神聖力の暴走
イルの横に着地したわたしは冷静に原因を考えていた。と言ってもわかりきっているのだが・・・。神の力は契約者が指定しない限り永遠に流れ込んでくる。なので、神の力を使う場合は神との契約時に最大値を決めるか、神の力がどれだけ流れ込んでも耐えるような体にするなど色々と方法がある。今回の場合は何もしなかったため神の力が溢れ、暴走すると言うことになったのだろう。
『どうするんですか?このままだと大変なことのなりそうなんですが・・・。』
「どうするかなー。神の力は回収するけど今やるのは面倒なんだよね。」
『ちなみに、あの状態で放置するとどうなるんです?』
最初は慌てていたイルも次第に落ち着いてきて、状況をわたしに聞いてくる。神の力が暴走した場合、最初は器から溢れることで安定化しようとするが、次第に流れてくる力の方が多くなる。そうなると器は耐えることが出来ないので盛大に赤い花が生まれるというわけだ。イルにそう伝えると何故か慌てて止めるように言った。
「何で?別に今止めなくてもいいじゃん。」
『確かにミカさんにとってはそうかもしれませんが・・・。』
「まぁ、いいよ。神の力を利用されたら大変なことになるしね。だけど、その間はイルのこと守れないからそこは注意しておいて。」
『分かりました。と言ってもすぐに避難するので大丈夫だと思います。』
イルが避難する前にガルバルドの体にわたしの力を少しわけた。ついでにもし何かあったらイルを守るように言っておいたので、わたしがいない間に死ぬと言うことはないだろう。わたしは空中に飛びあがって人気のない会場のすぐ脇にある建物の裏のところに移動した。今回はばれることを防ぐために獣人の姿を取ることにする。わたしの獣人姿は妖狼の影響をもろに受けているので、獣人の特徴である尻尾と耳は純白の白色で尻尾は四本ある。この姿だけでも神と結びつけられる人はいないだろうが念のため顔を隠す狐のお面をつけている。
「さてと、この姿も久しぶりだな。頼むよ。」
わたしが語りかけるようにそう言うと、体の中から妖狼の声が響いてきた。この状態だと妖狼との共神が深まるので妖狼の司る力も使えるようになる。入念に変装したわたしは地面を蹴って飛び上がると会場の見渡せるぐらいの高度まで跳んだ。そのまま舞台に落下するようにして着地した。目の前には神の力が溢れ続けている男がいる。周りにいる奴らもそちらに気を取られわたしに気がついていない。
「ほんとにどうしようもないね。神の力は返してもらうよ。」
独り言のように呟くと神器の短刀を取り出してあふれ出る神の力を断ち切った。神の力を暴走させた男の後頭部を鷲掴みして切られた力と男の中に残る力をごっそり取り出し、一つの氷にクリスタルに封じた。一度こうしてしまえば神の力が流れ込んでくることがないため、これで男が赤い花を咲かせることは無くなったわけだ。
「おい!お前いったい何者だ!」
早々に退散しようとするわたしに気がついたのか、男が叫んだ。それにより周りにいた奴らもわたしに気がつきすぐに囲うようにして展開した。
「・・・何者でも関係ない。」
「そうだな。今は関係ないが・・・、後で話してもらうぞ!」
男がそう叫んだのを合図に展開していた奴らが攻撃してきた。だが、そんな攻撃がわたしに当たるはずもなく上に跳んですべて躱し、攻撃してきた奴全員を地面から氷柱を生やして突き刺した。舞台は一瞬で氷柱によって突き刺された奴の血で赤く染まった。氷柱の先に着地したわたしが下を見ると、力を披露していた者達が集まっていた。
「その手を離せ!」
披露していた奴の一人がわたしに向かってそう叫んだ。しかし、どう見ても恐怖心が勝っていて、負けないように声を出しているのだろう。そしてその言葉でわたしが未だに男を持っていることに気がついた。
「あぁ、これのことですか。もう用済みですのであげますよ。」
無造作に男を放り投げると数人が舞台上に転がった男に駆け寄りどこかへ連れて行った。わたしからは特に何もすることは無いので、舞台にある氷柱をすべて壊した。これによりわたしと集まっている奴らの距離が近くなった。
「お前はいったい何者だ?その力をどうするつもりだ?」
「どうするつもりかですか・・・。面白い質問ですね。そうですね、今のところはただ集めているだけです。それに・・・、これ以上は言えませんね。さて、どうしますか?力ずくで止めますか?」
「そうさせてもらう!」
いきなり二人が突っ込んできた。それを氷の壁を足下から生み出し空中に逃げた。すると、そこに合わせたように遠距離の攻撃が飛んできた。とっさに空気中の水分を凍らせそれを蹴って回避した。
「驚いた。結構やるじゃん。だけどわたしを捕まえるには全然足りないけどね。」
「それはどうかな。」
すると、視界の端に光が生まれた。そちらを見てみると先ほど歓迎会で出てきた竜が攻撃態勢でこちらを睨んでいる。周りにいた奴もいつの間にか竜の近くまで避難していた。
「お前が誰であろうが関係ない。だがその力は返してもらうぞ!」
男がそう叫ぶと竜が息吹を放った。正直、直撃をくらっても効かないがそれでは面白くないのでわたしは時空間からある存在を呼び出した。その存在が出てきた瞬間、息吹が直撃した。




