第16話 異世界グランドサガ
『ピッ』
東京駅に停車した電車に乗る為、鳩は改札口で専用のカードを通した。
黒色のような、白色のような、まるで宇宙を表すような光を放ったカードだ。
そのカードを見たDサイエンサーは、口が止まらず、ミルクココアは写真を取りまくり、西郷の猿は持ってきたダンベルを片手にした。
メンバーで田中さん1人だけが、この状況の中でまともにしていた。
「これは……何の物質だ? おそらく地上のものではないな……。ダンジョン産か? だがこんな物質はデータ上に無いぞ? どうなっている」
「これは……映える……映えるよ。もう写真じゃ駄目だ。特注で作ってもらった120テラバイトのSDカード5枚を1ミリも残さず使わないと……」
「うぉぉぉぉぉ……。俺の筋繊維が火を吹いているぞ。俺だって手で空を飛べるんだ……。まずはダンベルで空を飛ぶ予行練習をしないと……」
「…………ハトるんちゃん。僕たちはその凄そうなカードを持ってないんだけど大丈夫なの? それに異世界に行けるほどのお金だって無いよ?」
田中さんの心配の声を聞いた鳩は、体に生えている羽毛の中からチケットを4枚取り出した。
「全然大丈夫だよ! みんなはこの一日乗車券グランドサガ行きを使えば、なんの問題も無し!」
―――チャット欄―――――――――――――――
『ヤバいだろこれ』
『歴史的瞬間を見ている気がする』
『ってか、今リリアルでやってるニュースのライブ配信……観測史上初のデータを取得したってあるけど、絶対にこの配信が影響してるよな?」
『もうこの鳩は誰も止められねぇよ』
『鳩ってなんだっけ?』
『平和の象徴とかもう関係ないやんw』
『こんな小動物がネタ抜きのガチでエグいことしてるって、地球上の誰が思いつくんだよ……』
『この鳩って何者なんだ?』
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鳩一行は、改札口を通って目的の電車が居る駅のホームへと降りた。
今日は土曜日だからなのか、駅のホームでは人は一人も居なかった。
「うわぁ〜凄い……。この電車……塗装してあるのは星かな? でも見る角度を変えたら少し変わって立体的に見えるよ……。まるで今ある星をそのままここに映してるみたい! 動画動画……」
「これは……検知器ルーペでも一切検知できないな。やはりこの世界のものではない。あぁ……サンプルが欲しい……。塗装だけでも良い。今直ぐにでもこの電車のサンプルを……研究を……」
「サイエンサーさん止めて。塗装からサンプルを取らないで。これ、今から僕達が乗っていくやつだから……。取り返しの付かない事になるって」
「凄い! 筋肉がプルプル震えてる。まるで俺の全身が本能的にこの電車に恐怖してるみたいだ」
―――チャット欄―――――――――――――――
『こいつら呑気だな』
『呑気では無いだろw』
『マイペース過ぎやな』
『田中さん以外駄目だ……』
『ほら言ったろ。鳩ぽっぽーやん』
『↑まさか掲示板のネタが現実になるとは……』
『これは鳩ぽっぽーじゃなくて鳩ぽっ鳳だろ』
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「早く乗るよ! 今回は日帰り旅行なんだから配信がめちゃくちゃ長くなっちゃうよ……」
鳩の言葉で我に返った3人は、唯一まともな田中さんと一緒に電車の中に乗った。
電車の中は、外の宇宙的な塗装とは違い、まるで昔の日本を思い出すレトロな内装をしていた。
『ドアが閉まります。ご注意ください』
『ビビビビビビビビビビビビ』
「うわっ……凄い!」
「これは明治時代の日本か?」
「俺、こんなの初めて見たぞ」
鳩以外の4人が電車の内装に興奮していると、電車が発進した。
発進したのと同時に東京駅が見えなくなり、僅か2秒で地球が見えなくなった。
4人は電車の窓から見える外の景色を眺め、ミルクココアだけでなく、田中さんを含めた全員がカメラを起動した。
「綺麗……星が川の流れのように見えるよ!」
「クソっ……検知器ルーペでは足りないぞ……」
「ダンベルが反射して七色になってるぞ!」
「これ……時速何キロ出てるんだ?」
―――チャット欄―――――――――――――――
『綺麗とかそんなレベルじゃねぇ』
『神秘的や』
『天の川かな』
『なんか泣けてきた』
『おいっ……同接数8万だぞ!?』
『この内容なら同接8万でも少ないくらいだわ』
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チャット欄はとてつもない速度で流れ、4人もチャット欄を見る余裕は無かった。
『クー………クー……』
しかし、興奮している人間達を他所に、唯一の人外である鳩はぐっすり寝ていた。
今日のコラボの為に、たった一匹で全ての準備をして、今日が楽しみで夜眠れなかったからだ。
「ハトるんちゃん……」
「田中さん……動かないでね(パシャッ)」
「ハハッ……田中の頭はまるで鳩の巣だな」
「田中さんすげぇ……首の筋肉はそこまで付いてないと思ってたけど……ちゃんとあったか……」
鳩が田中さんの頭の上に乗って寝ている様子を3人は温かく見守った。
鳩が寝たことで、台本を書いていた羽根はそっと田中さんの手の上に落ちた。
それを田中さんはそっと手で包み「おやすみ」と優しい声で鳩を寝かし付けた。
―――チャット欄―――――――――――――――
『てぇてぇやな』
『人語を話す鳩というまるで人のような存在のおかげで人と動物のてぇてぇが生まれるのか……』
『田中さんのおやすみボイスあざっす』
『田中さん優しいな』
『これだよ。これこそが私の求めていた理想郷』
『あぁ〜この空気感良いな』
『ってか、この猿はほんま変わんねぇな。脳内が筋肉過ぎて、この状況に水を差してやがる……』
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◆◆◆
『まもなく〜グランドサガ〜グランドサガ〜お出口は右側です……。お降りの際は……お忘れ物がないようにお願いします……』
「クーーーー…………クーーーー」
「ハトるんちゃん……着いたよ」
「クッ!?」
田中さんは鳩を起こし、先に電車の外に出ている3人の後を追った。
田中さんと鳩が3人に追い付くと、3人は口を開けて棒立ちしていた。
―――チャット欄―――――――――――――――
『やべぇぇぇぇぇ』
『これ歴史に残るやろ』
『何気に、人類が総力を上げて、何千億かけてる宇宙ロケットよりも凄いことしてるんよな……』
『↑どこが何気にだよ。普通にそうだろ』
『普通じゃなくて草』
『神回来たぁぁぁぁぁぁ』
『鳥肌が立ち過ぎてチキンになりそう』
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異世界グランドサガに着いた鳩一行。
街中には多種多様な種族が歩き、空ではドラゴン等の飛行生物が飛び交い、川のほとりには人魚や魚人が岩に座っている。
これから鳩一行の観光が始まるのだ。




