第四章 激突!(3)
☆お読みいただきありがとうございます!☆本日も朝昼2回更新です☆明日5/2からは、朝夕更新にするかも☆昨日の朝の電車は座れるほど空いていて「あー、結構平日休みの人、多いんだな……」と羨ましくなりました☆よかったらブクマ&評価もよろしく!
想定戦場では、第二重装騎士団と理法共和国軍との激突のときが迫っていた。
すでに遠距離からの攻撃は始まっている。弓兵による矢が先陣に降り注ぎ、次いで強化魔槍が飛来する。その上空を魔導砲弾が騎士団主力を目掛けて飛んでいく。
「予想どおり、敵の飛び道具による攻撃は大したことはなさそうだ! 被害を最小限に抑えつつ時期を見て突撃、近接戦闘で一気に敵を蹴散らすぞ!」
「御意っ!」
「応っ!」
バルガス将軍の檄に応えて騎士団主力が喚声を上げ、盾をぶつけ合って大きな音を出し、味方を鼓舞する。
騎士団側の弓兵、長槍兵のすぐ後ろにはバルガス将軍をはじめ、ドラグナー、バハラム、グリムウォール、そしてノクスの四騎士が勢揃いしている。
エルンのやらかしとヤケクソな行動の結果として蘇り、いまや不死と魔道特性を身につけた面々だ。もちろん当事者たちはそんなことは知る由もないが。
飛び道具による前哨戦がひと段落するのを見計らい、いよいよ騎士団本体がゆっくりと前進し始める。長槍兵に先行させるかたちで、その後ろから鞍上の騎兵が馬を並み足で進めていく。
ほぼ横一線となって進んでいくバルガス将軍と四騎士たち。その中のひとりヴァレリウス・ノクスは、戦闘開始を前にして武者震いが止まらない。
「……おや、ノクスよ震えておるではないか? ハッハッハ、臆病風に吹かれておるのなら、今のうちに逃げ帰ったほうが良いのではないか?」
「き、貴殿こそ青い顔をしておられるぞグリムウォール殿。小官が庇ってやるゆえ、中年騎士殿は後ろからゆっくり来られてはいかがか?」
「ちゅ、中年とはひと言余計じゃ、この若造め! わしとて、つい先日までは二十代だったのだぞ!」
「うわっはっは! ノクスもグリムウォールもよせよせ! 所詮貴官らはこのドラグナーには敵わぬのだからな!」
そんな軽口を叩きながら、人馬は少しずつ加速していく。
先行する長槍兵が、待ち構える敵の長槍兵の先陣とついに接触する。槍と槍とが絡み合い、お互いがお互いの槍を振り上げ振り下ろして叩き合う。
そこへ並み足から速や足、そして駆け足へとスピードアップした騎馬と騎士たちが、敵兵団に錐を揉み込むように突入していく。
「ウラーーーッ!!」
「どけどけーっ、邪魔するなーっ! 邪魔する者は吹き飛ばすぞ!!」
たちまち算を乱して散り散りになる敵兵。その敵兵を突き刺し、斬り払い、蹴散らしていくバルガスたち。一気に突入した騎兵たちは、ほぼ損害を受けることなく敵兵団を突き抜けることに成功した。
「ウオオオーーーッッ!!!」
騎兵たちの雄叫びが周囲を圧するように轟き渡る。
「……敵の長槍兵を排除後、バルガス将軍以下の騎兵が敵先陣中央部に突入。壊滅的打撃を与えつつ敵兵団を中央突破。反転して残敵を殲滅せんとす」
そして、ここは前線司令部の天幕内。魔道六法の上の空間に展開する景色を見ながら、魔道ペンを手にしたエルンはアンと協力して戦闘記録を紡いでいく。
「そこは『騎兵』やなく『騎兵群』のほうが正確やな。修正しよか」
「わかった……『バルガス将軍以下の騎兵群が敵先陣中央部に突入』と。これでよし」
「思ったより真面目な仕事ぶりなのね、エルンって」
リリアがさも感心したように呟く。
(でも一方では、この私の裏をかくことのできる策士でもあり、運命を切り開く強い意志と情熱も持ち合わせている。本当に不思議な男。私エルンのこと、もっともっと知りたいわ!)
ぞわぞわっ……。
(うっ、なんかゾワゾワする!……もうホント勘弁してくれよ……)
エルンは背中を這い上るリリアの気配を感じたが、あえてリリアには視線を向けず、『歪んだ空間』に刻一刻と映し出される戦場の変化を眺めつつ、ひたすら不快感に耐えた。
敵兵団を中央突破したバルガスたちは、反転して残敵を掃討しようとしたが、すでに敵兵団は散り散りになり、まとまった集団はほとんど残っていなかった。
「やけにあっけなくバラけましたな、将軍閣下」
「何かのワナか……? 敵の意図がわからぬが……」
と見る間に、正面前方に新たな敵兵力が出現しているのが認められた。
それは統制のとれた騎馬兵団。黒色を基調とした重装甲が鈍く光っている。
「ついに出たな。あれこそが敵残存の主力、重騎兵連隊らしい」
「いよいよ決戦ということですな……ラッパ手、兵力集中を伝達!」
プポワプポワポー! プポワプポワポー!
騎士集結の合図が響き渡る。
敵との距離はかなり離れているが、敵の前進速度はかなり鈍い。統制が取れているようで、実は内部はバラバラなのだろうか。
(敵がもたついている間に急速に距離を詰め、一気に叩くか、それとも……)
バルガスは一瞬迷った。その時。
「うおおおおお! 敵、重騎兵連隊への一番槍、このヴァレリウス・ノクスが承る!」
それまでバルガスや他三人の『蘇り仲間』と同じ列でゆっくり進んでいたノクスが、急に一人だけ馬の速度を上げると敵へ向かって突進し始めた。
いわゆる抜け駆けである。
ノクスは開戦前のブリーフィングで、想定戦場には落とし穴やぬかるみなどはない、と聞かされており、抜け駆けのチャンスを伺っていたのだ。
「おのれ、若造! このグリムウォールを差し置いて抜け駆けとは許せぬ! 我こそが重騎兵連隊への一番槍を仕る!」
ノクスに対抗心を燃やすグリムウォールがこの挑発に乗せられ、ノクスを追う形で突出していく。後続の騎士たちはこの二人に引っ張られる形となり、猛然と重騎兵連隊へ突進することになった。
「やめろ、突出するでない! 落ち着くのだ! この騎士団長バルガスの命であるぞ! 止まれ止まれ!!」
バルガスが大声で叫び、ラッパ手も『全体停止』の合図を吹奏するも、かなりの騎士がノクスとグリムウォールを追って突進してしまったのだった。
「これは……危ないわ。想定戦場に魔力が充満してる。これは罠よ! 騎士たちよ、早く元のところまで戻るのよ!!」
前線司令部の天幕では、リリアが絶叫していた。
いまや突出した騎士たちの居る場所の地面からは、毒々しい紫色の瘴気が滲み出ている。
それを見たアンが唸り声をあげる。
「あれは、たしか……『脆化の呪印』や。あれの効力域に入ると金属がみんなボロボロになるんや。騎士どもの鎧も剣も槍も、みんな粉々に砕け散りよるで!」




