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人生  作者: yoshi88
:22歳 第四章 葛藤を謳え、因果をねじ伏せる欺かざる魂は世界線を越える
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1.俺達の休日

 「最近なんか面白いことないの?」


「住宅建築」という事務所の棚にあった雑誌を見ながら昼食後、いつものマクドで田川君に話題をふった。


 田川君はホットレモンティーを口につけながら、「グイン・サーガ」第57巻をにやにやしながら読んでいる...。最近、僕達二人は食後読書をしながら、食後の時間をまったり過ごしていた。


「グイン・サーガ」は、1979年9月の第1巻「豹頭の仮面」が発売されて以来、今日まで完結することなく、ずっと続いている未完の大作SF小説で、それは2009年130巻執筆中に作者の栗本氏が他界し、死後もその意思を受け継いだ別の著者により物語は続く。


 2025年には正伝と外伝を合わせて175巻を超える、日本最長の小説シリーズとして日本記録認定協会に認定される事になるのは、もう少し先の出来事である...。


「田川君、聞いてる?」


「.......。うんん...」


(...聞いてないね...。)


 ホットコーヒーを飲みながら、僕はパラパラ雑誌を観ていると、急に綺麗な"コンクリート打放し"と鈍い茶系色の"ガルバリウム鋼板"を組み合わせた独特のシルエットをした住宅の写真が目に飛び込んできた。


  山の中腹を上手く利用し、玄関が2階部分にあり、住宅内部で1階に繋がっている。


 1階部分には、少し平な部分が中庭があり、斜面側にも崖から少し突き出たようにオープンテラスから180度の絶景が楽しめるようになったいた。電動開閉式のシェードが内蔵されており、雨天の日や極暑から建物を守る工夫が施されている。


 お風呂は2階で、そこからも絶景を楽しむ事ができる。湯船はなぜか手入れが難しい「檜風呂」が採用されているあたりは、施主(せしゅの我が家に対する思いが紙面から伝わってくる。


 まるでスタジオジブリの「おもいでぽろぽろ」、「カントリー・ロード」を歌う名シーンをそのまま切り取ったような風景だ。


(...東灘区(ひがしなだく)の家?六甲山、神戸かぁ...。)


 このページのタイトルに2年前阪神淡路大震災で被災し、当時高校の担任の住んでいる六甲山へ中西と救援物資を持って自転車で訪ねて行った時の事が懐かしい。土地勘は多少ある。


(...そうだ、今度神戸大学で「ハチの巣座」の演劇公演があるし、そのあと東灘区を歩いたら、この住宅に遭遇するかもしれない。”住宅探検”!...。)


 今思いついた”Good idea”に僕は雑誌を見ながら、にんまりほくそ笑んでいた。田川君のニヤニヤと僕の笑みに退()いたのか、隣にいる女子高生らしき客が僕と目が合うや否や別の空いている席に移りだした...。


 僕も居た(たま)れなくなり、まだ休憩時間は残っているけど、田川君を引っ張って事務所に戻る事にした。道中、田川君にこのアイデアを告げると早速、


「おっけー!」


 の2つ返事。


 いつもの阿吽の呼吸で僕は早くも次の日曜日に心を躍らせていた。


 ――日曜日の朝、JR尼崎の駅構内で待ち合わせた僕達は早速電車を乗り換え、神戸方面に向かった。


 JR尼崎駅周辺はその利便性のお陰でマンション群が建ち並び、このマンションの一角に小学校6年担任である北川先生の分譲マンションがある。


 高校担任である岩本先生もそうであるが、北川先生ともまだ1年に1回の近況を知らせる年賀状は続けていた。


 先生は独身で結婚には全く興味がなく、自信の趣味に没頭するタイプの人で、3年前に尼崎駅近くに引っ越してきたらしい。震災にも新しい設計思想で建設された超高層マンションに被害は少なく、元住んでいた借家だったらどうなっていたか分からない。なかなか強運の持ち主である。


 ・・・暫く電車に揺られると目的地「JR六甲道(ろっこうみち)」に辿りついた。


 小腹も空いたし何か食べてから大学へ行こうと田川君と話しながら、商店街を歩いていると1軒の洒落た店に遭遇した。


 喫茶店のような店構えであるが、扉の左側に大きな提灯(ちょうちんがぶら下がっている。


 提灯には「うどん」と書かれており、屋号であるうどんを箸ですくった瞬間を描いたような、挿絵も描かれている。


 早速中に入ると、普通の落ち着いた和風のうどん屋さんだった――。


「いらっしゃませ!」


 店の人に僕と田川君はカウンターに席を勧められた。


 色々のメニューはあるが僕も田川君も先程から隣のお姉さんがズルズルと啜っている"カレーうどん"が、気になって気になって仕方がない...。

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