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ほのぼのお仕事  作者: まひろ
31/35

不死身とはご都合主義の塊

 お待たせしました。

 さて……今回なのですがありえねぇと言えるほどのご都合主義が……まぁ夢オチとかじゃないからいいよね? よくない? うん、ご都合主義にしないと話を持っていけなかったんだ……これは要反省です。

 そのような今回ですが、それでも楽しんでいただける方がいれば幸いです。

 魔物と対峙している筋肉軍人が魔物の不規則な動きの攻撃により負傷した。

 魔物によって左腕を半ばから食いちぎられていたのだ。

 ユアン君が状況の変化に声を上げた。


「パロゥ隊長!?」

「余所見すんな!!」

「っ!!」


 筋肉軍人の叱責によりユアン君は言葉を飲み込み自分のやるべきことに戻った。

 素早く行動を終え次に移る。


「トリート先生次は杭打ち機を垂直に立たせます!」

「言わなくてもいいから早くなさい!!」


 重量100kg以上在る鉄の塊をユアン君と二人だけで垂直になるように立たせる。

 無理だの何だのいっていられる状況じゃない、だから無理でもやらなきゃね。


「「せーの!!」」


 道具も何も使わずに本当に腕力だけで100kgオーバーの鉄の塊を動かす……正直言葉で言うよりきつい。

 想像して見てほしい、たとえばだが長方形の四角い箱が整備されていない地面に無造作に置かれておりその重量が100kg以上、トッテも何も無いその物体を二人だけで垂直に立たせる。

 二人でやれば一人約50kg相当と思うかもしれないが実際はそこまで単純では……というよりあたしにはキツイ!


「うぬぬうぅぅぅぅ!!」


 気合を入れながら女らしからぬ声を上げ兎に角持ち上げる。 と言うかコレ冗談抜きで腰に来る……ヤバイぎっくり腰になりそう、この状況でなったら洒落にならないんだけど!?

 よくネタに使われるぎっくり腰だけど実際洒落にならん、バカにしてる人は一度経験……経験はしないほうがいいね、本気で後悔するから。


「も……もうちょっと……これでいい?」


 そんなこんなで色んな意味でやばかったが何とか垂直に立たせることに成功……と言ってもまだ支えてたりするのだが。

 ユアン君が垂直に立っているこの杭打ち機を固定している間は私がコレを支えてる……え? 倒れそうになっても支えられないよ? この行動意味なくね? ……まぁいっか。

 ちなみに何で固定するのか、それは杭打ち機を打ち込んだとき固定して無いと杭打ち機のほうが吹っ飛んで意味がなくなるかららしいよ。

 筋肉軍人の状態を確認する……わぁすごい、あの状態であの人持ちこたえてる……ただあれを助け出すのは無理ね。

 まずこの場に魔物を留めて置く存在がどうしてもいる。 それが出来るのは現状であの人だけ、あたしやユアン君じゃ紙の壁にもならないから無理。

 次に恐らくあの人に退避するだけの余力は無い。 見ただけでも重傷、本来ならすぐにでも治療しないと危ない……にもかかわらず何で今あの状態で動けているのか不思議ね、気合とか根性とかかしらね。

 まぁこの状況からあの人を助け出すには恐らく30人以上いるでしょうね、そしてその30人はたった一人を助けるために漏れなく死亡。

 この状況であの筋肉軍人が助かる見込みはないわね……え、冷たい? 非人道的? だったらそういうこといえる奴が何とかして見ろと思う。

 この世界は私が元いた世界ほど優しくない、目的のために切り捨てる命など吐いて捨てるほどある。

 それはこの世界に長くいればいるほど分かる……ただそんな中でも平和ボケしてるユアン君は助けに行くんだろうなぁ……イシス帝国は元の世界に最も近い……いや、元の世界より安全だったかも? まぁあの国だけだね、優しい世界は……

 そんな風に少しだけ考え事していたら声が掛かった。


「準備終了です、トリート先生は退避をボクはパロゥ隊長を助けます」


 やっぱりね……でも、どうやって?


