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√トゥルース -005 幼女( )には弱い?



「よし、じゃあ夕飯の仕度をしよう」


 今夜の寝床が決まったところで、トゥルースが号令を出す。いつものように料理班と天幕張りの班に分かれるところだが、今回は天幕を張る必要はなく掃除をするだけで済む。となれば折角なので野生化した野菜を採りに畑をみんなで見に行くかと提案した。


「んじゃ、おれは先に行くから」

「えっ? 何で? そんなに急ぐ事はないんじゃ。ついでなんだから一緒に夕飯を食べれば良いじゃん」


 それこそ一緒に神社(ここ)に泊まれば楽だと勧めるトゥルース。先に進んだところで既に良い時間だし、碌に進まずに寝床の確保や食事の用意をしなくてはならなくなるだろう。であれば無理せずに一緒に夕飯を食べて寝て行けば楽だ。特に今の時期、月は夜中には姿を現さず昼間に出ているので、月明かりは全く頼りに出来ない。無理は厳禁だ。

 女性陣も生の新鮮な野菜が手に入るのだからと先を急ごうとするミアスキアを引き止めた。


「う~ん、そこまで言うならご相伴に与ろうかな。でも寝床は一緒にする訳にはいかないから、おれは外で寝るようにするけどな」

「え? 何で? 中は五~六人は寝られる広さがあるから良いじゃない」

「いや、主殿に止められているんだよ。同じ屋根の下は厳禁だって」


 どうやらミックティルクからはミアスキアは信用が無いようだ、特に女性相手には。湖畔の屋敷(王族の別荘)では兎に角酷かった、女性陣が入っている風呂を覗こうとしたのが特に。

 その後トゥルースと二人で見えない何かを調べに出向いた際に言い合いとなりトゥルースの呪いが発動していた。それでも今はそんな様子は見られないので、トゥルースの呪いが効いたのかも知れないが、その事にはトゥルースは自分のせいだとは思っていなかった。


「あ~、ミック様の言い付けなら仕方ないか」


 天幕を張るのも一仕事になる。一緒に寝ればそれも省けるからと誘ったのだが、ミックティルクに止められているとなるとそう強くは言えないなと折れる事にした。


 その後、一同は野菜を採りに畑を漁りに行くが、ミアスキアは別行動で薪を集めに行った。畑には思いのほか食べられそうな野菜が大量にあったが、数日で食べられる量だけを摘み取ってきた。また次のシーズンに実を成らせば同じようにここに来た者が採る事が出来るだろうし、勿体ないからと必要以上に採っていったところで腐らせてはそれこそ勿体ない。精々時間が取れれば保存食に加工する位だろう。


「さて、今度こそ分かれるか」


 シャイニーとフェマが料理に、トゥルースとティナが拝殿内の掃除にと分かれた。神社に戻ってきた時、ミアスキアの姿は馬と共になかったが、既に火は起こされていていつでも料理が始められる状態だった。まさかここまでして先に行ったのかとも思ったが、荷物が置かれていたのでまた戻ってくるだろう。

 



「悪ぃ。ちと遅くなった」


 暫くするとミアスキアが手綱を片手に何かをぶら下げて戻ってきた。その姿を見てホッと一息吐く一同。もしかしたらこのままいなくなるのでは? とも頭を過ったのだが、杞憂だったようだ。


「向こうで鳥を狩って来たぞ~」


 そう言うと、既に血抜きされたっぽい二羽の鳥を掲げて見せる。

 何日振りかの生肉に明るい顔が返る。というのも、ミックティルクたちにレクチャーされた弓で道中にシャイニーが何度か試みたのだが、相手は動く的である。そう簡単には当てられなかった。

 早速トゥルースがミアスキアと共にそれを解体する。拝殿の中の掃除はほぼ終えており、残りは軽く雑巾掛けするだけだった。トゥルースが解体に回った為、その役はティナ(元王女)が一人でする事に。一番の汚れ役をする事になったティナは心の中で苦笑したが、今はトゥルースに拾われた身に過ぎないので、文句を吐く事なく雑巾を手に一人で拝殿の中に戻っていくのだった。




「う~ん、やっぱり新鮮な肉は美味いな~!」

「うむ、やはり本来の味はええもんじゃ! 保存食の濃い味ばかりでは舌が馬鹿に成ってしまうからの」

「それにこれだけの種類の野菜が手に入ったのは嬉しいかも。道中で見付かる物も有り難いけど、一種類や二種類だけじゃ料理に使うのも難しいし」

「食べ物の有り難さが身に染みりますね。今までそれが当たり前だと思っていましたけど、そうではなかったのですね」


 管理された畑で作られた野菜ではないので生で食べるのは躊躇されたので、温野菜にして食べた。牧場で手に入れた卵を使って一度無くなったマヨネーズを再度作った事で、また数日は美味しい料理を食べられるだろう。

 ミアスキアもその味を絶賛し、出された物を次々へと平らげていった。


「ところで、鳥を二羽もどうやって仕留めたの?」

「ん? 畑でだよ」

「「「畑で?」」」


 ミアスキアの回答に目を丸めるトゥルースたち。まさか畑で鳥が自生している……なんて馬鹿げた事は考えられない。ならどうやって?


