第四章 激突!(1)
☆連載第8回です!お読みいただきありがとうございます☆登場人物もだいぶ揃ってきました。これからいろいろな展開が☆よかったらブクマ&評価をよろしくお願いします!
第二重装騎士団に追撃された理法共和国ロゴス軍だったが、かろうじてレガリアス帝国領土内に踏み止まり、そこに新たな戦線を構築した。
追撃によって騎士団はかなりの敵戦力を削いだが、騎士団の損失も決して少なくはなかった。
とはいえ、もしエルンが蘇らせたバルガス将軍と四人の不死の騎士たちの活躍がなければ、敵をここまで押し返すことは出来なかっただろう。
そういう意味では、この騎士団におけるエルンの名声は急速に高まりつつあった。
「聞いたか? 着任したての書記官がその天才的な魔力を縦横に発揮して、わが軍を危機から救ったってよ!」
「おうおう聞いたぜ。なんでも死んじまった騎士たちを何人も蘇らせたって話じゃねえか」
「分団長たちが居並ぶ会議で騎士団長閣下が自ら名前を挙げて、その活躍ぶりを高く賞賛されたらしいな。『天才、ここにあり!』ってな!」
「『生ける断罪』ルビチェック監察官の厳しい尋問をも跳ね返したって聞いたぞ! あのルビチェックがスゴスゴ引き下がるなんて……なんて頼もしいんだ!」
「すごい魔道書記官がいたものだな……エルン様万歳だ!」
「……だってさー。ぷっぷっぷ、笑っちゃうよね」
「うるせぇ」
食事の調達のため酒保天幕に行っていたネネは、その場に集まっていた騎士や兵たちから、エルンに関するウワサ話を聞きつけてきた。
「『天才的な魔力を縦横に発揮した』とか『天才、ここにあり』とかは嘘だけど、まあ、それ以外はいちおう事実なんだよねー……ウワサって怖いねぇ」
「まったくもう……言われるオレの身にもなってくれよ」
「ウワサっちゅうのは、しょーもないコトでも尾ひれがついて、世紀の大偉業になる。ま、今回はええ評判やからな。ええんやないか」
「オレ、過大な評判のプレッシャーに負けて潰れちゃいそうなんだけど……」
エルンの天幕でいつもの三人が話していると、天幕入り口の警備兵が慌てて入ってくる。
「申し訳ございません。先ほど突然の連絡がございまして、ルビチェック監察官が今からエルン書記官を至急に尋問されたいとのことです!」
「えっ? 今からですか?」
「はぁ?! 何言ってんの? まだ会ったことないけど、本当にふざけたヤツね。なんの権限があってそんな好き勝手言うわけ? 信じらんない!」
(……おいおいネネ、相手は監察官だから、オレたちに対する尋問権限はいつでもあるんだぜ)
ルビチェックを罵るネネに心の中でツッコミを入れたエルンは、警備兵に話しかける。
「わ、わかりました。それで、オレはどちらにお伺いすればいいんですか?」
「……何を言ってるのエルン。私、『神の校正者』を自分のもとにお呼び立てするような無礼は働かなくてよ。こちらから出向かせていただくのが当然でしょう?」
天幕の入り口を通じて若い女性の声が聞こえた。
続いてすぐに姿を現したのは、監察官の戦時正装に身を包んだ、ひとりの美少女だった。
猛禽を思わせる鋭い目つき、外見には不相応の不遜さと威厳、白皙の美貌はどこまでも冷たく、口角がわずかに上がる氷の微笑。
「ひえっ! ル、ルビチェック監察官……!」
「あらエルン、もう他人行儀はやめましょう。私のことはリリアでいいわ」
リリアはエルンのことを熱っぽく見つめる。エルンのことしか眼中になさそうだ。
「ちょ、ちょっとアンタ、アンタが監察官なの? ――なんだ、ただのガキじゃないの――今うちのチームの打ち合わせ中よ! なに勝手に割り込んで来てんのよ!」
ネネがリリアに大声で文句をつけた。
「うん? たしか前にも見たような気がするが……そう言うおまえこそ何者だ? おまえ、私をリリア・ルビ・ルビチェックと知ったうえでそんな大言を吐いているのか? この痴れ者めが」
不機嫌さのあまり、リリアの言葉の温度が急速に下がり、その場の雰囲気が凍りつく。
「ネネ、やめろ! 相手が悪い、悪すぎる!」
「ええ、もちろんこの件は相手であるコイツが悪いわ。わたしじゃなくてね!」
「だーっ、そうじゃなくて! 『相手が悪い』の意味が違ーう! くそっ、うまく伝わらねーー!!」
「わたしはエルンの専属秘書官のネネ・レッドラインよ! エルンに何か用事があるなら、わたしを通すことになってるの! お子ちゃまごときが専属秘書官を無視すんな!」
「エルンの専属秘書官ふぜいが何を……ん? おまえ今、ネネ・レッドラインと名乗ったのか? 『レッドライン』……もしかして、理法共和国出身者か?」
リリアのひと言に、ネネが「しまった!」という表情とともにサッと顔色を変えた。
「……だ、だったら、どうだっていうのよ」
「いや、以前に小耳に挟んだことがある。理法共和国の校正官に『レッドライン』なる一族があると。おまえはそこに連なる者か?」
「…………」
「答えないのか。まあいい。ネネとやら、いずれおまえもこの『生ける断罪』が自ら尋問してやる。理法共和国についてはいろいろ聞きたいこともあるからな」
そう言うとリリアは、急に興味を失ったような顔をした。
「エルン、今日は興を削がれたわ。あなたの書いた記録に新たな発見があったのだけれど、日を改めます。楽しみにしておいてね。それでは今日はこれで」
そう言うと、リリアは天幕を出て行った。
「……すごい魔力量やったな。さすが『生ける断罪』リリア・ルビチェックや。しかしエルン……おまえよくあんなの相手に生き残れたな」
「……ネネ!!!」
アンが話しかけるのを無視して、エルンはネネを怒鳴りつけた。
「なんでルビチェック相手にあんな無謀な発言するんだ! ヤツは即決処刑の権限を持ってるんだぞ! ヤツの機嫌が悪ければ、今日、おまえは処刑されてたかもしれないんだぞ!」
「……まさかルビチェックがあんな少女の姿だとは思ってなくて……あの姿を見て、ちょっと舐めてかかってしまったの……本当にごめんなさい」
「もっと自分を大事にしてくれ! ネネもアンもオレにとっては大事な仲間だ。仲間には怖い思いや酷い目に遭ってほしくない。そんな思いをするのはオレだけで十分なんだ。頼むよ……」
「まあまあエルン、ネネをそない責めんといてやってくれ。悪気があったわけやない。それにほんとやったら、うちがもっと早くにヤツのことを教えておくべきやったんや。だから、うちからも謝る。すまんかったな」
「…………」
翌日、前線司令部は戦線近くまで前進することとなった。バルガス騎士団長はじめ騎士たちは馬で、エルンやネネ、アンたちは同じ馬車での移動だ。
前日の一件で、エルンもネネもアンもお互いに気まずい感じになってしまい、移動中の馬車での三人の会話はまったく弾まなかった。
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