表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人生  作者: yoshi88
:21歳 第三章 無智と無謀の偽善者は、今日も素敵なマスクを被る 
PR
47/71

29.幸運と不運

 阿智(あち神社の南参道を少し歩くと一軒の日本家屋の軒下に大きな丸い杉玉(すぎだまがぶら下がっている。「森田酒造」――。


(...どうやら酒屋(さかや)があるようだ...。)


 杉玉の下に"酒林(さかばやし)"と書いてある木の札が掲げてある。


 その昔、杉玉は杉の葉をボール状にした造形物で酒林とも呼ばれていた。

 杉玉には新酒が出来た事を知らせる大事な意味が込められいる事を何か本で読んだ事を覚えている。


 早速中を覗こうと思ったが生憎今日は休みのようだ。僕はアルコールが殆ど飲めないのでそれほどがっかりはしていないが、滅多に訪れる事は出来ない場所なので少し残念ではある。


 それからまた裏手の道から「アイビースクエア」に戻って数件の店を物色し、今日宿泊するユースホステルには食事が無いので、途中で見つけたそば屋で「ざるそば定食」を食べた。


 店を出る頃には日はとっぷりと暮れ、辺りは真っ暗になっていた――。


 美観地区は夜もライトアップされ、川辺を走る手漕ぎ舟にも明かりがともされ、落ち着いた雰囲気に満ちている。


 僕は「アイビースクエア」の裏手の道を真っすぐ山に向かって歩き出した。


 山道は急勾配ではなく、どちらかと言えばなだらかな坂道がだらだら続いているという感じだ。美観地区とは違い外套はあるにはあるが、ポツリ、ポツリと(まば)らに足元を照らしてる。


 山に入ってゆくに従って道は少し狭く感じる...。


 一軒の店も無く民家も少なくなってきた。空を見上げても今日は分厚い雲に阻まれ、星は見えない。山に入ってから感じたが、もうすぐ雨が降りそうな予感がする...。


 突然!!「ワォ~~!」


 どこかで犬の遠吠えが聞こえてきた...。


 何だか変な胸騒ぎを覚え、


(...もっと早くユースに向かった方が良かったなぁ...。)


 と、少しの後悔を引きずりながら、足早に目的地に向かって黙々と歩いていた。


 ふと、目の前に少し(たいら)になった空間が現れた。

 見るとブランコと鉄棒、砂場がある小さな公園がある。公園には外套が2つあったが、1つは壊れ、もう一つはジジジ...と点いたり消えたり点滅している。


 誰もいない...。


 時間の感覚では8時頃だと思うが山道のせいか9時か10時頃のように感じてしまう。腕時計は今はリュックサックの中に仕舞い込んでいたので手には付けていない。


 誰もいない...。


 公園のベンチに座って腕時計を探していると、また、


「ワォ~~!ワォ~~!」


 と犬の遠吠えが聞こえてきた。何だかさっきより近くに感じる...。


 リュックを漁るのを止め、僕は取り敢えずこの場から一刻も早く立ち去った方が良い事を全身の細胞が、いや脳が、第六感が告げている。


 "ココハ、キケンダ!・・・ハヤク、ニゲロ!!"


 振り向くと公園のフェンス越しに今まで見たこともない、僕の肩くらいはありそうなドーベルマン風の大型の野犬が2頭、じっと此方の様子を視ている...。


 先程とは違い、


「ウウウウウ...。」


 と低い声を発しながら、今にも飛びかかって来そうな気配さえある。


 さっきから鬱陶(うっとう)しいほどチカチカ点滅している外套の明かりが野犬の口元の(よだれ)を照らし、口からボタボタと地面を汚している影を映し出す。


 獲物を見つけたような鋭い殺気を放ちながらじっと此方の隙を(うかが)っているようだ。野犬と僕の間には1.8mくらいのフェンスがあり、今はなんとか踏みとどまっているに過ぎない。


 僕はゆっくり公園を後にしようと数歩後ろへ下がった...。


 良く見ると、フェンスは全面完全に覆われている訳ではなく、5m右側で一旦切れ目があり、そこからまた次のフェンスに繋がっている...。


(.......。)


(...あの、フェンスの切れ目に野犬が気づいたら、やばいぞ...。)


 僕はもう一度、ゆっくり後ずさりしながら、公園を離れようとしたその時、2頭のドーベルマンが、


「ワォ~~!ワォ~~!」


 と大音量で哭きだした!!


 すると、山中の野犬が集まってくるような気配と共に、さらに10頭以上の野犬が山から下りてきた!!そしてその内の1頭が金網の切れ目に気づき、簡単に公園内に侵入してしてくる。


 僕は人生で初めて名も知らない山道で、"十数頭の野犬"に囲まれ、絶体絶命のピンチに追い込まれていた...。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