「パロゥ隊長準備終了です。 退避してください!」


 そう言いながらユアン君は駆け出そうとする。

 何か策でもあるの? 無いよね……あったとしてもリスクが高い博打しかないよね。

 だからあたしはユアン君やあの筋肉軍人に恨まれるのを覚悟で筋肉軍人を切り捨てる事にした。

 そしてユアン君の首根っこ掴んで無理矢理行動起こそうとした時筋肉軍人の方が叫んだ。


「旦那がさっさと退避しろ、こっちは何とかする!」

「ですが!!」

「そこの人旦那連れてさっさと退け!!」


 ああ、この筋肉軍人は自分のことは分かっていたようだ……分かっていてこの役を引き受けていた。

 分かっていないのはユアン君一人だけか……いや、ユアン君も分かっていてなおこの行動を起こしたのかもしれない。

 だけどまぁそれは関係ないね、元々あたしはそうするつもりだったし筋肉軍人からもそう頼まれた。

 だったらその意を汲んでやるのが情けって奴じゃないのかな?


「……分かった、いくよユアン君」


 あたしはもうユアン君の言葉は無視して引きずりながら退避した。

 人によってはあたしの考え方は自分に酔ってるとか思われるかもしれない、だけどそんな事はどうでもいい。

 あたしは助けられる命を助ける……ただそれだけだ。


 あたしとユアン君が退避した直後に見ると筋肉軍人が吹き飛ばされそれと同時に爆発音がしすさまじい騒音が襲ってきた。

 罠が発動した瞬間先程まで立っていた地面が一瞬にして消えその場にいた物は全て飲み込まれていった。

 そしてけたたましい音が続き穴に向かい土の爆弾が降り注ぎ地面が埋められていった。

 あたし達が先程までいた場所には何も無くなり黒い土が辺りを埋めていた、魔物は全部飲み込まれたようだ……あの筋肉軍人と共に。

 あたしはようやく去った危機からその場にへたり込んでしまった。


「ようやく終わったみたいね」


 あたしの取った行動にユアン君なら叱責があると覚悟していたんだけど……あたしのことは見向きもせずユアン君は穴じゃ無い方に突然走り出した。


「ちょ、何処行くの!?」


 ユアン君の向かった方には瓦礫があった……あれ?あんな所に瓦礫ってあったっけ?

 兎に角ユアン君は必死に瓦礫をどかしています……一体何やってんの? そう思っているとユアン君が私を呼びました。


「トリート先生、パロゥ隊長を助け出すのを手伝ってください!!」


 はい!? パロゥ隊長ってさっき死んだ筋肉軍人の事だよね、ユアン君気でも振れた?


「何ですかその哀れみのような顔は!? ボクはまともです、さっきパロゥ隊長がここ(・・)に吹っ飛んでいくのを見たんです。 生きてさえいればまだ助けられるかも知れないんです!!」


 吹っ飛んで……って確かに最後飛んでた様な気がするけど……え!? そこにいるの!!?

 半信半疑だけどとりあえずユアン君を手伝い瓦礫をどけていく。

 そしてどけていくと……満身創痍で虫の息状態だけどまだ生きていた。


「すぐに治療します」


 どんなご都合主義だとかこの際どうでもいい。 瀕死でも生きているのならあたしのやる事は決まっている。 助けられる命は助ける、さし当たってまずは止血これ以上は本当にまずい……しかし問題はこの後だ、手術が必要なんだがこの場が安全なのかどうか……ええぃ!! どうせ動かせないんだから安全なんか知るか、ここでやったるわ!! ブ○ック○ャック好き舐めんなよ手術道具とか常に持参してるんだから!! ……あ、この人の血液型って何? 輸血も必要なんだけど持ち合わせで足りるか? 血って確保できるのかな?


「お願いします。ボクはこれから東側の戦闘に加勢しに行きます」

「了解。あたしここで手術始めるから後のことは何とかしといて、後この人の血液型教えて」

「え、血液型……すみません知らないです」

「はぃ!? ……あー、そっかこの国にはその概念は無かったんだっけだとしたらまずそっからか……」


 このクソ忙しいときにやる事が増えた!! 元の世界とは違ってこっちでは血液型調べるのは現状魔術しかないからめんどくさいんだぞ!! それにこの状態だと輸血用の血なんて確保されて無いだろうし……あーもぅ!!


