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「じいさんが」
滅多に見ない夢を見たのは、李玖に昔話をしたからに他ならないのだろう。
目の前で、母親が泣いていた。泣きながら、何度も繰り返していた。
――雫。ごめんね。どうか、あの人を――。
約束は守るよ、お母さん。
起きた時、雫は泣いてはいなかった。夢を見ようがなんだろうが、雫は二度と泣かないと決めている。
「雫、おはよう」
カーディガンを羽織ってリビングに出ると、李玖がエプロンをかけて朝食の準備をしていた。味噌汁のいい匂いが漂ってくる。
「…おはよー。昨日は悪かったわね、運ばせて」
「軽かったよ」
「じいちゃんは?」
「朝刊を取りに行ってる。……そういえば遅いな」
「え」
「おい」
滅多にないことだ。沙羅から声を掛けてきた。それで、雫の顔が強張る。
「じいさんが攫われたぞ」
雫の動きが止まった。




