学園 イル 4
朝、俺は部屋の扉がたたかれる音で目が覚めた。カーテンの隙間からは光が差し込んでいて日が昇っているのが分かる。俺は寝間着のまま部屋の扉を開けると、そこにはメイドが一つのかばんを持って立っていた。
「・・・どうしました?」
「いえ、遅れないようにと思いまして・・・。失礼だったでしょうか。」
「まぁ、その心がけはいいことだと思いますが、少し早すぎるかと。」
取りあえず廊下にいてもらうのもなんなので部屋に招き入れた。俺はもう一つの部屋で寝間着から学園の制服に着替えると持っていく荷物を持ってメイドの待つ部屋に戻った。
「じゃあ行きますか。よりたい場所もありますし学園には丁度いい時間になるでしょう。」
そう言って部屋を出て玄関に向かうと、そこには母様と姉様が待っていた。どうやら俺が早く出ることを予想して見送りに来てくれたようだ。
「行ってらっしゃい。いつでも帰ってきていいからね。」
「あそこらへんのお店ならわたしも知ってるから聞いてよ。」
「ありがとうございます、母様、姉様。一様商会の方にも顔を出しておこうと思うのでそちらでも聞いてみます。では行って参ります。」
そう言って屋敷の外に出た。屋敷の門には馬車が来ていて俺たちはその馬車に乗り込んだ。俺は時々馬車に乗って街に出ているがメイドさんは初めてらしく窓から外を眺めている。
「そういえば、まだ名前を聞いてませんでしたね。すみません、全員の名前を覚えているわけではにので。」
「謝らないでください。専任だったわけではないので当たり前です。わたしはキオーナ。これからよろしくお願いします。」
キオーナはそう言うと頭を下げた。俺もそれに返事を返す。外を見ると商店が並ぶ町並みに変わっていた。五大貴族家のうち四つの貴族家は街や貴族達が済む貴族街から少し離れた位置に屋敷がある。これはこの国が個人を大切にするという方針だからだ。現在国をまとめている人材の中に五大貴族家の者は誰一人いない。これは貴族としての力で国を動かそうとすることを防ぐという意味がある。そのうえ五大貴族家は位を持たない。代わりに国と王族がその身分を保障している。つまり俺たちに反抗すると言うことは国と王族を敵に回すと言うことだ。
馬車はその町並みを抜け、ある建物の前で止まった。俺とキオーナがその建物の中に入っていくと、中には数人、人がいて入ってきた俺の方を見ている。その視線には気にも留めず受付に向かった。
「ここの一番上の人に会いたい。その人にこれを見せれば分かると思う。」
そう言って俺が受付にいる人に渡したのは、国から与えられたリーネル家の家紋が入った懐中時計だ。懐中時計を受け取ると、受付の中にいたもう一人にそれを渡した。恐らくよく分からないが取りあえず見せに行こうといった感じか。俺とキオーナはしばらく待合席で待たせてもらうことにした。すると勢いよくドアを開ける音がした。そちらを見ると一人の男性が慌てた様子で立っていた。男性は部屋の中を見回して俺たちを見つけると急いで近寄ってきた。男の手には先ほどの懐中時計が握られている。
「お待たせして済みません!リーネル家のお方なのに!」
男が大きい声でそう言ったことにより部屋にいた全員が俺たちがリーネル家の人物と言うことが伝わった。ここはリーネル家が取り仕切っているリーネル商会の建物だ。なのでこの男性が驚いているのも普段は会うことがない人が目の前にいるからだろう。俺は男から懐中時計を受け取る。
「大丈夫です。今日ここに来たのはわたしが学園に入ることになったので、利用することがあるがリーネル家としてではなく普通の貴族家と同じ扱いをしてほしいというお願いをしに来たのです。」
「そうだったんですか・・・。しかし、よろしいのですか?」
「ええ、わたしの対応で業務を止めるわけにはいきませんからね。利用するときは事前に連絡させていただくので。」
「分かりました。リーネル商会はいつでも歓迎しますよ。」
「ありがとうございます。ではこれで。」
