第10話 鳩の室内配信
田中さんとのコラボ配信から1週間。
今日は1月25日。
ホットケーキの日だ。
鳩は、鳩型の天空島で配信の準備をしていた。
先週の田中さんとのコラボ配信の影響は凄まじく、瞬間急上昇ランキング8位に入り、チャンネル登録者数も今や30万人だ。
「クー」
得意のスキルで各機材の接続・調整を行うと、ものの数十分で、今日の配信環境が整った。
今日は記念配信。
先週撮った、田中さんとリヴァイアサンとの記念写真をバックに配信を開始する。
チャンネル登録者数30万人突破記念配信と言うタイトルに、白い鳩が白い羽根に30万と書いて空に飛ばしているサムネだった。
―――チャット欄―――――――――――――――
『来たぁぁぁぁぁ』
『待ってました』
『1週間ぶりじゃね?』
『エモいなこのサムネ』
『エモいって……まだそんな経ってねぇだろw』
『10日で登録者数30万か……』
『普通に凄いよな』
『おいっ始まるぞ!』
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配信開始と同時に画面に映っのは、新築と疑う程綺麗な内装の調理場だった。
調理場の台には、今回使うであろう食材や、調理器具が置かれ、白い羽根が手洗い場で1枚1枚と丁寧に洗浄されていた。
「今日は、私のチャンネルの登録者数が30万人を突破したという事で、お祝いの記念配信だよ!」
―――チャット欄―――――――――――――――
『おめでとう!』
『おめ〜』
『記念配信早すぎて草』
『記念配信って直ぐするもんじゃないやろw』
『調理場で、調理器具って事は料理配信か?』
『律儀に羽根も洗ってるやんw』
『この羽根ってモンスター倒したやつかな?』
『モンスター倒した羽根ならなんかやだな』
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鳩は洗い終わった羽根を白いタオルで拭くと、早速調理器具を羽根を使って動かした。
洗った事により白い羽根は更に光を反射して、まるで白銀のように輝いていた。
「さっそく調理を始めます! あと、チャット欄に心配してる人がぼちぼち居るけど、この羽根は調理専用の羽根にしてるから全然大丈夫だよ!」
―――チャット欄―――――――――――――――
『調理専用の羽根とか聞いたことねぇよw』
『鳩が作る料理って気になるな』
『食べてみたいけど……多分無理よな……』
『もうこの鳩を疑ってる人居なくて草』
『まぁ、あれだけ魅せられたらな』
『人じゃ無理だろ』
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「今日はホットケーキの日だから……ホットケーキを作るよ! 材料は全て、この間店に行った時に買って来たやつ! じゃあ早速、調理開始!」
鳩は慣れた羽つきで卵を割り、牛乳と一緒にボールの中に入れて、ゴムベラを羽根で支えると、素早くかき混ぜた。
目で見えない羽根のかき混ぜ技は、手を使わないからこそできる芸当であり、その速度から、あっという間に仕上がった。
「次は、ボールの中にこのホットケーキミックスを入れてダマが少し残る程度に軽く混ぜるよ!」
―――チャット欄―――――――――――――――
『はっや』
『なんか普通の料理配信だな』
『いや、そりゃあこうなるだろ』
『料理だぞ? 変な物入れたらマズくなるだろ』
『まぁ、今までが凄かったからな』
『今回のコメ欄勝手に期待し過ぎだろ』
『っていうか、1月25日ってホットケーキの日なんやな……初めて知ったわ』
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ダマが少し残る程度まで混ぜた鳩は、羽根を操作して、カメラ外から謎のアタッシュケースを持って来た。
羽根でアタッシュケースをサッと開けると、中には黄金色に輝く液体が入ったシリンジがあった。
鳩はシリンジを羽根で取り出すと、ボールの中に一滴垂らした。
「これが今回の隠し味! 多分だけど、この配信を見てるみんなは初めて見るんじゃないかな?」
―――チャット欄―――――――――――――――
『何入れた?』
『おいっ、なんかやべぇもん入れたぞ』
『黄金の液体とか見たことねぇよ』
『これ大丈夫なやつか?』
『中毒になりそうな色してんな』
『流れ変わったぞ』
『見ただけで普通じゃねぇ』
『【朗報】普通の料理配信終了のお知らせ』
『朗報で草』
『この鳩って視聴者の期待裏切らねぇよなw』
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この後は、ごく普通のホットケーキの調理手順を踏んでいった。
しかし、普通の調理とは別に、進んで行く度に黄金の輝きが増していくホットケーキは、チャット欄を大いに盛り上がる要素となった。
ホットケーキ作りという日常に、謎の液体という非日常が混ざった為、調理配信でも盛り上がる要素となったのだ。
◆◆◆
「かんせ〜い!」
完成したホットケーキは、調理室の外まで届く程の光量で黄金色に輝き、リスナーは光の強さに目を痛める程だった。
―――チャット欄―――――――――――――――
『目痛え』
『明るさ最低にしたぞ?』
『眩しっ』
『まともに画面見れねぇって』
『金色でこの眩しさはエグいって』
『ここの奴ら良く文字打てるな』
『俺は画面を暗くして打ってるぞ』
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お皿にはホットケーキが綺麗に盛り付けられてあり、蜂蜜をかけ、バターを乗せた事により、更に輝きを増していた。
「ク〜クク」
『アムッ』
「クーーーーーーーー」
―――チャット欄―――――――――――――――
『美味そう』
『良いなぁ』
『なんか鳩語に戻ってるし』
『それだけ美味かったって事だろ』
『あぁ〜お腹空いて来た……』
『食レポ無くて草』
『まぁ鳩だからな』
『なんだろう……金色に輝き過ぎて絶対美味しそうには見えないと思うんだけど……美味しそう』
『何故これが美味しそうに見えるんだ?』
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ホットケーキを食べ終えた鳩は突然配信画面を暗転させて、重大告知の知らせという画面にした。
「ここで皆さんに報告です。近々私が経営するカフェが開店するから、ぜひ食べに来てね! ちなみに、次の配信は、田中さんとゲストと関係者を呼んで試食会を開くよ! 楽しみにしててね!」
―――チャット欄―――――――――――――――
『唐突で草』
『田中さん……』
『田中さんまたコラボしてくれるのか』
『田中さんならするぞ』
『楽しみやな』
『田中さん……胃薬常用してそう……』
『胃薬常用は無いぞ。田中さんは生の川魚食っても大丈夫だし、前の配信でアニサキスに当たっても大丈夫だったからな』
『↑物理的の話じゃねぇよw』
『今更だけど、これって誰が編集してるんだ?』
『確かに』
『結構クオリティ高いよな』
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「では、また次の配信で!」
鳩の記念配信に出てきた黄金色に輝くホットケーキ……それすらも霞むほど、鳩が経営するカフェは視聴者を釘付けにしていた。




