第6話 初コラボはダンジョンで豪華な釣り
鳩の初配信から3日が経ち、今日は1月18日。
今や世界で最も勢いのある動画配信サービス。
『リリアル』
様々なジャンルの動画や配信があり、常にリアルをお届けしていることから、ダンジョン関連も絶大な人気を誇るサイトだ。
そのサイトでとある予約が立てられた。
タイトル
【超豪華コラボ】鳩である私が同業者を海鮮系ダンジョンでおもてなしします!
サムネは、鳩とコラボ相手が寿司職人の格好をして、ダンジョン内の広大な海をサーフィンしてる画像だった。
裏での企画調整や企画準備もあり、ここ3日間は一切動画も配信もせず、SNSの告知だけだった。
そんな鳩は、若干話題が落ち着いていた為、今回の告知は人々に再び衝撃を与えるのだった。
―――チャット欄―――――――――――――――
『マジで?』
『ほんとに田中さんとコラボ?』
『田中さんと鳩のコラボなんて想像付かねぇよ』
『今日はどんなまったり配信なんだ?』
『いや、無理やろ』
『あと10秒で始まるぞ!』
―――――――――――――――――――――――
鳩のコラボ先は、チャンネル登録者数80万人の有名ダンジョン配信者『田中』。
彼はダンジョン配信者の中では珍しい、ダンジョンキャンパーと呼ばれる、ダンジョン内でキャンプ活動をしている人だ。
通常なら、命の危険があるダンジョンでキャンプをするなんて、いつ死んでもおかしくない行為だが、彼らは持ち前の知識と経験、力でそれを可能にしている。
―――チャット欄―――――――――――――――
『同接8000か』
『まぁ、日曜日の正午だからな』
『田中さん。昨日のツイートで、90万のカーボンロッドを買ったってツイートしてたからな』
『ノリノリやんw』
『ってか、この鳩もチャンネル登録者数20万か』
『はっや』
『たった1つのアーカイブで20万か……』
『まぁ、鳩だから人基準で話したら駄目やぞ』
『3秒』
『2』
『く、くる』
『あと1!』
『来るぞ』
―――――――――――――――――――――――
配信が始まったのと同時に画面に映ったのは、ダンジョン内にあるの整備された漁港だった。
「みなさ〜ん。今日は北海道の釧路市にある海鮮ダンジョンに来ていま〜す! そして、ここにいるのが今回私と釣りをする田中さんで〜す!」
「どうも……田中です。いやね、僕からコラボの打診をしてなんですが、こんな直ぐコラボ配信ができるとは思っていませんでしたよ……」
「まぁ、田中さんとのコラボ配信は、めちゃくちゃ面白そうだったからね!」
―――チャット欄―――――――――――――――
『草』
『田中さんって結構人付き合い良いよな』
『この場合は鳩付き合いだろ』
『まぁ、鳩とコラボ配信って普通は無理よな』
『ここのダンジョンの魚ってガチ美味いんよな』
『でも、ここって一層しか無いからダンジョン内は広いけど入り口で詰まるんよなw』
『一層しか無いダンジョンあるあるやね』
『あれ? なんか画面前に羽根が浮いてね?』
―――――――――――――――――――――――
「クークク……ごめん。今回は一応、私の羽根に文字を書いた台本を事前に作ってるから……」
「僕からは、見たことない文字がえげつない量で書いてある羽根が結構な数見えるよ」
―――チャット欄―――――――――――――――
『草』
『危機感ねぇな』
『まぁ、ここのダンジョンって結構オープンだからダンジョン配信者もみんな緩いんよな』
―――――――――――――――――――――――
この海鮮ダンジョンは日本が世界に誇る、美味で多種多様な魚が集まっている貴重なダンジョン。
当然人気も凄く、ダンジョンでは珍しく入場料を取られるが、それでも入る人が多い。
あまりの人気の多さから、鳩と田中さんはバレないように、普段から人が居ない、不人気の漁港に来ていた。
