第21話 闇市のゲーム『四陣』
「最初はグー……じゃんけんポンッ」
相手の黒服はグーを出して、田中さんは鳩と話し合った末に決めたパーを出した。
田中さんと鳩は先行を選んだ。
「ハトるんちゃん……これって多分、大きいカードは後に残しておいた方がいいよね?(ボソッ)」
「……私はそうは思わない(ボソッ)」
「どういうこと?」
「確かに12とか13は、数字が大きくてめちゃくちゃ強いけど、このゲームは真ん中の数字の5から9をどうやって使うかが大事だと思うから」
「1から4は弱くて、10から13は強い。だからその間の5から9で相手と差をつけるってこと?」
「……そうだよ」
―――チャット欄―――――――――――――――
『ピンマイクありがてぇ』
『……確かにな』
『言われてみれば……』
『よう気づいたな』
『確かに……。小さい数の1とか4は相手に隙を与える事になるから自分を追い詰めて、大きい数の10から12は自分ごと相手を追い詰める。13は切り札。だからその間の、5から9でいかに自分を優位にして、どう相手を追い詰めるってことか」
『この鳩……やりよる』
『初見じゃねぇやろ』
『既プレイかな?』
『だとしてもよ。言われるまで気付かんかった』
『この鳩が分かるってことは、相手の黒服サングラスニキも分かってるってことやな』
『どうなるんや?』
『つうかなんで1プレイに全額投資するんだよ』
『確かにギャンブラー過ぎるだろ』
『これは後に引けないな』
―――――――――――――――――――――――
「じゃあ、僕はダイヤの10を……」
田中さんの最初の番。
ダイヤの10を出して様子を見た。
すると相手の黒服は、スペードの12を出した。
場に緊張感が走る。
だが意外にもゲームは順調に進んで行った。
田中さんは13を出さずに場を回収してハートの4を出し、相手の男性はスペードの5を出す。
相手の男性も、田中さんと鳩も、最後の最後まで最強のキングを温存した。
◆◆◆
ゲーム終盤。
場にはスペードの1が置いてある。
―――チャット欄―――――――――――――――
『おいおいこれって……』
『田中さんの手札にあるのは2枚のキングと、ダイヤの4とハートの7……相手はなんだ?』
『配信を巻き戻しして見たけど、相手もキング2枚とスペードの5とクラブの8やで』
『↑おいっ、それ言って大丈夫なのかよ』
『不正になるな』
『このゲームで1番重要と思われる、記憶力による戦いが根っ子から崩れるぞ』
『鳩のモデレータっていたっけ?』
『居ないからヤバいんだぞ』
『あれ? やばい。今気付いた。田中さん……チャット欄の管理画面切ってやがるな』
『ほんまに?』
『マジや』
『良く見ろみんな! 田中さんが腕に着けてるスマホウォッチの電源が切ってあるぞ!』
『いつからだ?』
『田中さんそういうのはきちんとしてるからな』
『いや、鳩もやぞ』
『!?』
『ガチや』
『鳩の翼に着けてあるスマホウォッチの電源も切れてるな……』
『もう俺達の声なんて聞こえてないな』
『そりゃあそうやろ。ガチの戦いやぞ』
『本気の2人(1匹)とニキ……どっちが勝つんや』
―――――――――――――――――――――――
田中さんと鳩は同じ事を考えていた。
相手と自分達の手札の枚数は同じ。
相手が既に取った場のカードは、自分達が取った場のカードよりも1枚少ない。
相手は21枚。
自分達は22枚。
そして相手が、最強のキング2枚を手元に残してる事が分かっている。
キングを先に出したほうが勝ち。
田中さんと鳩が出した結論。
「では……キングを」
田中さんがダイヤの13を出すと、案の定相手は場のカードを取ってスペードの13を出した。
相手+2枚。
田中さんは場のカードを取ってダイヤの4を出すと、相手は最後のクラブの13を出した。
田中さん+1枚。
田中さんは場のカードを取ってハートの7を出すと相手はクラブの8を出した。
田中さん+2枚。
田中さんは最後のハートの13を出し、相手が場のカードと残った手札のカードを隣に置いてゲームは終わった。
相手+4枚。
【集計結果】
相手27。
田中さん鳩ペア25。
勝負は田中さんペアの勝ちとなった。
「ハトるんちゃん……」
「田中さん……」
田中さんは鳩を掲げた。
「よっしゃぁぁぁぁぁ」
「やったぁぁぁぁぁぁ」
―――チャット欄―――――――――――――――
『おめでとう!』
『すげぇぇぇぇ』
『熱い勝負だったわ』
『なんか黒服は負けたのに清々しい顔してるな』
『ギリギリだった!』
『ナイス!』
『面白かったぁぁぁぁ』
『田中さんと鳩が喜んでる姿可愛い』
―――――――――――――――――――――――
黒服達は、奥から何か持ってきた。
綺麗な装飾がされてある箱。
「これが今回の景品だ。君達が賭けてくれた金額に応じて……かなり豪華にしておいたぞ」
「田中さん……なんだろう?」
「なんだろうねハトるんちゃん」
鳩と田中さんが満を持して箱を開けると、中には可愛い指輪が2つがあった。
「これは?」
「それは1日10分間だけ、指輪を着けている生物になれるという優れものだ。君達はとても仲が良く見えたから……この指輪も心から喜ぶだろう」
「……ってことは、僕は鳩になれるのか?」
「……私、田中さんと同じ人間になれるの?」
「あぁ……。1日10分間だけだがな。喜んでくれたら嬉しいのだが……ってもう聞こえてないか」
田中さんと鳩は、お互いに何度もハイタッチしながら喜びまくった。
―――チャット欄―――――――――――――――
『可愛い』
『この鳩が人間になれるのか?』
『田中さんが鳩に?』
『これってかなりやばくね?』
『10分だけなら何にでもなれるのか』
『ドラゴンにもなれんのか?』
『大変な事になるぞ』
『国が荒れる』
『まぁ、現代の研究がいくらでも進むからな』
『お前らは何くだらないこと言ってんだ。この2人は喜んでる。それだけで良いじゃないか』
『↑人じゃないけどな』
―――――――――――――――――――――――
「お〜い……そっちは終わった〜?」
「って、鳩ちゃんと田中さんはどうしたの?」
「あぁ……至高のひとときだった」
西郷の猿とミルクココアとDサイエンサーが田中さんと鳩ペアに合流してお互いに自慢し合った。
「先輩……本当に良かったのですか?」
「ん? なんだ?」
「あの景品……今月の目玉ですよ?」
「問題無い」
「それに……わざと負けてましたよね?」
「……君は何を言っている。あの者たちが喜んでいる姿を見れた。それだけで良いじゃないか」
「先輩……ほんと……物好きですね」
黒服の会話を田中さんと鳩は知らなかった。
互いに自慢し合う鳩一行はこの場を後にした。
黒服達は手を振りながら見送った。
闇市でのゲームは、最高の思い出となった。




