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人生  作者: yoshi88
:1.17 第一章 始まりの物語
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7.だれが為に(その2)

 中西は僕の顔を見て開口一番――、


「電車はどこも動いていなけど、阪急園田(そのだ)から神崎川(かんざきがわ)区間は復旧した」


 と、駅員でない限り絶対知りえないような情報を入手していた。


 阪急園田と神崎川の区間はたった一駅の区間ではあるが、その区間の間に藻川(もがわというそこそこ幅の広い川が流れており、渡れる橋も限られていて、自転車や徒歩で渡る事はかなり困難を極める。


「僕はこれから救援物資を買い出しに行って、それから神戸に向かうつもりだけど一緒に行かないか?」


 僕の心はぎくりとした。


(...ただテレビの報道を朝から晩まで見ながら嘆いているだけの僕とは違い、此奴は自ら行動している...。)


 たった2年しか会ってなかったはずなのに、随分と差をつけられて歯痒い。しかし、それを(おくび)にも出さず僕は承知した。


 中西もきっと岩本先生の事が気になっているのだろう。


 僕達はすぐ、まずは自転車で阪急園田駅まで全速力で漕ぎ出した。


 駅で一区間だけの切符を購入し電車へ乗り込む――。


 小学生の頃弟と週に4回、阪急十三(じゅうそう)にあるスイミングスクールに通って見慣れた藻川の景色――。


 列車はガタンゴトン、ガタンゴトンと規則正しい音を響かせながら、神崎川に架る鉄橋を渡ろうとした時、車両の前方から、


「きゃぁぁ!」


 女性の悲鳴が耳に飛び込んできた。


(...何事か!...。)


 一瞬どきりとして皆が見ているそちらの側の景色に頭を向けた!


 川沿いから見えるマンション群は全て倒壊し、奇跡的に1棟だけ残ったマンションがある――。


 1階と3階が密着し、2階部分がない...。


  共用廊下は破断し不自然な坂道を造っている。その3階部分を平然と歩いている人影を僕と中西は左から右へ食い入るように見つめていた。


  神崎川駅に着いた僕達は早速近くのコンビニを目指して駆け出す。地元のコンビニでは食料や飲料水は何もなかったが、幸いまだここには手付かずの状態で残っていた。


 ボストンバックを持って来ていた僕は大人買いでパンやおにぎり、サンドイッチやジュース、水をチャックが閉まらなくなるくらい買い占める。


 中西も持っていたリュックサックに次々と食べ物や飲み物を詰めていく。


 僕達は急いで帰りの電車に乗り込み、搭乗口付近に陣取った。


 先程のマンションを又右から左へ凝視しながら、阪急園田駅から一路、神戸を目指して約24kmの道のりを自転車で走り出した――。

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