scene68 排除
砦の門をくぐり俺たちは中に入る。
そこにはあるのは、焦げた臭いと。まだ燻る煙。
その中心には巨大な影が横たわっていた。
無数の焦げ跡を残した炎の魔人はすでに完全に沈黙していた。
兵士たちが歓声を上げている。
「うおお!やったぞ!」
「討伐成功だ!」
「これでまた一つ人が勝ったぞ」
その光景は人の力の証明であり、勇者の否定とも感じられた。
「…本当にこいつらが...倒したのか…」
「本格的に勇者不要になってきたわね…」
そういいながら静かに目を細めたルナの声はどこかあきらめに似た響きを感じた。
「しかし...一体どうやって...」
レディアナの問いに対して答えることが出来ない。
理解を超えた現象が目の前で起きていた。
その時、兵士たちのざわめきが左右に割れ道が出来た。
その中心を一人の女性が歩いてくる。
「…フレグラ」
フレグラは俺たちの前で立ち止まった。
「言ったはずよ...人の手で...と」
フレグラの背後で続く兵士たちの歓声がその言葉の裏付けとなり俺の中で決定的なものになっていく。
勇者では無く人、この世界の人間が魔族を打倒したという現実が重くのしかかってくる。
「人の時代の始まりだと言うのか…だとしたら...俺だって、人間だ」
「人間じゃない...勇者よ」
フレグラが俺の言葉を静かに遮った。
「ふん、相変わらず、いろいろ区別したがるな」
レディアナがフレグラを睨みつけるが、フレグラは微動だにしない。
「違うもを違うと言っているだけよ...あなたと私が違うように...ね」
その言葉にレディアナは笑った。
「そこだけは気が合うな」
「違うかどうかなんてどうでもいいわ」
ルナが二人のやり取りに割って入る。
「どうやって倒したのかしら...?簡単に倒せる相手じゃないはずよ」
フレグラは口元をわずかに上げ不敵に笑った。
「簡単よ...コツさえわかればね」
「コツ?」
「そうよ...魔族が勇者を”資格”で無効化するように…資格で無効化すればいいのよ」
「資格で...だと...?」
俺は思わず声を上げた。
「そうよ。しょせん魔族もこの世界のものではないもの...仕組みを考えれば制御可能な存在よ」
「…存在資格...」
ルナが低くつぶやいた。
「その通り...魔族が勇者を”存在資格”で否定するのと同じように...魔族も”存在資格”で否定してあげるのよ」
俺は言葉を失った。
資格と言う概念が、ここまでの力を持つなんて...。
資格のないものを否定する力。それが存在をも否定する。
「資格ってのは...魔族ですら否定するのかよ…」
「そうよ...いずれこの世界は...この世界で生まれたものだけの世界になるわ」
フレグラの宣言...それは魔族も俺たち勇者も異物はすべて排除される世界。
それが現実になり始めている。
排除されるという恐怖が暗い影を落とした。