「ユアン君、加勢に行く前にやってもらう事ができたよ、今からあたしがやる事を一回で覚えて(・・・・・・)この人と同じ血液型の血を集めて来きなさい」

「え?……トリート先生まだ東側はまだ戦闘中だと思うのでボクはその加勢に……」

「YESしか受け付けないから……やれ」

「……はい……迅速に何とかしてきます」


 さて、それじゃあやれる事をやりますか……



◇◆◇



 今ボクは東側の戦場へと向かっています。

 トリート先生は血液型を調べ終わったらすぐに手術に入りました。

 と言うか魔術で無理矢理無菌空間を作り出すとか、分からないところから医療器具取り出すとか、洗浄魔術とか……と言うかそんな色々できるなら魔物との戦いもうちょっと何とからな無かったんですかね?

 ちなみにパロゥ隊長の血液型はO型でした。 ボクはA型、トリート先生はB型なので輸血不可。その結果……


『10分以内にO型の血液集めて来なさい』

『……何とかしてきます』


 と言うやり取りがあった……仕事モードのトリート先生の笑顔は怖いですねぇ……必要な事は分かっているので当然やり遂げるつもりですがもし出来なかったら……と考えると恐怖しか出てきません。

 ただ問題点としてですね……まだ戦闘中だった場合まず魔物を倒して、命に関わる人が入ればその人を処置し、みんなの血液型を調べ、必要な血液を採取しトリート先生のところまで持ち帰ると言う……

 ちなみに現在ボクは1分30秒ほど全力疾走しております。

 東側には後30秒ほどで到着できそうなんですが全力疾走で片道2分掛かるんです。 つまり移動に往復4分。 つまり先程上げた必要行動を6分で完遂しなければならない……あれ?


 ― ……このミッションは完遂可能なのか? ―


 いや、無理でしょこれ……ボク一人じゃ絶対無理よ?

 ……残り30秒以内に考えるんだボク!! 完遂できなければ色々な意味で『終了』の二文字が現実となってしまう!

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 はい、何も考えが出ないままに現場に到着です。

 ああぁぁ時間が無い!!

 とりあえず状況の確認からだ。

 魔物は……見た状況だと残り一体?……周りに三体死体が転がってる。 んっと怪我人とかは……あれ、見当たらない?


「陣形崩すな!防御怠るな!攻撃の手を緩めるな!」

「「オオォォ!!」」

「足を止めるな!武器が消耗したら交換しろ!フォロー入れ!敵をよく見ろ!正面回避!!」

「盾破損フォローを!」

「任せろ!!」

「前衛交代、後続隊前へ!!」


 ……あれ? これボクいたらもしかして邪魔になるんじゃ?

 東側の戦闘場所にた取り付いたらそこはすさまじい連携で魔物を圧倒しているパロゥ隊の14名がいた。

 彼らもしかして滅茶苦茶強いんですか?

 それから一分ほどで最後と思われる魔物はパロゥ隊に仕留められてこの夜の戦闘は終了した。


「うん……何と言うか……何だかなぁ……」


 仕事を完遂する上でこれほど僥倖は無いのですが……ボクは一体ここまでで何を悩んでいたんでしたっけ?

 そんな事を思いつつボクは状況が切迫しているためパロゥ隊の面々に状況を説明し行動を開始した。

 ちなみにだがパロゥ隊の面々は大きい怪我などは特に無くその屈強さを見せ付けられた感じだった。

 一人で魔物三体を足止めできるパロゥ隊長といい、合計して四体の魔物を14名で……いえ、怪我人いましたね、16名で倒してしまうパロゥ隊の面々といいこの国の軍隊は……いえ、多分違いますね。 パロゥ隊(・・・・)は化け物と言える人物達の集まりなんですかね?

