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第18話 黄金店主の魔道具店

鳩一行は露店がたくさんある市場から離れて、さっきいた場所から更に奥にある、豪勢な建物が何軒も建てられている所にいた。


身なりの良い男性が、ちょうど今、執事のような男性と一緒に馬車に乗っている光景。


綺麗なドレスを着た女性達が、日傘を差しながら談笑している光景。


ここは、日本で言うところの上級国民達が家を建てて集まっている場所なのだ。



「すっげ〜……。なんか、さっきよりも高級そうな気配がそこら中に舞っているな……」


「RPGゲームで見たことある光景だ!」


「あの建物に使われている物質は大理石か? いや……多分違うな。調べたい……近くで見たい」




―――チャット欄―――――――――――――――


『あの人は貴族かな』


『貴族のドレスなんて初めて見たぞ』


『おいっ、あの人縦ロールだぞ!』


『ほんとに縦ロールとか実在するんだ……』


『この光景を見てるだけでもおもろいな』


『舞っているってなんだよw』


『普通にこの配信は教科書で載せるべき』


『教科書で出てきても全然違和感無いわw』


『来年あたりの歴史の教科書に出るかな?』


―――――――――――――――――――――――




田中さんの頭の上に乗りながらチャット欄を確認している鳩は、田中さんに目的地の道を教えながら進んでいた。



「ハトるんちゃん……次はどっち?」

「右だよ」


「次は?」

「そこを真っすぐだよ」



鳩の指示のもと、一行が5分ほど歩くと目的の魔道具店に着いた。



「……すげぇ」

「わぁ〜……RPGのお城?みたい」

「城の図書館みたいなものか……楽しみだな」



3人が魔道具店に感心していると、鳩は『この城の後ろを見てみて』とさりげなく言った。


一体何があるんだ……と思った3人が、せ〜ので裏を見ると、魔道具店の作りに唖然とした。



「……これ、ハリボテか?」


「これって……よく見たらホログラムになってるよ。ゲームみたいで面白い! 私も欲しいな!」


「触ることができないな。空気中に映像を投影してるのか? もしこれを日本で応用ができたらエンタメにも軍事的にもかなりの大進歩だぞ……」




―――チャット欄―――――――――――――――


『ハリボテ草』


『wwwwww』


『どこに技術を使ってるんだよ』


『これ、良く見たら32ビットやんw』


『ガチのホログラムだな』


『いや、ホログラムよりも何倍も凄いだろ』


『まぁ、何もない空中に映像を映してるからな』


―――――――――――――――――――――――




「ハトるんちゃん? この建物が偽物なら、本当の魔道具店はどこにあるの? この辺りにはあそこのボロボロな家屋しか見当たらないんだけど」



田中さんの目の先には物置小屋のようにボロボロで、家とは呼べない建物があった。


腕を組んだドヤ顔の爺さんが写り、破れてボロボロな張り紙が貼ってあり、哀愁を漂わせている。



「え? 目的の魔道具店はあの家だよ? ああ見えてもこの国の中でもトップクラスに凄いところなんだから! まぁ一見様お断りなんだけどね」



さっきまではしゃいでいた3人はドン引きし、田中さんは冷や汗を垂らした。




―――チャット欄―――――――――――――――


『マジかよ……』


『あれはダメだろ……』


『さっきの露店の方がマシに見えるんやが?』


『ミルクココアとかDさんとか田中さんならまだしも、あのバカ猿すらもドン引きてるやんw』


『行きたくねぇ』


『なんかの病気もらいそう』


―――――――――――――――――――――――




この異世界旅は鳩の言葉には逆らえない。

田中さんも3人も、人間の全員が分かっていた。


この異世界旅企画の調整、準備、予定、全てをここにいる鳩がしたのだから。


この鳩以外はできないのだから仕方のない事だとはいえ、4人は意を決して店の中に入った。



「なんだこれ?」

「あれ? 思ってたよりも広くて……綺麗?」

「どうなっているんだ?」



魔道具店は、日本の旅館に図書館を足して、2で割ったような内装をしていた。


だが店の中に商品は1つも置かれていない。




―――チャット欄―――――――――――――――


