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人生  作者: yoshi88
:22歳 第四章 葛藤を謳え、因果をねじ伏せる欺かざる魂は世界線を越える
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4.寄り道

 ・・・とぼとぼと僕達は山道を駅の方へ向かって歩いていた...。


 先程の劇の演技は、練習量の豊富さと舞台の音響照明等素晴らしいものを感じた。が、反面、社会人になった今でも理解するのが難しい題材の劇だったと思う。


 環境破壊をテーマに、"天使"、"人類の進化"等々、初めて劇を鑑賞した人なら多分戸惑う事の多い内容だった。もう少し分かりやすい演目の方が万人受けするはずだが、田川君とはこれで3回目の観劇なので、まぁ問題は無いと思っている...。


 ・・・僕達は終始無言のまま、余韻に浸りながら坂道を下った。


 夏の暑さが少し抜けてきたような、台風が去った後のような少し肌寒い山風が、先程まで密閉空間にいた僕の火照った頬をかすめて心地良い。ふと田川君が、


「そういえば、このあと行くんやろ?住宅探検」


「うん」


 そのつもりだが、大学があるここは灘区でお目当ての「東灘区の家」は、灘区の東に隣接する為、バイクや車等足が無い僕達は一旦駅まで戻ろうと考えていた。


 神戸には山の麓を山側から順番に、「阪急電車」、「JR」、「阪神電車」と3系列の電車が通っており、あの「1.17」の大震災で壊滅的な打撃を受けたのは一番海側の阪神電車側の地区である。


 阪急電車より北側は同じ神戸でも被害状況は雲泥の差であった。


 港町神戸の眺めが良く異国情緒溢れる所謂「高級住宅地」は、此処より2駅程南西に行った場所にあり、一番山側の「阪急電車」から山側に少し登った辺りを指す。

 つまり、


(...ここで自邸に並々ならぬ(こだわ)りを持っているような人「(つい)棲家(すみか)」として探し求めるような人ならきっと阪急電車よりも北側で、眺めが良い場所――。あまり山の頂上に向かって行き過ぎると不便になるので、駅から多少遠くても徒歩ぎりぎり圏内を探すのではないか?...。)


 人が暮らす"利便性"からも考慮して、そこから推理すると細かい東灘区内でもかなり範囲が限定されるはずだ。


 此処の更に北に広がる東灘区の約7倍の面積を誇る「北区」だったらお手上げだった。そして、山の頂上に向かう山道のルートもある程度限られており、縦横無尽に道路が広がっている可能性は低い...。


 僕はまるで、――去年テレビ放送開始以来誰もが知る、――推理アニメ「名探偵コナン」のコナン君のような鋭い推理力で、昨夜より的は絞っていた。


(...この家は神戸市東灘区本山町森(もとやまちょうもり)の南側から森北町(もりきたまち)までの7地区の何処かに存在する...。)


 僕はこの近くに辿り着く為の目印となる建物「甲南(こうなん)女子大学」のアクセス方法を事前に調べており、学生の最寄り駅となるJR「甲南山手(こうなんやまて)駅」まで移動する事とした。


 ――甲南山手に着くと早速、田川君が、


「お腹が空いた」


 と言い出した。


 さっき電車の中で学生が食べていたマクドのフライドポテトが美味しそうな匂いが僕達の方へ流れてきてたからだろう...。


「そうだね、何か食べようか」


 僕達は駅を山側と反対の南側に出て来た。


 この駅は住宅地の中にひっそり存在するようなとても小さな駅で、南側は駅前ローターリーのようなものは無く、車さえ駅に近づけない。南側にはアクセスしずらいだろう。


 初めて訪ねたので知らなかったが北側にはちゃんとバスロータリーは存在する。

 そうとも知らず僕達は黙々と駅から南側の住宅街の中を国道2号線の方に向いて歩きだした。


 当初の目的である「住宅探検」の事も忘れて今は何か食べ物屋求めていた。他愛もない話しをしながら5分ほど真っすぐ歩いていると港町神戸に相応しく、青色で統一された佇まいに白文字のイタリア語で店名が掲げてあるカフェに目が留まった。


 外に写真付きのメニューが置かれていて、どうやらサンドイッチがメインに喫茶店らしい。


 フランスパン風のパンの間に生ハムやサラミやチーズを挟んでいる。具沢山(ぐだくさん)でインパクトのある写真に思わず、中に入ろうとしたが値段を見て一瞬躊躇した――。


 全て1000円以上...。背中のリュックに入れている「グイン・サーガ」10巻分よりも高価だ。セットの珈琲まで付けると劇を観る前に食べた「かつカレーうどんセット」も優に超えてしまう..。空腹の中、駅から歩いて来てこれまでの通り道に、閑静な住宅街以外食べ物屋は一軒もなかった。


(...また駅まで戻るかぁ...。)


 ちらりと田川君を見ると、既に田川君は店の扉を開けて一歩店内に入っていた。

 僕は苦笑しながらも田川君を追いかけて中に入る。


 店の中は目の前にショーケースの中に入った色々な具材が陳列されており、パンに挟む具材を自分で選択するスタイルのようだ。


 店の中の左手に2人掛けの席が2セット設けられており、一応中で食べる事も可能ではあるが生憎2席とも既に先客で埋まっていた。


 僕達はテイクアウトで「ハムとモッツァレラ」のサンドを、田川君は「バジルチキンとスライスチーズ」のサンドをそれぞれ注文した。セットで飲み物も勧められたが2人共断った。


(...飲み物くらいは自動販売機のもので良いだろう...。)


 ここまで来る時に見かけた公園で食べようという事になり、2人で元来た道を駅まで引き返したが、空腹には勝てず結局2人とも公園に辿り着く前に食べ終わっていた...。

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