第19話 異世界闇市と怪しくない取引
「ここが……退魔闇市か……。どっかに俺の筋力を強くするやべぇもの……売ってねぇかな」
「ゲームで隠し通路を通って行ける場所みたい」
「薄暗いが……湿気はあまり無いな……。周りに風を送っている魔道具のような物がある……。これがこの辺りの換気扇となっているのか?」
退魔闇市は、魔族が経営している。
この異世界における魔族とは、遥か昔に人類と戦っていた宿敵だった。
だが今では友好な関係を築いている。
なぜ退魔闇市なのか。
それは、上級魔族すらも退いてしまうほどの物が毎日のように取引されているからだ。
市場は太陽の光が当たらず、薄暗い。
そして、魔道具による風で少し涼しい。
―――チャット欄―――――――――――――――
『こっわ』
『ヤバすぎやろ』
『こんなとこを見れる機会なんて今後ないだろ」
『歩いてる人全員怖すぎるだろ』
『店主も怖いぞ』
『反社よりも怖いかも。反社見たことないけど』
『何されるか分からねぇぞ』
『これって合法なのか?』
『合法って信じようよ……』
『売ってるものが気になるな……』
―――――――――――――――――――――――
鳩一行は闇市に売ってあるものを見ていった。
そこには、初めて見るもの。
触れるだけで鳥肌が立つもの。
見ただけでヤバいと分かるものと、色々あった。
「おいっ……見ろよこれ。銀色でメタリックなダンベルがあるぞ! 店主が言うには頭の中で想像した形に変形するらしい。頼むっ。これを買ってくれねぇか? 後で日本円の代金で返すからさ」
「見てよこれ! ニトロチェアだって! 最低時速40キロ。最高時速320キロ出る椅子らしい。今度道路で走らせてみたいな……。お願い! 日本に帰った時にお金を払うから今買えないかな?」
「何だこれは!? 魔導ダイヤだと? 商品詳細に魔法を込められるって書いてある。一体どんな原理だ? 知りたい……調べたい……。帰ったらいくらでも払うからこれを買ってくれないか?」
―――チャット欄―――――――――――――――
『異世界やべぇ』
『変形するダンベル!?』
『用途は何だよw』
『まさか、これのおかげで店主がゴツいのか?』
『成果エグすぎて草』
『そりゃあ猿も欲しくなるわな』
『ニトロチェアとかヤバすぎ』
『語感きっしょ』
『こんなので道路を走るなよ』
『ミルクココアの事だから多分滑走路だぞ』
『まぁ普通に考えて滑走路以外無理か……』
『滑走路で走るニトロを付けた椅子なんてパワーワード聞いたことねぇよ……それも異世界産で」
『怖すぎ』
『魔導ダイヤ!?』
『魔法を込められるのは本気でヤバい』
『ガチの国宝だろ』
『これ、込められる魔法の数によっては各国が本気で取りに来るレベルだぞ。軍事的にも抑止力的にもこの石の影響が本気でヤバすぎる……』
『法生物と同じ原理なのかな?』
『だとしても人類を進歩させるのは変わりない』
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チャット欄はこの日一番盛り上がった。
心配する声。
期待する声。
羨望する声。
視聴者は、退魔闇市と異世界の規格外さに、チャットを打つ手を止めなかった。
「じゃあ、3人のお土産はこれだね!」
鳩はあっさりお金を払って買った。
西郷の猿はひたすらメタリックなダンベルを上げ下げし、ミルクココアは買ったニトロな椅子に抱きつき、Dサイエンサーは魔導ダイヤを日本から持ってきた重厚なトランクに閉まった。
―――チャット欄―――――――――――――――
『この鳩……買いやがった……』
『これはしばらく荒れるな』
『なんか政府が緊急議会開いてて草』
『マジや』
『自民党がなんか開いてるな』
『絶対これの影響だろ』
『まぁ確かに緊急だからな』
『今来ました。質問ですが、なんでこの3人は異世界人と話せて、異世界語を読めてるの?』
『なんかチャット欄に疑問持ってるやつが結構居るから俺が説明するけど、配信の1番最初に異世界マイクと異世界コンタクトを付けてたやで』
『最初に付けた異世界マイクと異世界コンタクトのおかげで4人とも話せて読めるんだよな……』
『事前準備完璧かよ』
『異世界様々で草』
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「田中さんはなんか欲しいものない?」
鳩は、田中さんだけ欲しいものを言わなかったので、心配して声をかけた。
田中さんは、未だに頭の上に止まっている鳩を撫でながら答えた。
「僕はみんなで楽しめるものがいいかな。僕が思うお土産はそういうものだからね……」
―――チャット欄―――――――――――――――
『田中さん優しい』
『これが田中さんか……』
『まぁ、他3人は某脳にまみれてたけどなw』
『田中さんが人付き合いを大事にするの好き』
『なかなか出来るもんじゃねぇよ』
『育ちが良いのかな?』
『異世界に来てまでブレないの凄い』
『俺だったら欲しいもん買ってもらうよ』
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田中さんが何を買うか悩んでいると、奥から黒い服を着た男性がやって来た。
黒服の男性は、何故か両手にトランプカードを持っていた。
「観光ですか?」
「あっ……はい。そうですが……」
「もし皆さんで闇市の観光をお楽しみになりたいのなら、ちょうどあちらでやっている1等の景品を狙うトランプカードゲームをやりませんか?」
―――チャット欄―――――――――――――――
『は?』
『いや、行かないよな?』
『流石に断るだろ……』
『未成年は見ていいのか?』
『賭け事じゃないから大丈夫……なのか?』
『怪しすぎる』
『異世界でもこういうのってあるんだな』
『まぁ、闇市だからな』
『何かを失いそうで怖い……』
『断る……よな?』
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怪しい男の誘い。
田中さんは断ろうとしたが……
「おもしれぇ……やろうぜ」
「良いじゃん! ゲームだけは負けないよ!」
「異世界にもトランプがあるのか……面白い」
「クックー……行こうよ! 田中さん」
田中さん以外は、何故かノリノリだった。
皆が楽しそうにしているのを見た田中さんは、クスッと笑いながら鳩達と共にトランプを持った男性に付いていくのだった。




