No.40 歪みの輪郭、あるいは隣席の微熱
No.40 歪みの輪郭、あるいは隣席の微熱
ここのところ、宇賀の奴の様子がおかしい。
いや、まぁ、なんであいつがそんなにピリピリして、今にも破裂しそうな顔をしてるのかは、あたしもちゃんと理解してる。できることならどうにかしてやりたいとも思う。
だけど、じゃあ具体的にどうしてやればいいのかって聞かれたら……はっきり言って、あたしにだってさっぱりわからない。
原因は、全部あたしの隣の席の子──繭住真くんだ。
4月に学院に編入してきて、隣の席のよしみであたしからおしゃべりしたりしてたんだけど、う~ん、最初の印象はなんて言うか「徹底的に無感動な子」って感じだったかな。
なにしろ、転校初日にあれだけ言葉を交わしたっていうのに、その日にはあたしの存在を綺麗さっぱり忘れ去ってたりしたからね。あれは女の子としてちょっと傷ついたなぁ、もう。
それから、宇賀がちょくちょく絡みに行くようになって、あたしもその繋がりのなかで話したり、一緒に居たりすることが増えた。
過ごす時間は、別に苦痛ってことは全然なかった。
むしろ、なんて言うんだろ、気配り? そういうのを、まるで計ったかのような完璧なタイミングで差し出してくる子だったから、一緒にいて居心地がいいなって思う部分すらあった。
──特に、6月のころ。
あたしがちょっと無茶しすぎて足をやっちゃったあと。
何をしたのかは教えてくれなかったけど、まるで大怪我を負ったような酷い後遺症を出して、あたしと同じ病院に入院してたことがあったのね。
あの時、病院のリハビリ室で頻繁に会って、いろんな話をした。
その時は、最初のころみたいな冷たい無感動さはなくて、少しだけど、確実に「感情らしい感情」をその瞳に滲ませていたと思う。あたし、それを見てちょっと嬉しかったんだ。
それなのに、ここ最近。
そうだなぁ、あの騒がしかった学芸祭が終わったあと辺りからかな?
急に昔みたいな……ううん、昔よりもっとずっと冷たい「無感動な子」に逆戻りしちゃったの。
「ねえ、何かあった?」
気になって直接聞いてみたこともあった。だけど、返ってきたのは抑揚のない声での「何もありません」って一言だけ。
だから、アホだけど熱い宇賀の奴も、どうしていいかわからないって顔で立ち尽くすことしかできないでいる。
あたしらはべつにお医者さんじゃないし、超能力者でもないから、相手の心の内なんてものはわからない。
それでも、何かしらの相談事ぐらいなら、友達として話してもらえればありがたいんだけれどもねぇ。
これじゃあ、突っぱねられたみたいで手も足も出せないよ。
う~ん……こういう、人の心の機微とか、急に心を閉ざしちゃった人の扱いに詳しそうな人……。
誰かいないかな、あたしらの身近で。
……あ!
そうだ、あの人に聞いてみよう。あの人なら、何かわかるかもしれない──。




