第7話 ダンジョンと豪華客船
ダンジョン内に突然現れた豪華客船は、遠くに居た探索者にも見えるほどだった。
漁港には、豪華客船の大きさから人がどんどん集まっていき、ガヤガヤしていた。
「あれはなんだ?」
「ダンジョンで船?」
「いや、デカすぎだろ」
「ってか、形が鳩じゃね?」
「まさか、今話題になってるあの鳩か?」
「あの鳩ってこんな事すんのか!?」
漁港が騒がしくなっている頃、豪華客船の船内では田中さんと鳩が部屋を回っていた。
「これは……マジモンの豪華客船なのか……客室も……内装も……何もかもが揃ってるぞ!?」
―――チャット欄―――――――――――――――
『やばすぎ』
『すげぇ』
『俺も乗りてぇな〜』
『田中さん未だに口開けたままやんw』
『どうやってダンジョン内に運んだんだよw』
『この豪華客船って意外とデカくね?』
『配信カメラだから正確には分からないんだけど、300メートルはありそうだそ?』
『世界レベルじゃねぇか』
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「田中さん……船内を回るのはこれくらいにして、もうデッキに上がらない? 私、早く釣りがしたくて体がウズウズしてるの……」
「あ……あぁ。じゃあ……釣りするか」
―――チャット欄―――――――――――――――
『この鳩……なんで、ダンジョン内に豪華客船があって当然みたいな顔をしてるんだよw』
『多分この鳩からすれば当たり前なんよな』
『すげぇな』
『人間じゃ理解できない領域やな』
『田中さんって何気に豪華客船の乗船は初だろ』
『良いなぁ』
『鳩の体がうずうずってなんか怖いな』
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田中さんと、田中さんの頭に乗った鳩がデッキに上がると、とてもダンジョンとは思えない壮観な景色だった。
「これが……豪華客船か……」
田中さんが豪華客船からの見える景色を眺めていたが、この鳩がそれを遮った。
「田中さん……準備は良い? 出航だー!」
『ボーーーー……ボーーーー……ボーーーー』
「まだ何も言ってないんだけど……」
―――チャット欄―――――――――――――――
『汽笛の音圧すご』
『ただ今3万同接です!』
『まぁ、内容が内容だからな……』
『急上昇ランキングに載ってるぞ!』
『いや、誰が汽笛を鳴らしてるんだよw』
『そもそも、誰が操縦してるんだ?』
『どこかにぶつからねぇよな?』
『沈没とかするんじゃね?』
『流石に無いやろって思ったけど、この船を持ってきたのは人間じゃなくて鳩だからなぁ……』
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「ハトるんちゃん? この船って誰が操縦してるの? チャット欄が凄く不穏なんだけど?」
「あぁそれね。この船は、私の羽根が操縦してるんだよ。汽笛を鳴らしたのも、運航しているのも、何もかも全て私の羽根だよ!」
「え?」
―――チャット欄―――――――――――――――
『田中さんの顔草』
『こっわ』
『羽根が船を操縦とか不安しかないな』
『せめて、AI操作にしろよ……』
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「ハトるんちゃん……大丈夫なの? それ……」
「全然大丈夫だよ!」
それから田中さんは不安になり、何度も何度もデッキの上から海面を眺めていた。
田中さんの頭に乗っている鳩は、完全に頭の上で休息していた。
だから田中さんは、不安になったのだ。
◆◆◆
田中さんが挙動不審になってから20分ほどが経ち、船は沖に着いた。
「今から釣りをするんだけど……田中さんがカーボンロッドで魚を釣ってる姿を見たいな……」
「あぁ……。じゃあ、僕からキャストするよ」
―――チャット欄―――――――――――――――
『なんか田中さんの顔老けてね?』
『いや、顔が死んでるんだろ』
『そりゃぁ誰でもこうなるわ』
『この20分間ずっと挙動不審だったからな』
『草』
『田中さんのこんな顔初めて見たわ』
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『ポチャンッ……ガッ』
「おっ……きたきた」
田中さんが竿を仕掛けると、あっという間に魚が掛かり、直ぐにリールを巻いて釣り上げた。
「魔鯛かな。結構良いサイズ」
―――チャット欄―――――――――――――――
『これだよこれ』
『田中チャンネル特有のまったり感って良いな』
『これはまったり感……なのか?』
『今回のコラボは感情のジェットコースターや』
『やっぱり、田中さんは癒されるわ』
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田中さんがどんどん釣っていく様を見て、頃合いを感じた鳩は高々と声を上げた。
「次は私の番だね」
鳩は田中さんの頭から離れ、船首に止まった。
「今こそ、この豪華客船の力を見せる時」
『がガガガがガガガッ』
「な、なんだ?」
混乱する田中さんの直ぐ横にあるデッキの床が開き、中からは超巨大な釣り竿が顔を見せた。
「クルッポー……今日の為に用意したんだから」
―――チャット欄―――――――――――――――
『えぇぇぇぇぇぇぇ!?』
『豪華客船が……1本の釣竿になった?』
『ハト型だったのは、この釣竿を隠す為かよ』
『豪華客船と鳩は似てる……のか?』
『↑洗脳済みで草』
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「エサはダンジョン産の超大王エビ……。これなら、超大物が釣れる……良し! キャストだ!」
『バッシャァァァァァァァン』
顔面蒼白の田中さんのすぐ真横で、全長200メートルもある超巨大な釣竿での釣りが始まった。