『良かったわ』


『さっきは病気厨が湧いてたからな』


『この内装なら、さっきまで病気になるとか散々言ってた病気厨も全員黙るやろ』


『いや、むしろめちゃくちゃ綺麗やろ』


『管理が行き届いてるな』


『思ったよりも綺麗で落差が……』


『店にめんどくさい人達を寄せ付けないようにしてるのか……この店の店主は策士だな……』


『なんか外観と比べて内装広くね?』


『内装を広くするスキルが使われてるんやろ』


『チャット欄にいるみんな! 俺達が持ってる固定概念にこの異世界を当てはめたらだめだぞ』


―――――――――――――――――――――――




鳩は、店の奥に聞こえる声量で叫んだ。



「たまちゃ〜ん……久しぶり〜! 今日は友達を連れてきたんだけど……良い品は入ってる?」


「は〜い……ちょっと待っててね」


『ガチャッ(扉が開く音)』



店の奥から現れたのは、金色の玉だった。

玉の上の方にリボンが綺麗に付けられてあり、一目で分かるほどの化粧をしていた。



「ハトちゃん久しぶり! 元気にしてた?」

「してたよ!」

「良い品ね……待ってて!」



この場に居る4人は固まった。

貫禄のある婆さんか、爺さんが、魔道具店を経営していると勝手な想像を膨らましていたからだ。



「ハトるんちゃん……あの人……あの玉は?」

「すげぇ……なんか神秘的だな」

「なんか凄い……」

「玉の生物……ルーペで一切視認できないぞ?」



混乱している人間メンバーを他所に、鳩は楽しそうに彼女のことを語った。



「あの子はたまちゃんだよ! ブラックボールっていう変形生物が突然変異して、更に知能を手に入れた、世界でも珍しいゴールデンボールっていう変異種。結構昔に私がここでお世話になったから、それ以降たまちゃんって呼んでるんだよ!」



「へ、へぇ〜」

「たまちゃんね……」

「ゴールデンボール……」

「ブラックボールだと……そんな生物知識に無い。初めて聞いたぞ。それに変異種だって!?」




―――チャット欄―――――――――――――――


『反応に困るな……』


『猿は一回黙ろうか?』


『猿の言葉を聞かれたらどうするんだよ……』


『ハトちゃん可愛い』


『このミルクの反応は新鮮だな』


『猿はほんま猿なんやな』


『Dさんはほんまブレないな』


―――――――――――――――――――――――




「は〜い……ハトちゃん持ってきたよ〜!」



「!?」

「へ!?」

「何!? その姿……」

「は?」



微妙な空気の中で、店の奥から出てきたたまちゃんは、まるで本物の人間のような形をしていた。



「人間さん達のその反応は久しぶりだね。私はブラックボールの変異種だから、色んな形になれるの。この人の形も、私の形の一部なんだよ……それよりもほらっ、これがハトちゃんに売るもの」



たまちゃんが出したのは、白い羽根ペンと、ただの羽根に見えるのようななにか。



「この羽根ペンはね、なんと空中に文字が書けるんだよ! この羽根ペンに使われてる羽根の能力で、書いた文字を浮かす力を持ってるの。そしてこの何の変哲もないように見える羽根は、持っているだけで空を自由自在に飛べるんだよ!」



「マジっすか!? 俺買いま〜す!」

「ゲームでも終盤で手に入れるアイテムじゃん」

「それが本当ならどんな原理だ!?」

「もしかしてハトるんちゃん……これ買うの?」


「うん!」




―――チャット欄―――――――――――――――


『国宝級じゃねぇか』


『ジェットパックなんて目じゃねぇぞ!?』


『燃料要らずのジェットパックはヤバい』


『羽根ペンも普通に化け物』


『空中に文字を書いて強力な魔法が使えるのか』


『日本のダンジョン産だったら、発見時に国が管理する物になると思うけど、異世界産で、尚且つ相手が鳩ならどうなるんだ?』


『法廷でまた会おうな』


『↑いや、鳩は法廷に行かんだろ』


『猿よ……お前は金持ってねぇだろ』


―――――――――――――――――――――――



鳩は、この2つの魔道具を買った。


興奮している3人。

頭を唸らせている田中さん。

そして、『バイバ〜イ』と手を振るたまちゃんを後に、退魔闇市に行くのだった。

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