13話 ~私の出来ること~
扉の先には数人の盗賊団員が倒れていた。
倒れてうつ伏せになっている体が、陽炎のように揺らめいている。
(体が……実体を保ってない?それって確か……。)
陽炎のように揺らぐ理由は、すぐにわかった。それはもう、シュピピーンっと、脳に電流が流れるみたいに。
だって、何度も見たことがあるから。
攻略キャラの一人に佐取という半人半妖のイケメンがいる。まごうことなきイケメンが。
そんな彼のイベントに、"能力解放"イベントなるものがあってだな。
普段は優しくって凄い良い先生なんだけど、妖力に呑み込まれて制御が利かなくなる、っていう有りがちなシチュエーションなんだけど、滅茶苦茶格好良いんだよねー。
あっ、おっとっと、話がずれてしまった。
能力に呑み込まれるのは半人半妖だけで、妖怪にも人間にもその現象は起きない。理由は幾つかあるんだけど、大きな理由としては、ハーフがために人間としても妖怪としても、力を受け継いでしまっていて純粋な力の制御が出来ないから、だったはず。
そんでもって、制御がつかなくなっているときの佐取先生の体が、黒く変色する。
まー、要するに、その黒く変色する、っていう現象が今彼らにも現れてるんだよね。
体が陽炎のように揺らめいている理由は、妖力の制御がつかなくなってるからなんけど、そもそも可視出来るレベルまで妖力が溢れてるって並大抵のことじゃない。
つまり、彼らにも"黒く変色する"ということが起きているってことは、彼らが半人半妖であるということでして。
うーむ、彼らに感じた裏はこの事か。
「うぁあ、あぐあぁ!っ!がああっ!」
なんて悲痛な叫び声!はやく応急措置でもしないと、手遅れになる!
えーっと?……どうすれば良いんだ?
ん~、佐取先生のイベントではどうしてたっけ……?
妖力同調して、暴走している方の妖力濃度を安定させれば良いんだ!
ん?でも、今手枷が邪魔で出来ないじゃんか。もぉーどうしてっ、事が上手く運ばないんだよ。
妖力同調するために、まず、この手枷にかかってる術式をどうにかしたいんだが。
壊す?いや、術式を無理矢理解除することは出来ないはずだし。
ん?無理矢理解除出来ない?あれ?ヒトメグで無理矢理解除するイベントがあったよな?
いや?でも、解除出来ないってのは常識だし……。
あっ、そうか、一般的な常識では無理だと思われてても、実際は違うってことか。
オッケー。いける。陽向のときみたいに、妖力の飽和状態まで持っていければ……。うん、試してみる価値はあるよね。
ふぅっと息を吐いて静かに集中力を高める。体の中に清らかな水を流れさせるイメージで。
お腹の辺りに力を込めると、妖力が循環し始めたのが分かった。
(さっきの叫び声をあげてた人から助けた方がいいよね?)
駆け寄ってみると、黒く変色した部分がかなり広がっていて、尾のようなものが形成されているのがみれた。
(尾をもつ妖怪とのハーフか……。獣の類いってところかな。)
なんてことを考えながら、妖力を込める。
飽和状態にしてるから、かなり拘束力は無くなったものの、刺すような痛みは変わらなかった。
痛いけど此処で止めるわけにはいかないし、それに目の前で苦しんでいるのを見るのも、私の中の前世の母性が許さないし、ね。
暫くして、二三分かけて同調させた妖力を安定させると、体が重くなるような感覚に見舞われた。
(一人治療してこの疲れか……、ちょっとやばいかな?)
ここまできたからには、もう今更止めるなんて選択肢は残っていないけど。
その後、他の四人も治療し終えた私は、壁にもたれ掛かっていた。
(たったの五人を治療してこの結果、かぁ。……もし、鍛えないままの凜がやっていたら……って考えると寒気がするね。)
少し荒くなった呼吸を落ち着かせていると、扉の向こう側から足音が聞こえてきた。
ガチャという開閉音と共に、見慣れた顔が入ってきた。
「凜!無事かい?」
「盗賊団員さんたち、無駄な抵抗をするならー……って、あれ?」
お兄様と陽向が焦ったようすから、困惑した表情になった。
「お兄様!陽向君!無事でしたの!?」
「それはこっちの台詞だよ。取り敢えず怪我はないようだけれど、この状況は……何なんだい?」
二人が疑問を浮かべて、私の顔を覗き込む。
「えっと、彼ら実は妖力の暴走のようなものを起こしてて、何かの病気みたいな感じにもなっていたのです。」
半人半妖のこととか、あまりこの世界の常識にそぐわないことは言わない方がいいよな?
「だから、ち、りょう、して……」
話を続けようとして、呂律が回らなくなり、足元がふらついた。
ドサッ。
「大丈夫?無理しないで凛ちゃん。」
倒れるかと思って目を瞑ったとき、僅かに浮遊感を感じて目を開くと、陽向が目の前に……いや、陽向が支えてくれていた。
「あ、ありがとう。少しだけ疲れちゃって。」
やばい。滅茶苦茶格好良い。なんで?相手はまだ七歳なのに!
うわー。イケメンって小さくてもイケメンなんだね。
そんなことをしていると、盗賊団員の方が起きはじめた。
「……っ!?ここはっ?」
体を急に起き上がらせると、叫び声をあげこちらをみた。
そして、自分の体を見つめ驚いたような顔をした。
「こりゃあ、兄ちゃんちがやってくれたのかい?」
「いいえ、凜が……あぁ、妹が処置してくれましてね。」
「あぁ……!すげぇな、……怖く、無かったのかい?」
私が小さいから驚いているのかな?まぁ、確かに見た目は七歳児だものね。
「ええ、苦しんでいるのを見ているのも気が悪いですもの。」
うん、西園寺家の娘としてもパーフェクトな答えでしょ。