 まぁ……考えてもしょうがない事ですね……

 

 そしてこの後はパロゥ隊の迅速な行動によりパロゥ隊長も一命を取り留めることが出来現在は軍の仮設本部に移動し治療中です。

 これにより一先ず今夜の魔物騒動は落ち着きました。

 まぁパロゥ隊の面々は倒した魔物の死体の処理に奔走していますが……さすがに死体をそのままには出来ません、他の魔物がその死体に引かれてまた襲ってくるとも限らないのですから……さすがにこれ以上の魔物は相手に出来ませんし。

 ちなみにトリート先生の身柄はボク預かりとなりました……本来なら違法国内侵入で軍の預かりになるのですが……面倒事に巻き込まれそうとかでボクに丸投げしてきました、いいのかそれでパロゥ隊!?

 そして今回一番の被害者はパロゥ隊長でしょう、左腕を失い、体の至る所に大怪我を負いました、彼の今後に不安が残ります。

 今回の件は一先ずこの辺でしょうか……ん? 何か大事な事を忘れている気がする……

 そんな事を思い今回の報告書を作っているとき現在パロゥ隊長の治療室として使われている部屋からトリート先生が出てきました。


「やれる治療は全部終わった、後は経過しだい……とりあえず左腕以外は全部直して見せるよ」

「やはり無い物を戻すのは無理ですか」

「魔術や魔法は万能じゃないからね。無い物を生やすのは無理ね」

「となるとパロゥ隊長は軍を引退する事になるかも知れませんね」

「その辺はあたしには何にも言えないね、そもそも他所の国だしその辺の事情は口出しできないしね……あたしに出来そうな事は医学的なアドバイス位だね」

「そうですね……」

「……まぁ手伝える事は手伝ってやる。 あの隊長さんは現状戦線離脱になるのは間違いないそうなるとユアン君たちの負担が大きくなっていくんでしょ?」

「そうですね、そうなった時はお願いします」


 そうしてこの話は締めくくられた。

 この後トリート先生は他の隊員達の怪我を見るそうだ。

 ボクも今かいている報告書を書き終わったらアリスさんの看病ー……あ……忘れてたの……これだ……

 思い出した途端嫌な予感に襲われた……襲われたが目の前に医者がいるのなら話した方がいいだろう。


「あー……トリート先生、実はこれから見てもらいたい人が一人いるんですが……」

「ん? そんな改まって言わないといけない人いたっけ?」

「実はトリート先生が会っていない人が一人いるんです……今熱で寝込んでて……」

「はぁ? この大変だった時に熱で寝込んでるって……体調管理がしっかり出来ていない奴なんて最後だほっとけ」

「いえ、その子は一般人の七歳の女の子でして……」


 - メキッ -


 その音と共に僕の視界は突如として見えなくなり頭に激痛が走る!


「ちょ!? ギブギブギブ!!」


 ボクは万力の如きなアイアンクローを食らっていました。


「ユアン君……なんで軍事拠点に一般人がいるのかな? 何でその事を今言うのかな? ちょっと詳しい話聞かせて欲しいなぁ……」

「は、話します。話しますからこれ以上力こめないで下さい!! ボクの頭がトマトケチャップになっちゃいそうです!!」


 そしてボクはアリスさんが過労で倒れたと思われる……トリート先生が来る直前の話しをした。


「へ~……つまりユアン君、君は自分の監督不行きで七歳の女の子を過労で倒れるほど酷使したと?」

「えーっと……結果だけ見るとそうなっちゃうんですかね?」

「そうなっちゃうねぇ……」


 ― ぎゃああぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ ―


 その日の戦闘が終わり静寂が訪れた夜中、突如男の断末魔が響き渡ったとか……

 後にこの声を聞いた隊員は言う……「あれはこの世の物じゃなかった」と……

 ちなみにだが、この後トリート・ファーツはアリス・ロートを最優先で見に行ったとか。

 そしてユアンはトリートの手によってボロ雑巾のようにされ仮設本部の外に打ち捨てられてたとか……

 何にしろ今夜の騒動はこれで幕引きとなった。

  

少々話を変更いたしました。

ここで出ていた会話が後々の回に影響してしまうためです。

変更した会話内様 【義手関連の話】

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