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√真実 -013 打開策



「「「「「……はあ? ()たちが?」」」」」


 制止の声を上げた尾桟だったが、その内容にクラスのみんなが首を傾げた。


「おっさん、正直に打ち明けろよ。このままじゃ収まらないぞ?」

「……ああ。分かった、秦石。正直に話すと、お前たちが騒ぎ出すと麻野や多鍋では抑えられんからだ。で、秦石ならそこんところを上手くやってくれそうだから、な?」


 そうだろ? と同意を求める尾桟だが、それは現級長たちだけでなく自分の能力をも見下げる発言だ。到底同意できるものではない。

 するとみんなが非難の声を上げる前に智樹が再び尾桟に問い掛けた。


「それだけじゃないだろ。どうせ真実たちが夏休み中に問題を起こしたと早合点して、それを抑える為にもオレに級長を押し付けようとしたな?」

「う、うぐっ!」


 どっちが教師でどっちが生徒だか分からなくなるような会話にクラスメイトたちの目も丸くなる一方だ。だが、このままでは埒が明かないとみんなが思ったところに祐二が声を上げた。


「なあ、トモ。お前、ちゃんと案があるって言ってたけど、どんなだ?」

「ああ、それなんだけどな。今の状況の方が面白そうだから、また別の案を出そうかと思っていたところだ」

「ん? 別の案? 何だ、それ。聞かせろよ」

「まあ待てよ。先ずは確認だ。なあ、おっさん。もしこのまま級長を決めたとして、その選ばれた級長が不適任だと判断されたら、再度の級長選はあり得るか?」


 ええっ!? と教室内がどよめく。まさかの前期、中期、後期に分けての級長選の提案だ。それには担任の尾桟も目を剥いて驚いた後、顔を顰めて首を横に振った。


「それは難しいぞ。後期の級長選は九月から十月の半ば迄に決める事とあってな。それで今日を選んだんだ。よって、今日決まった級長は後期の期間を全うする事になる」

「いや、それはおっさんの見解だろ? 生徒手帳の校則を読む限り、一回で済ませる事(・・・・・・・・)とは書いてない。なら、その期間に何回選んでも良いって解釈出来ないか?」

「何回も、だと? いや、それは流石に許されないんじゃないか?」


 あくまでも一般的な当たり障りのない回答を口にする尾桟だが、智樹は校則を自由な解釈で読み解いていく。


「いや、駄目だって書いてないだろ? なら、例えば全員がその期間に級長をやっていっても問題ないって事じゃないか。流石にそれは現実的じゃないから、一旦決めてみて駄目なら再び選び直せば良いって言ってるんだ」


 何か間違ってるか? と首を傾げる智樹に、尾桟は何も言い返せなかった。


「成る程な。それなら長くても一ヶ月半、気楽に出来るかも」

「ならお前が級長に立候補するか?」

「クラスの頂点か……面白そうだな。やってみようかな?」

「止めとけ、止めとけ。もうあと十日で修学旅行なんだぞ? でなくても明日からテストなんだ。級長ともなれば、テストで恥ずかしい点を取れねぇし、そのテストのダメージが残っている中で修学旅行、全く楽しめなくなるのは目に見えているからな」

