学園 イル 3
神聖力の暴走で会場にいる人は全員が逃げていった。が、俺はミカさんが見せる闘いに夢中でまだ会場に残っていた。舞台は竜が放った息吹の影響で煙が充満しており詳しい様子は見えない。それは学園の先輩方も一緒のようで空気が張り詰めている。
煙が徐々に晴れはじめ、状況が分かり始めた。ミカさんがいた場所には何やら黒いものが見える。すると急に強い風が吹き、煙を吹き飛ばした。煙が晴れ、俺が目にしたのはミカさんを囲うようにして伏せている龍だった。その龍は全身が黒い鱗で覆われていて、息吹が直撃したである場所は鱗の色が少し変わっている。すると、龍が動き始めその全身が見えるようになった。その姿は前の世界で物語として出てくる龍族の原種に酷似していた。
「好きにしな。」
ミカさんが龍族にそう言うとどこかに消えていった。と思ったらすぐ横にいつもの姿で現れた。
「まだ逃げてなかったんだ。何かあった?」
「いえ、何かあったわけではないんですが・・・。あの龍ってもしかして。」
「ええ、想像している通り龍族最初の龍だよ。」
改めて観察してみると、見上げるほど大きい体と四本の足、その巨体を飛ばすための翼と先ほど見た竜とは比べものにならないぐらい巨大な龍だ。先輩達も召喚体の竜も完全に戦意を失って腰を抜かしている。
『久しぶりの外だというのにつまらんな。誰か我の話し相手になってくれんかの~。』
驚いたことに龍が言っていることが分かるのだ。ミカさんに聞いてみるとミカさんが近くにいるから聞こえるのではないかとのこと。すると、龍が俺たちに気がついた。
『そこのお前、我の話し相手になってくれ。長い間誰とも話していなかったからな。』
どうしようかと慌てていると、ミカさんが取りあえず人魚族の話す言葉で話すようにお願いしてみたらとのこと。ミカさんは龍には見えていないらしく俺の方を見ている。
「あのー、人魚族の言葉なら分かるんですが、そっちでお願いできますか?」
「おお!やはりそうか!懐かしい匂いがすると思っていたが我と同じ世界の住人だったか!っと時間が止まったな。彼奴が気を利かせたな。」
その言葉に周りを見ると、明らかに異質な感じがする。龍が言うにはミカさんが時間を止めたのではないかとのこと。これによりどれだけ龍と話しても時間は経たない。俺の寿命は進むがそれはミカさんが戻してくれるだろう。
「いやはや、ここ数億年ほとんど話してこなかったからありがたい。ちなみにお前は彼奴とどういう関係なんだ?少なくとも無関係ではないのだろう?」
俺はミカさんとはこの世界で一方的な協力関係であること、期限付きでミカさんが守ってくれるということを話した。龍はなるほどと頷いた。
「それで?人魚族の言葉が話せると言うことは人魚族が暮らす静寂の海の出身か。まさか人魚族と人族が共存するとはな。時が経つと面白いな。」
この時初めて知ったのだが、龍族は寿命が相当長いと言うこと。なので人魚族の長老も龍は知っていた。
「人族が人魚族と一緒に暮らすのは珍しいんですか?」
「いや、いずれはするだろうと思ったが以外と早く共存したなと言うことだ。ちなみに言うが我を含めて人族以外の種族全部が人族のことを自分たちより劣っているとは考えていないからな。」
「それはいったいどういうことですか?人族って全部において勝っているところはないんですが。」
龍曰く最初は人族を見下していた種族もいたらしい。だが、人族はありとあらゆる気候や土地でも工夫して生活をする。それは他の種族には出来ないことらしい。さらに、他の種族から影響を受けることで生長することが出来るのも人族の特徴らしい。驚いたことに妖怪の里が出来ることになったきっかけは妖怪の里のある地域に住んでいた妖怪達が人族を助けてくれるようにミカさんに頼んだからだそう。その結果妖怪の里と呼ばれるあの世界ではかなり有名な場所になった。
「まだまだ話し足りないのだが・・・。もうそろそろ時間切れのようだな。またいつか話そう。彼奴も交えてな。」
龍がそう言うと、周りの雰囲気が元に戻った。そして龍は巨大な翼を動かしてそれに消えていった。後に残ったのは、赤く染まった舞台と呆然としている先輩と丸くなっている竜だけだった。
俺は探しに来たのであろうランリ先生に連れられて会場を後にした。そこで気がついたのは、ガルバルドの持つ神聖力がさらに上がっていることと、少し体が大きくなっていることだ。神聖力が上がったことで後日面倒なことになったが俺は知るよしもない。
その日は取りあえず解散となったので、屋敷に戻っていた。屋敷に戻った俺は学園の寮に移動するための準備を進めていた。学園に入る人は皆平等に寮での生活になる。だが、貴族家の子達は庶民のことは違い部屋の広さがかなりある。なので、メイドやお手伝いを一、二人連れて行くことが多い。俺はまだ連れて行く人を決めていなかったが先に支度だけを済ませておこうと、ガリバルドに手伝ってもらって進めていた。ミカさんは龍と抜き取った力をこの世界の最高神に預けてくると言ってどこかに行ってしまった。必要な物を大体まとめ、あとは運ぶだけと言うとき部屋の扉がたたかれた。部屋に入ってきたのは家にいるメイドの一人だった。
「どうしました?準備なら先ほど伝えたとおり自分でやるので大丈夫ですよ。」
「はい。そちらではなくて今回学園にはわたしを連れて行ってもらえないかとお願いに参ったのです。」
「学園にですか?確かにまだ誰を連れて行くか決めてませんが、どうしてですか?」
そうメイドに聞いてみると、メイドとしてこの家にいるが自分は他のメイドに比べてまだまだ経験が浅い、なのでこの機会に俺について行きたいとメイド長に伝えたところ、それは俺に聞くべきことだと言われたので聞きに来たらしい。
「なるほど、そういうことでしたか。それなら勿論了承しますよ。むしろわたしからお願いしたいくらいです。」
「本当ですか!ありがとうございます!では準備をしてきますので失礼します。」
メイドはうれしそうに部屋を出て行った。それを見送ると、俺は一枚の書類を学園から送られてきた封筒から取り出した。この紙は貴族家が連れて行く従者に関することを記述して学園に提出するためのものだ。他の貴族家の場合は従者が書くものだがうちの家は商業事をする家なので練習という意味を込めて俺が書くことになっている。俺はささっと書類に必要事項を記入すると学園に提出するための封筒に入れた。この封筒には家紋が入っているのでどこの貴族家がすぐに分かるようになっている。この日支度をすべて終えた俺は明日のことを考えてベッドに入って寝ることにした。




