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無資格勇者  作者: 南蛇井


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scene66 陥落

歩き出した俺たちにログレスが呟くように話しかける。

「なぜ戦う?なぜ大人しくしない...」

その声は俺たちに問いかけるというよりは呆れてつぶやいたようだった。

「勇者だからだ」

俺は即答した。

一番単純でまっすぐな答え。

「そうね勇者として戦うそれ以外にないわね」

そう答えたルナの瞳は迷いがない。

「…勇者7号か...最弱と言われた勇者が...言うようになったな」

「最弱?」

その言葉に俺は驚きを隠すことが出来なかった。

ルナを見る。

「へえ、知ってるのね」

ルナは気にした風もなく静かに答えた。

「そうよ。確かに私は史上最弱の勇者としてこの世界に召喚されたわ。全ての能力が最低だった」

「ルナが...」

言葉が出ない。

「何もかもが足りない...剣も魔法も全くだったわ」

今のルナからは増槽もつかなかった。

「だから修行したわ。資格を取って力をつけたわ。ここまで来るのにどれほどの時間がかかったか...今更、魔王を倒しに行かないなんて選択肢はないわ」

ルグレスは静かに首を振る

「死に急ぐか...勇者とは難儀な生き物だな...少しは人の力を信じてみてはどうだ?」

「それはどういう意味かしら?」

ルナが軽く問い返す。

「そのままだ」

そういうとログレスは視線を外し遠くの山を見る。

ログレスはまだ...何か隠している...そう感じた。

それでもあえて聞くのを止めた。

聞いたところで変わらない。

やるべきことは一つだから...俺たちは振り返るのをやめた。

ログレスに背を向け歩き出した。


「結局、出たとこ勝負になったわね」

ルナが肩をすくめ呆れながら言う。

「まあ、問題ない。いつもの事だ」

俺はただ平然と答える。

「”いつも”なのはセイ、あなただけよ」

ルナは即座に返してきた。

そのやり取りを聞きながらレディアナが口をはさんできた。

「いつも通りは良いとして、次の目的は?」

振り向くことなくルナは答えた。

「炎の魔人よ」

その言葉に俺の心が震えた。

「なんだ炎対決か...燃えてきたな」

「何言ってるのよあなたの炎は無効化されるのよ」

ルナの冷静な指摘。

「あなたが燃えてこなくても向こうが一方的に燃やしてくれるわよ」

「そんなこと言うなよ。今まで通り何とかするさ」

「変な自信だけはあるのね」

レディアナが呆れたようにため息をついた。

そんな会話が次の瞬間途切れた。

俺たちは足を止めた。

砦の方角から、黒い煙が立ち上っている。

「...あれは何?」

ルナの鋭い声に俺は答える。

「炎の魔人だから砦も燃えてるんじゃないか?」

「そんなわけないでしょ」

即座に否定された。

「お前は相変わらずバカだな」

レディアナもあきれ顔だった。

そんなやり取りをしていても俺たちの表情は固かった。

砦に起きている異変...近づくにつれ状況が見えてくる。

砦の周辺には無数の人影が整然と動いていた。

旗が翻る。

目を凝らす。

あの旗は...。

「王国の旗...なんで王国の兵がこんなところに来ているんだ」

レディアナの目が細くなる。

砦へと攻め込んでいく軍勢。

明らかに王国の兵が炎の魔人を討伐しているように見える。

俺は苦笑した。

「なんだこれは...勇者不要論を実践しだしたのか?」

「そう見えるわね。砦陥落も時間の問題よ」

ルナが冷静に状況を見る。

「ついに人間が魔族を討伐する力を身に着けたという事か…」

「だとすれば俺たちは本当にこの世界に要らなくなるな」

目の前で陥落する砦を見ながら、その先にある不安、存在の意義。

不安定な存在がより不安定になっていくのを感じた。


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