最後にそう挨拶をすると商会を出た。商会はこのあたりにあるすべての商店をまとめているので、商会にお店と日時を伝えれば対応してくれるだろう。俺たちは馬車に乗り込んで学園に向かった。と言っても学園はすぐそこなので馬車を少し走らせると学園の門が近づいてきた。馬車は門をくぐって学園の中に入ると、俺たちを下ろすために停車した。俺とキオーナが馬車から荷物を下ろしていると、建物から誰かが近寄ってくるのが見えた。荷物を下ろすと馬車は屋敷に帰っていった。
「すまないな。こんな朝早く来てもらって。」
そう言って俺たちを迎えたのはイニット先生とランリ先生だった。今回俺が早く学園に来たのは学園内を案内したいという話が合ったので、出来るだけ仕事の邪魔にならないであろう朝にお願いしたのだ。
「メリトくんもちょっと前に来ていたんだが彼は学園で生活しながら学ぶと言っていたから今はもう寮にいるんだ。ラダールくんはどうする?」
「そうですね、食堂とかは見てみたいですね。」
「分かった。じゃあ知っておいた方がいいと思う施設だけ案内するよ。ほらランリ先生も一々緊張しない。」
キオーネは先に寮に行っていると言うことなので、俺とイニット先生、ランリ先生の三人で学園内を移動する。最初に案内されたのは学園の食堂で、ここは貴族と庶民で別れているが中庭はつながっている。貴族の方からは庶民の方に行くことが出来るが庶民の方からは許可が無いと行くことが出来ない。食堂には常に二人色々な科の先生が代わる代わる待機しているので、その先生が許可を出したり分からないところを聞くと言うこともしてよいそう。次に案内されたのは図書館だった。ここの蔵書は屋敷にある書庫と同じくらいの量がある。最後に案内されたのは談話室で、ここは誰でも利用できる場所らしく机や椅子などが数脚設置してあるそこそこ大きな部屋だった。先生が言うにはこの談話室の他にも何部屋か有るらしい。その中に五大貴族の中でも家紋を持った四つの貴族家のみしか利用できない談話室があるそう。その場所だけきいておいて、学園内の案内を終わりにした。先生は他の生徒達の案内準備のため戻っていった。今日は夜にあるパーティーの準備もあるため寮に戻った。ミカさんもいつの間にか戻ってきていてキオーナに預けたガリバルドを撫でていた。
「さぁ、正式な場ではありませんが正式な場と思って準備しますのでご用意ください。」
「準備するのはいいけど、ちょっと早すぎると思うな。多分キオーナは早く終わらせようとするのはいいことなんだけど早すぎるんじゃないかな。」
「それは・・・そうですね。考えてみると夜の準備を昼前にやるのは早すぎますね。申し訳ありません。ご迷惑をおかけしました。」
「まぁさっきも言ったけど早く動くのはいいことだからね。じゃあ、少し図書館の方に行ってくるので。おいで。」
俺が声をかけるとミカさんの近くにいたガリバルドが飛んで俺の肩に着地した。ミカさんも着いてくるようで空中を移動しながら近づいてきた。
『お帰りなさいでいいのかな?どうでしたか成果は。』
「全部は話せないけど言えるのは、あの神の力は意図的に暴走する量が注がれるようになっていたの。多分だけど正規の方法で手に入れた力とは考えにくいかな。」
『じゃあその力を与えた存在は暴走することを狙ったと言うことですか?なんのために?』
「それを調べてる最中。分かったら話せる範囲で話すよ。」
ミカさんとそんなことを話していると図書館に到着した。今回俺が図書館に来たのは家にない本が有るか探しに来たのだ。最初は自分で探そうとしたがあまりに多いので困っていたらミカさんが持ってきてくれるとのことで、椅子の座って待っていた。
「イル、何冊ぐらい持ってく?五冊ぐらいでいい?」
『そうですね、最初はそれくらいでお願いします。』
「はーい、じゃあ持ってくねー。」
ミカさんが図書館内の空中を飛び回って五冊本を持ってきてくれた。ふと気になってどうして触れるか聞いてみたら意識すれば実体がなくても触れるらしい。
「さてと、取りあえずこんな感じかな。気になりそうなやつを選んで来たからね。じゃあわたしはこの子と遊んでるかな。」
そう言ってミカさんはガリバルドを撫でた。俺は持ってきてくれた本を開いて読み始めた。




