12話 ~潜入捜査開始~
「っう、がはっ、ぁあ、ううっ。」
(妖力っ!?いきなりどうしてっ?)
気配を探ろうとした刹那に、私の意思とは無関係の妖力が身体中を巡る。慌てて制御しようとしたけど、手枷のせいで力を込めることが出来ない。
それにこの妖力って、私の体内で生成されたものじゃなくて、他人のじゃないか?身体に馴染まないような違和感が、身体を蝕んでいくみたいだ。
可笑しい。妖力って、親族ならまだしも他人にはそうそう譲渡出来るものじゃない筈なのに。そもそも、譲渡するっていう事実でさえ、この世界では非一般的のはず。
落ち着いて思考する暇も与えないほど、妖力が体内へとめどなく流れ込んでくる。
(これ以上流れてきたら妖力決壊を起こす!)
妖力が個人の器の飽和状態を越えると、妖力決壊という現象を起こさせる、と師匠が教えてくれた。例えるなら、風船がパンパンになった状態で空気を流し込むイメージ。
妖力決壊を起こした者は、最悪の場合、死ぬ。
そこまで考えたとき、朦朧としていた思考が、急激に冷まされたみたいにはっきりしていく。
(このままだと死ぬかもしれない……!)
妖力に呑み込まれそうになりつつも、私が出した答えは一か八かの賭けだった。
体内に循環する妖力を絶つ。
妖力を制御出来ない今、出来るのはただ一つ。妖力自体を絶つことだけ。
妖力を絶つだけなら、妖力は使わない。ただスイッチを切るように、体内を流れる妖力を消去するだけだから。
妖力を絶つと、意識が低迷したり、倒れたりすることもあるだろうけど。今は非常事態でこれしか道がないし、仕方無いでしょ。
それに、妖力を絶ったぐらいで倒れるような柔な体じゃないしね。何のために特訓してきたと思っているのか。
体内になだれ込む妖力を感じながら、その感覚を遮断する。
遮断するのに力を込めないようにして、バッサリと。
(よしっ、切れた!)
少し体が重くなったっていうか、怠く感じるけど、取り敢えず死ぬよりはいいでしょ。先に妖力の元を調べなきゃね。
(多分、さっきの妖力は盗賊団の人のだとは思うんだけどなぁ。何で私の体内に入ってきたのかが疑問なんだよな。)
通常ならあり得ない状況に、思考を巡らせる。
妖力自体が特殊だからなー。空気中に自分の妖力を撒くことも出来るけど、効率的ではないし、あまり利口とは言えないし。
何より妖力って受け渡しが困難な筈じゃないか。どうして、私のなかに?
そして、ふと気付いた。手枷の存在に。
(コレか。手枷を媒体にして術者の妖力が入ってきたってことかな。)
一つ疑問が解けたところで、もう一つ疑問が浮かんだ。
手枷を媒体にすることで、妖力の受け渡しをすることはまだ判る。けれど、なぜ尋常ではない量の妖力が、人質である私の身に流れてきたのかが分からないんだよなぁ~。
だってさ、いくら私が拘束されているとはいえ、普通力を与えるような真似するかな?しかも、与えすぎたら死の可能性も、少なくない確率であるのに。
考えられるとしたら……。術者の身に何かがあった?
うーん、気になるなー。さっき感じた気配的にも、ここが盗賊団のアジトの一部だっていうのは判るんだけど……。どうやって、接触しようか。
あ。手枷っていっても両手の自由を奪われてるだけだから、身体の自由はあるんだよね。それにあの鉄格子……私の身体だったら、抜けられるんじゃない?
(まだちょっと怠いけど……。ここまで来たらやるっきゃないよね!)
なるべく音を立てないようにして歩く。足音が立つのも憚れるような状況だしね。
裸足じゃないだけましだけど、なんか肌寒いなぁ~。気を失ってた時間も合わせると、今丁度夕暮れ時だよね。鳥肌がたってるよ。
ん?!ちょっと待って。よくよく考えてみるとこの肌寒さ異常なんだけど!
一応今日の私の格好は長袖のフリルシャツに、ロングのフレアスカート履いてるんだよ?少し温かめの素材で作ってあるから、保温性は高いはずなんだけど。
夕暮っていっても、この時期じゃあんまり寒くないはず。牢獄といえどもこんなに……?
日暮だからっていう寒さじゃない、別に何らかの原因があるような……。
(こっち?の方向から肌寒さがする。)
誘われるように一歩一歩近づいていくごとに、肌に刺すような気配を感じる。
肌寒さが強くなるのに比例して、声が聞こえてきた。
(声?それもなんだか呻いているような……?)
牢獄続きの道を歩き、数分たった頃。私は扉の前にたっていた。
この扉の奥に、寒さと呻き声の原因がある。そう考えると少し身震いしたくなったけど、あまり悠長なこともいってられないし、扉を音を立てないように開いた。
「えっ!?」
その扉の先には——