「早速一緒に釣りをして行くけど、田中さんも準備してたよね? お互い紹介していこうよ!」
「良いね! 僕からで良い?」
「うん!」
すると、田中さんは持っていた大きなトランクから荷物を取り出した。
そこには、カーボンロッドだけでなく、大量の釣餌、特注の20メートル先まで届く網、各種調理器具と調味料があった。
「今回の僕の相棒は、昨日買った90万円のカーボンロッド。これ、モンスターの素材で加工してるから結構釣りやすいんだよ」
―――チャット欄―――――――――――――――
『良いね』
『この釣竿って、釣り人達の憧れなんよな』
『結構釣れるどころじゃなくて、竿先から出す法と術で魚をおびき寄せるから、釣り餌と合わせたら相乗効果で入れ食いが止まらなくなるんよな』
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「そしてこれが、釣餌のエビと、よく使ってる特注の網。あとは、今日釣れた時に新鮮なまま食べたいから、調理器具と調味料の一式だよ」
「田中さんってマメだね。網を見れば分かる。結構手入れされて、よく使ってる割に綺麗だから」
―――チャット欄―――――――――――――――
『よく気づいたな』
『田中さんはガチでA型発揮してるんよな』
『田中さんってどこ行ってもこれだから良い印象しか無いんよな……。たまに不憫だけど……』
―――――――――――――――――――――――
「じゃあ次はハトるんちゃんの番だよ。見た感じ何も持ってないけど……羽根で持ってるとか?」
「いんや?」
「じゃあ、どこかに置いてきてるとか?」
「違うよ」
「な、なら……空間収納スキルとか?」
「それも違うね」
―――チャット欄―――――――――――――――
『あれ?』
『これって……』
『道具忘れてない?』
『あり得るか?』
『流石に無い……だろ』
『いや……流石にフリだろフリ』
『まぁ、台本あるらしいからな』
『でも、田中さんの焦り具合はガチっぽい』
―――――――――――――――――――――――
「僕のカーボンロッド……交代交代でやる?」
田中さんが配信よりも鳩の事を気にかけると、鳩は何故か高く飛び上がった。
「クルッポー」
「え? ハトるんちゃんどうしたの?」
鳩の声と共に突然ダンジョン内の海面がブクブクと泡立ち、どんどん大きくなっていった。
「な……なんだ?」
「言ってなかったね。私の荷物は全部海の中にあるよ。そしてこれが、今回の私の荷物…………」
―――チャット欄―――――――――――――――
『!?』
『なんだ?』
『何が起こってるんだ?』
『海中から出る泡の量がエグいぞ』
『噴火か?』
『ダンジョン内で噴火はないだろ』
―――――――――――――――――――――――
チャット欄はどんどん加速していき、画面の前の視聴者も瞬きを忘れた。
『バッシャァァァァァァァァァァァァァン』
「これが私の荷物。クルーズバード試作だよ」
「はぇ?」
海中から出てきたのは、直径350メートルは超える、鳩の形をした豪華客船。
あまりのでかさと、目の前の鳩の大胆さに田中さんは腰を抜かした。
―――チャット欄―――――――――――――――
『!?』
『!?』
『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ』
『やっべぇぇぇぇぇぇぇぇ』
『エグいって』
『冗談じゃねぇぞ?』
『ダンジョン内で船!?』
『ダンジョン先進国アメリカでも、漁港を作るだけで小型の船すら持ってこられなかったのに?』
『田中さんの顔えっぐw』
―――――――――――――――――――――――
「じゃあ早速、釣りしましょ」
鳩は腰を抜かしている田中さんの頭に止まり、カメラ目線になって右羽を『スッ』と前に出し、田中さんを急かした。
田中さんは、閉じることができない口を開けたまま豪華客船に乗船するのだった。




