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第11話 試食会

1月28日。

動画配信サービスリリアルに、ある配信の予約が立てられた。


カフェ試食会というタイトルに、鳩と田中さんがダンジョンの中にコーヒーを淹れてるサムネ。


思わず開きたくなるようなサムネの配信は、始まる前から4000同接を記録した。




―――チャット欄―――――――――――――――


『来たな』


『待ってました』


『試食会って何が出るんだ?』


『今回も絶対普通じゃないやんw』


『田中さん……前の100万人記念配信で鳩との配信はエグいほど疲れるって言ってたのに……』


『田中さんって性格的に断れないからな……』


『まぁ、前回の田中さんは楽しそうだったし』


―――――――――――――――――――――――




配信が始まると、おしゃれなカフェに、田中さんと鳩、そしてカフェマスターが挨拶をした。



「ダンジョン系鳩配信者のハトるんだよ! 一見さんも、二見さんも、三見さんもよろしくね!」


「あ、どうも田中です」


「カフェマスターの上田だ。今日はこのカフェで色々と作る。人生で初めてダンジョン産の食材を使うが、全力で挑む所存である。よろしく」



カフェマスターの上田さん。


日本カフェの歴史を作ったと言われる彼は、日本中で経営している様々なカフェを渡り歩いて指導をしている有名人だ。


今日は、鳩が経営するカフェの話を聞き、今ある仕事を全て後回しにしてやって来た。


彼が来たのは、田中さんの指導をする為だ。


ダンジョン産の食材を良く扱う田中さんに、普通の食材を良く扱う上田さんのコンビはチャット欄を大いに盛り上げた。




―――チャット欄―――――――――――――――


『上田さん!?』


『ガチのレジェンドやん』


『確かに上田さんなら来そうやな』


『まぁ、鳩の経営するカフェは上田さんが来る要素モリモリだからなw』


『田中さんが霞んでるw』


『田中さんの挨拶めちゃくちゃ吃ってるやん』


『田中さんも凄いのに他が凄過ぎてな』


『ま〜た田中さんの不憫が発動してるよ』


―――――――――――――――――――――――



今回の配信は、余計な前置きは抜きにして早く視聴者に伝えたいので、早速本題に入った。


お馴染みの白い羽根が、使う食材と調理器具を持って来て、田中さんと上田さんが受け取った。



「このカフェのメニューは日替わりにするんだけど、みんながこのカフェに来て楽しめるようにしたいから今日はメニューの一部を紹介するね!」



羽根で運んで来たのはコーヒーの食材。


黒光りのコーヒー豆に、光を反射する砂糖、雑な色を含まない完全に真っ白なミルクにお湯。


そして、コーヒー豆を抽出するエスプレッソだ。



「このコーヒー豆と牛乳は、神奈川県平塚市にあるダンジョンの下層に居るモンスター、コーヒー牛が好んで食べる豆と、コーヒー牛の乳だよ。砂糖は、沖縄の宮古島市にあるダンジョンの中層に生えてるサトウキビを加工したもので、お湯は日本のダンジョン最下層に必ずある湧き水を飲めるようにしたものだよ!」




―――チャット欄―――――――――――――――


『豪華過ぎやろ』


『贅沢やな』


『この鳩って毎回豪華過ぎなんよ』


『これ、1杯数万じゃないと採算取れないだろ』


『本当に俺らが飲んでいいのか?』


『こんなん不安になるわw』


―――――――――――――――――――――――




「早速料理開始!」



事前に練習したのもあって、田中さんと上田さんは抜群のコンビネーションで進めて行った。


ダンジョン食材に通じでいるもの。


生物の体内にある法を適度に込めると、味に深みが増し、地上ではあり得ないほど美味しくなる。


田中さんが豆やお湯を法で加工して、上田さんが加工したもので料理する。


エスプレッソも上田さんが監修した物。


今回作るコーヒーの全てが、鳩と田中さんと上田さんの力により出来るものなのだ。




          ◆◆◆




「できた!」

「良い香りだ」

「……体がカフェインを欲してるよ」



完成したコーヒーは、まるでベンタブラックのような完全な黒色だった。


湯気から香るコーヒーは、匂うだけで口の中にコーヒーの深い味わいがした。




―――チャット欄―――――――――――――――


『美味そう』


『コーヒーに美味そうとか本当に思うんだ』


『何気にここまで黒色のコーヒーも珍しいな』


『カフェとしての戦略が上手いな』


『敢えてコーヒーだけを出してカフェフードを出さないのは来いって言ってるのか?』


『他も気になるな』


『でも、どうせ高いんやろ』


―――――――――――――――――――――――



「じゃあ、頂きます」



鳩はコーヒーが飲めないので、田中さんと上田さんが試食した。


田中さんは、口に含んだと思ったらとあっという間に飲み干し、上田さんはちびちび飲んでいた。



「田中さん……上田さん……どうだった?」



田中さんは何故か答えなかったが、ちびちび飲んでいた上田さんはコーヒーカップを掲げた。



「コーヒーの中にある香りが脳をゆっくりと包み込み……コーヒー特有のほろ苦さが舌を伝って体を刺激して、この2つが心を落ち着かせる……そうだ! これはツンデレだ! コーヒーの中身はほろ苦く、体を刺激するが、隠しきれない心の内が俺を包み込む……。そばに居て安心するような感覚……コーヒーは芸術だったんだ!」



上田さんの食レポは鳩すらも言葉が出なかった。


でも田中さんだけは、沈黙ながらも『うんうん』と頷いていた。


チャット欄は本気で心配する声や、飲んでみたいと思う人の2極で別れた。




―――チャット欄―――――――――――――――


『どんな味なんだよw』


『この人頭大丈夫か?』


『上田さんがこれ程の高評価を出すんなら、ガチで飲んでみたいな……』


『【悲報】カフェマスター壊れる』


『なんか変な薬でも入れたか?』


『コーヒーが芸術って意味分かんねぇよw』


『飲み物のツンデレって何?』


『台本かな?』


『いや、台本はじゃなくね? 上田さんがガチで美味いと思ったやつは、毎回こんな感じの評価を出すぞ……それにしても高評価だけどな』


『まぁ、上田さんは忖度しないからな』


―――――――――――――――――――――――




配信の盛り上がりが最高潮に達した今、機を見た鳩はカフェの宣伝をした。



「来月の2月1日に、このコーヒーを含めたメニューが出るカフェがオープンするの……ちなみにカフェで出すメニューは一律ワンコインの500円だよ! みんなも来てみてね! じゃ、またね〜」




―――チャット欄―――――――――――――――


『500円!?』


『嘘やろ』


『エグいって』


『ほんとに採算取れるのか?』


『いや、実際に入ってないんだろ』


『↑それ詐欺や』


『今の時代で、カフェがワンコインとか神かよ』


―――――――――――――――――――――――



僅か4日後という短いスパンに視聴者は混乱したが、視聴者を振り回すように鳩は配信を閉じた。


コーヒーを飲んでから最後まで黙っていた田中さんと、配信が終わってないのに挨拶すらせずちびちび飲んでいる上田さんがガチさを演出した。

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