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第8話 豪華客船で釣り

「クックー」



超巨大な釣り竿は、遥か遠くにある漁港からでも薄っすら見えるほどだった。


腸巨大な釣り竿が出てから、海に垂らすところまでを漁港に居る人達は見ていた。



「なんだあれ……」

「船から……竿!?」

「何が起こってるんだ?」

「おいっ……この配信見てみろよ」



鳩と人の初コラボに、ダンジョン内で豪華客船に乗船し、豪華客船から巨大な釣り竿が出るという衝撃的な配信は、5万同接を記録していた。


だが鳩も、田中さんも、チャット欄を見る余裕なんて無かった。



「ハトるんちゃん!?」



田中さんは、波で激しく揺れるデッキ上で、ただただ柵に捕まる事しかできず、不憫な田中さんを心配する声がチャット欄でも見られていた。




―――チャット欄―――――――――――――――


『大胆過ぎて草』


『地獄絵図やんw』


『田中さん可哀想』


『可哀想つっても今回は田中さんからコラボの依頼したからな……まぁ普通に可哀想だけど』


『田中さん……強いのに』


『鳥が魚を獲って配信を撮るw』


『これ何気に豪華客船型の兵器やろ』


『俺だったら絶対に田中さんの立場になりたく無いわ。生きてても翌日の疲労感やばそう』


―――――――――――――――――――――――




その時、豪華客船がひっくり返りそうになるほど海面が激しく波打った。


田中さんが柵越しに海面を見ると、とてつもない程大きな魚影が動いていた。



「ハトるんちゃん!? 何か掛かってるんだけど……これ、地球釣ってない……大丈夫!?」




―――チャット欄―――――――――――――――


『!?』


『えっぐ』


『船よりデカくね?』


『いや、でかすぎやろ』


『画面越しにも伝わるぞ』


『何が居るんだ?』


『こんな状況ならチャット欄を見る暇ないわな』


『なんか鳩語に戻ってね?』


―――――――――――――――――――――――




魚影は暴れていたが、そんなのお構いなしに豪華客船から出る竿は、ぶっとい糸を巻いていく。


田中さんと鳩を撮っている浮遊する配信カメラは、奇跡的に映す事が出来ていた。



「クークー」

「うわぁぁぁぁぁぁぁ。船が……船が倒れる」




―――チャット欄―――――――――――――――


『一体何が釣れるんだ』


『ほんとに地球釣ってるとかねぇよな?』


『これ大丈夫か? 本気で心配なんやが……』


『まさかクラーケンとか釣れねぇよな?』


『クラーケンって釣れんのか?』


『クラーケンって半年前にアメリカが総力を挙げて討伐してた化け物じゃねぇか』


『でもこれってクラーケンの魚影か?』


―――――――――――――――――――――――




鳩は、船が倒れないように両サイドを大量の羽根で支えて強行突破した。


田中さんは、カーボンロッドや網を落ちないように、必死の形相で守っていた為、配信どころでは無かった。



「一気に引くよ!」

『ガッガッガッガッガッ』


「ハトるんちゃん止めてぇぇぇぇぇ」

『ザッバァァァァァァァァァン』



半泣きの状態の田中さんなんてお構い無しに、鳩は船首に止まったままスキルによる羽根を動かして巨大な魚影を引き上げた。




―――チャット欄―――――――――――――――


『ギャァァァァァァァァ』


『嘘だろ!?』


『ドラゴンだと』


『いや違う……』


『こいつはリヴァイアサンだ』


『終わっただろ……これ』


―――――――――――――――――――――――




「ハトるんちゃん……このドラゴンはヤバいよって……どこ行くの? ハトるんちゃん!?」



鳩は船首から華麗に羽ばたくと、リヴァイアサンが見えるところまで飛んでいった。


田中さんは冷や汗が止まらず、跳ねてきた海水と混ざってびしょ濡れになっていた。



「何用だ……小さき者よ」




―――チャット欄―――――――――――――――


『あ、これ死んだ』


『鳩は何してんだ?』


『喰われるって』


『鳩が食われたらこの船はどうなるんだよ』


『リヴァイアサンつったら、クラーケンよりもヤバいレベル2のガチの化け物じゃねぇか』


『田中さんの顔が……』


―――――――――――――――――――――――




「初めましてリヴァイアサンさん! 私はハトるんって言うの。今から私と配信をしてみない?」


「…………フッ」


「色々とお酒を揃えたんだけど……どうかな? 私は飲めないんだけど……お酒は好きかな?」



リヴァイアサンは鼻で笑った。


目の前の人語を喋る鳩という珍しい生物に、誇り高きドラゴンである自分が釣り上げられた屈辱。


だが、常に暇をしてたリヴァイアサンからすれば、屈辱なんて興味からは程遠いものだった。



「面白い。その矮小な身で我と酒を飲むと言うのか……良いだろう。では酒を持ってくるが良い」




―――チャット欄―――――――――――――――


『草』


『意外と乗り良くね?』


『まさか、この鳩って最初からこれが目的だったとかじゃねぇよな……あり得るか……』


『モモタロウスと同じ流れじゃねぇか』


『見た事ねぇよ……ドラゴンと宴配信なんて』


『なんでドラゴンも間に受けるんだよw』


『このチャンネルってのほほんとしてんな』


『内容はエグいのにな』


『田中さんの配信に通じるものがあるな』


『いやねぇだろ』


―――――――――――――――――――――――




鳩は田中さんを誘って、人間やドラゴンでも分かる程の満面の笑みで船内に入って行った。

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