……」
自分たちが大人に?
そう不思議に感じたティナは首を傾げつつもそう答える。寧ろ自分たちはトゥルースに付いて来ているだけの云わば穀潰しである。同い年で既にお金を稼ぐトゥルースを、自分たちよりもずっと大人に感じていたのだ。更に、たった一つしか歳の変わらないミックティルクに至っては、既に次期帝王即位間違いなしと言われている程に業績を立てており、既に側室候補がいる状態である。同じ国の長の子としては大差を付けられてしまった感が凄い。
「え? そうかなぁ。|成人して早々に結婚するのは女の人の方が圧倒的に多いでしょ。そもそも女の人が年上って夫婦はうんと少ないし」
十五歳で成人するこの世界でも、成人後直ぐに結婚する者は少なからずいるが、その割合は男より女の方が多い。
年上の夫と年下の妻という夫婦が大半を占め、次いで同い年夫婦が続いて、年下の夫と年上の妻という夫婦は極少数なのはこの世界でも言える。男は養う為の基盤作りが出来てから結婚を考えるのに対して、女は体力がある若い内に子を成し育て上げようと早い段階で結婚を考える。加えて言えば、男は子を産み易い若い女を幾つになっても求め、女は優れた遺伝子を持ち且つ子を持っても生活に不安のない稼げる男を求めるという。
生物学的にも経済学的にもそれは当然の結果なのだ。
「それはそうですが……。そもそもわたくしは、呪いのせいで家から追い出された身。万一ミック様に輿入れするような話になれば、自ずと身元調査が行われるでしょう。そうなればミック様にも呪いの事を知られて、家からだけでなく帝国からも命を狙われる事になるかも知れません」
竜化の呪いは世間を恐怖に陥れる可能性がある。それを避ける為にも、芽は早い内に摘み取ってしまおうというのが自然の流れだ。
そういう意味では竜化の呪いは隠し通した方が良いし、知られる恐れがあるならば、それを避けなければならないのだ。
「いや前にも言ったけど、多分その呪いはもう心配しなくて良いと思う」
「……確かに、あなた様に助けられてからのこの一ヶ月、呪いが再発するような事はありませんでしたが……これからもそうだとは言えませんよね? 寧ろ再発する可能性の方が高いと考える方が自然ではありませんか? って、わたくし何を言っているのでしょう。それはルー様のお力を否定するようなもの……。実際にこうして助けていただいたというのに、わたくしったらそれを……」
申し訳ありませんと項垂れるティナだが、竜化の呪いという爆弾を抱えているが為の不安から出た言葉なのだろう。いくらトゥルースの力で竜化の呪いが解けたと言われても、一生呪いとは付き合っていくしかないと言われるこの世界で、それを素直に信じられる筈もない事はトゥルースも理解している。
「いや、謝らなくても良いよ。実際に俺の呪いに継続性があるのかも分かってないんだからこそ、こうして一緒に行動しているんだからさ」
「ルー様……」
今までトゥルースが解いてきた呪いの相手は既に幾人もいるのだが、その者たちの呪いが再発していないかどうかまでは、会ってもいない為に確めていない。
その為に保護観察という体でティナはトゥルースと行動を共にしてるのだ。呪いが再発したら、すぐさまトゥルースの呪いでそれを解く為に。
「やはり、わたくしを娶ってください、ルー様! これからもあなた様から離れられないのであれば、そうするしか!」
「ええっ!?」
「元々、わたくしたちは婚約状態でした事ですし!」
先の理由に加え、ミックティルクからの求婚を避ける為にも吐いた婚約の話が、現実味を帯びて再発するのだった。
目標の火・木曜日投稿に一日半遅れての投稿となりました
今後は完全不定期での投稿になりそうです
書くのが遅いよ! ごちゃごちゃ言ってないで早く書け! 入院する程体調を崩したら2、3日くらいは遅れても許してやろう! なんて言葉を感想に残して貰えると、ちょっとだけ早く書けるかも知れませんので、時間が取れる方は一筆残していってください
あ、作者は別にドMではないです
今後とも頑張りますので、よろしくお願いします