「「「「「うげぇ」」」」」


 テストで良くない点を取る前提で話を進めていく男子たちだが、それは女子も似たようなものだった。


「短期間なら良いって人、誰かいないの?」

「私はやらなくて良い、かな?」

「あたしも~。相手が秦石君じゃなかったら、誰が来ても苦労しそうだし~」

「今はテストを乗り越えなくちゃだし、来週の修学旅行は楽しみたいし……ね」

「だいたい、何で夏休み終わって直ぐにテストなんてあるのよ! おかげで夏休みの最後は全く楽しめなかったわよ!」

「それよ、それ! 夏休み前に期末試験やってんのに何で直ぐにまたテストなのよ」

「あ~、それね。みんな学力テストって言ってるけど、本当は課題考察って言うらしいわよ。ちゃんと夏休みの課題をやっていたのかを確認するためだって」

「うわ~、それ考えた奴マジで呪ってやるぅ~」

「やめなさいよ、アンタが言うとマジに聞こえるから」

「でもさ、話を戻すけどテストもあって修学旅行もあってじゃ副級長なんて考えるだけでも嫌よね」

「そうよ。いくら短期間だからって、ねぇ。どう考えても試練よね」


 男子も女子もううむ、と考え込んで黒板に挙がった名前を見上げる。

 そこには問題児たち六人と真実、光輝の名前が。どれも級長副級長とは縁の遠い名前ばかりだ。かと言って、自分が名乗り出る程の勇気も余裕もない。

 ふと、この騒動の発端である智樹を見れば、教壇目の前の席なのを良い事に麻野、多鍋と何やらコソコソと話し込んでいた。その様子を見ていた祐二が再び智樹に質問を投げ掛ける。


「なあ、トモ。まだお前の考えを全部聞いてないんだけど、元々はどんな案だったんだ? さっきのとは別の案なんだろ?」

「そうだな。元の案としては、このまま一年間、麻野と多鍋に級長と副級長を続けて貰おうかと、な」

「「「「「はあ!? 丸一年同じ級長副級長!?」」」」」

「い、いやちょっと待て、秦石。前期と後期で同じ者が続けて級長を務める事は出来んぞ?」


 話を聞いていた尾桟が慌てて智樹を止めるが、当の智樹は尚も続けた。


「そんな事、生徒手帳にある校則のどこにも書いてなかったけどな。なあ、麻野、多鍋」


 智樹が壇上にいる現級長と副級長に声を掛けると、二人もそれに同意するようにコクリと頷く。

 それを見たみんなが首を傾げた。


「そんな事、いつ調べたんだ? 智樹。生徒手帳なんて出してなかっただろ今」

「いつも何も、事前に調べてるに決まってるだろ? 当然、麻野と多鍋にも事前に相談して一緒に確認済みだよ」

「「「「「なんだって!?」」」」」


 智樹は祐二の怪我の関係で、その報告がてら二人にも後期の級長選について夏休み中に相談していた。その中で、智樹が提案した事は恐らく前例がないだろう事から尾桟には確実にケチを付けられてしまうだろう事は予想が付いていたので、二人も校則の内容を詳細まで調べて問題無い事を確認していた。

 だが、二学期初っ端(しょっぱな)から後期の級長選を尾桟が仕掛けてくるとは思っていなかった二人は、当初は智樹の提案に否定的で智樹が級長をやらないのなら他の者にやらせる事を進言していたのだが、自分たちでは役不足であると烙印を捺されたような悲しさと憤りを感じてしまい、智樹の提案に乗る事にしたのだ。

 尾桟に不信感を持った麻野と多鍋は、今回の級長選には一切口を挟まずに静観する事に。その上で智樹の提案が通れば級長副級長を続投する心構えが出来ていた。そこには多少なりとも意地があったのは否定出来ないが、二人とも級長副級長を自信を持って務めてきており、その中で楽しさや満足度も感じていたので続投についても少なからず興味を持っていた。

 その上での一番の問題は連続して級長職に就けるのかどうかだが、智樹がそこにもうひとつの抜け道を見出だした。


「まあ、続けて級長をするのが駄目ってんなら、さっき言ったように間に誰かを挟めば良いって事だよな」


 さあ、どうだ! と言わんばかりの顔で尾桟の方を向く智樹。これには尾桟もタジタジだ。

 そもそも智樹が提案したふたつの案はどちらも前例がない。いや、全く無い訳でもない。それは……


「そもそも、連投が駄目ってのはただの言い訳だろ。麻野は一年の後期の後、二年の前期にも級長に選ばれているよな。これって連投じゃないのか?」


 クラスが変わったと言っても、それも連投と言えば連投だ。

 いよいよ逃げ道が無くなった尾桟は、すっかりと諦めて項垂れるのだった。





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