「いや、畑に実った物を食べるのは何も人間だけじゃないだろ。鳥や動物も食べに来ているから、それを狙って狩ってきたんだ。あんな簡単な猟、いくらでも狩れそうだ」


 何ならもっと狩ってこようか? と言うミアスキア。少食の多い一行なので二羽でも多かったようで、もう結構ですと返事が返る。既に一部は数日後までの簡易保存食として調理済みなので、もう充分だ。

 狩ろうと思えばあちこちにある畑をはしごすればいくらでも狩れるだろうと言う。


「ほう? いくらでも、のう。では保存食用にいくらか狩って来てもらいたいものじゃの」

「え? いや、保存食ならもう充分に買い込んできてるじゃないか。充分にあるだろ、フェマ」

「いんや、この坊主も同行するとなれば充分とは言えん。自分の分は自分で確保して貰わねば、今後わしたちが困る事になるやも知れぬからの」


 いや、自分の分はちゃんと確保してるからと断るミアスキアだが、馬に積まれた荷物の量が自分たちのと比べてもかなり少ない事に目を付けたフェマの勢いに呑まれる。


「いや、おれはお前らとは違って身軽にだなぁ……」

「そう言ってこの先、ここと同じように食いもんが簡単に手に入るとは限らんのじゃぞ? その時迷惑を被るのはわしらじゃ。その様な事には絶対にならせんとは言えんじゃろ?」

「むぐっ!」


 以前ここを通った経験があるとは言え、その時に手に入った食物が同じように手に入るとは言えない。

 幼女に言い負かされて歯軋りをするミアスキアだった。

 夕飯の後に狩りへと行く事を約束させられたミアスキアは、溜め息を吐きながら綺麗な焼け目の付いた鳥肉を頬張る。シンプルな味付けだが、文句の言えない美味さに再び溜め息を吐いた。味付けを理由に断ろうとしたのだが、どう悪く言っても好みの味付けでは強く出られない。

 決してこの酷道を甘く見ている訳ではないが、身軽にして先を進むつもりだったので計画の修正が必要になりそうだと三度(みたび)溜め息を吐くのだった。

 その様子に苦笑したトゥルースは、ついでにと気になった事を思いきって聞いてみる。


「ミアスキアさんはこのままずっと付いてくるのか?」

「いや、付いて行っている訳ではないぞ? おれは主殿の命で調査に向かっているだけだ」


 あくまで任務だと言うミアスキアだが、明らかに同行に近い動きで確実にサポートされているのを感じる一同。きっとミックティルクが気を利かしたのだろうと想像し易い。


「てか……もしかして俺、信用されて無い?」


 今回トゥルースはミックティルクに自分の扱う変色石(レッドナイトブルー)を購入して貰った上で、その石をトゥルース独自のカット加工をするよう依頼されていた。この旅の合間にその加工をして帝都へと届ける予定であるが、そのままトンズラするとでも思われているのでは? と眉を顰めるトゥルース。


「いや、それに関しては一切指示は受けてないな。主殿は全くその心配はしてないと思う」

「……じゃあ、もしかしてニナやシャイニーを心配して?」


 ミックティルクは二人を正妻や側室にとラヴコールを送っていた。それに対して二人からは良い返事は返っていないが、ミックティルクは本気のようだった。ならば危険な道を進もうとしている一行を心配しての同行指示なのかと考えたが、それも否定するミアスキア。


「そういった指示も直接は受けてない。受けているのはこの道の現状把握と住民の確認だ」

「住民? この道には住民が? って、そういえば呪い持ちが住んでいるって聞いたような気が」


 って事はここにもそんな住民が? と思ったが、先程住民はいないと言われたばかりだ。では何故? とと首を傾げるトゥルースだが、実際ミックティルクからの指示はミアスキアが言った通りだった。

 ただトゥルースたちの予定にミックティルクが被せてきた意図を、ミアスキアが読んで気を利かしたに過ぎないのだ。これこそ正しい忖度(そんたく)であった。


「のう、何故わしの事は名すら挙がらんのじゃ? のう、お主ら。わしの心配はせんのか?」


 人から心配される事の少ない幼女が一人、そのやり取りを不満気に声を荒げるのだった。





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