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人生  作者: yoshi88
:21歳 第三章 無智と無謀の偽善者は、今日も素敵なマスクを被る 
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21.初めての一人旅

 まだ良く分かっていないが、取り敢えず安い事は理解した。まずは電話で聞いてみないと話にならない。


 早速僕はここに載っている「岡山県ユースホステル協会」に電話した。


「あのー、1泊宿泊したいと思ってますが、"ユースホステル"って何ですか?」


 ・・・色々聞いてみたが、"ホテル"と違って、"ホステル"は客室を複数人で共有利用する事で、安価に設定されている簡易宿泊施設のようだ。


 相部屋の場合も多いが、部屋は個室でトイレ風呂等、水回りスペースのみが共同の処もあるらしい。


 取り敢えず、岡山県に点在するユースホステルの電話番号を教えてもらい、早速電話を掛けてみる。


 岡山に行くなら山奥に行っても仕方がない。美観地区がある"倉敷"一択だ。


 昔話の桃太郎の舞台は岡山県で「吉備津彦(きびつひこ)神社」は聞いた事はあるが、僕はあまり興味が湧かない。


 誰かに、


「夏休み、何処に行ってたん?」


 って聞かれた時、


「桃太郎で有名な岡山県の吉備津彦神社に行って来たよ」


 って言っても相手も、


「ふ~ん...」


 って、次の会話に困ると思うし、そもそももっと華やかな処が良い。


 温泉なら昔の文豪が訪ねてそうな"隠れ宿"みたいな風情漂う処も良いが、初めて一人で色々周るならある程度皆が知っていて、ちょっと羨ましがられるような有名スポットの方が良い。


 その点美観地区なら申し分ない。


 端から端まで行っても確か500mくらいだと記憶している。その中に小川が流れていて、通りにはお土産屋さんや大原美術館まで備わっている風情漂う、"レトロお洒落スポット"だ。その上JR倉敷(くらしき)駅から徒歩15分という好立地。


 正に初心者にとって安心安全の目的地だ。交通費も家からJR倉敷までの往復の運賃しか掛からない!


 いつもの調子で良い事ばかりを考えだし、"That's a good idea"と、一度思ってしまうともうそれが全てのような気がしてきて、他の選択肢が考えられなくなっていた――。


 早速協会で教えてもらった「倉敷ユースホステル 」に連絡する。


 協会の事前情報としてこの宿は美観地区に一番近いユースで、昔から人気らしい。アクセスが少し悪く、美観地区の裏の山道を登って行った先にあるとのこと。


「はい、倉敷ユースホステルです」


「あの、初めて電話させてもらったのですが、そこに1泊したいのですが、・・・できますか?」


「はい、大丈夫ですよ。会員の方ですか?」


 "カ・イ・イ・ン!!"


 ・・・謎の響きに一瞬どうしようと思ってしまう。


(...あぁ、なるほど、こんなに安い宿、会員じゃないと宿泊出来ないはずだ...。)


(...それとも良くある、会社の福利厚生の一環として安いみたいな感じかな?...。)


「いや、会員じゃないけど、泊まれますか?」


「はい、大丈夫ですよ」


(...泊まれるんかい!...。)


(...びっくりしたやん、泊まれるなら何でも良いよ...。)


「でも会員の方なら、会員割引で更に600円安くなりますよ。会員になりますか?」


「はい、なります!」


 即答で答えていたが、会員の有効期限は1年間で、成人会員は年間2500円。

 何処でも通用するか分からないが一回で600円安くなったし、今後の利用も考えると断然コスパがそさそうだ。


 通常8月から宿を探しても何処も満員のはずだが、"一人旅"が良く集まるユースならあまり関係がなさそうだ。


「来週の土曜日、1泊できますか?」


「あぁ。その日は御予約が一杯ですね」


「じゃぁ、日曜日は?」


「日曜日も・・・すみません」


「じゃぁ、月曜日!」


「はい、それなら大丈夫ですよ」


「宜しくお願いします」


  別に何時でも良い――。


 一人旅、行く日を決めるのも自分だし気楽な旅だ。



(...本屋さんに行って旅の情報を集めねば...。)


 僕は早速玄関に行って靴を履きはじめた。


(...沢山の情報を得るには地元の本屋さんでは不足するだろう。ここはやはり梅田まで行かないと...。)


 ――そう思う心に、不思議ともう一人の自分が頭の中で囁く...。


(...それで良いのか?...。)


 僕は履きかけた靴を履かず、少し考える――。


 折角一人旅をするのに、先に旅の情報を仕入れて、本に載っている人気スポットに行って、帰りにお土産の「きびだんご」でも買って帰る...。


「ヨシ君、夏休みは、何処か行ってきた?」


「うん、岡山の倉敷。はい、これきびだんご、雑誌にも此処のきびだんごは有名で美味しいって書いてあったから買ってきたよ...」


(...そんな雑誌の"誰かに作られた"ふぬけた旅を、お前は、本当に、望んでいるのか?...。)


(...本当に、おまえは、それで後悔しないのか!!!!...。)


(...・・・だめだ、こんな旅、旅じゃない。これは"旅行"だ、旅行。僕はそんなものの為に、貴重な時間を使うのは真っ平御免だ...。)


(...行かない!本屋なぞ行くものか!本屋なんか消えて無くなれ、情報なんぞくそくらえだ!・・・調べない。調べないから出会いがあり発見があるんだ、それこそが旅の醍醐味ってやつだろう?...。)



 ・・・何だか分からないけど、変な汗を掻きつつ、僕は一旦部屋に戻って、久しぶりにNINTENDO64の新作「スーパーマリオ64」をやってみる。


 画面のグラフィックはファミコンと違い格段に進化してるが、その分コントローラーのボタン数も多くなり、ファミコン世代の僕にはついていけず一度挫折している。


(...・・・やはり、ついていけない...。)



(...取り敢えず、時刻表は必要だし、それなら地元の本屋でも買えるか。やっぱり本屋さんに行こう。電車の時刻が分からないのは流石にきついしなぁ...。)


 冷めてしまった珈琲をもう一度電子レンジで温め直し、飲んでから出かける事にした。

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