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人生  作者: yoshi88
:21歳 第三章 無智と無謀の偽善者は、今日も素敵なマスクを被る 
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17.(続)週末の金曜日(その1)

 扉を開くと、週末で人で溢れかえった梅田地下街の喧噪とは別世界のように、中は漆黒のカーテンらしきもので覆われ外から見えないようになっており、店内の明るさは極力抑えている。


 足元を照らす明かりは天井からのスポットライトが仄かな淡い色彩を放ち、赤色を基調とした豪華なシャンデリア風の照明器具も落ち着いた雰囲気の演出に一役買っているようだ。


 既に数人いる客は皆男女のペアか女性同士ばかりで、男の2人連れは僕達だけだった。


(...場違いな所に迷い込んだかも知れない...。)


 一瞬入ってきた扉から、戻って出ようとも考えたが、定員さんの


「此方へどうぞ」


 という微笑みには逆らう術もなく、促されるまま奥の居心地が良さそうな席へ案内された。


 ジャズの音楽が今の雰囲気に絶妙に合っている。


(...いつか、彼女が出来たら一緒に来たいなぁ...。)


 今まで田川君と楽しく休日の午後を過ごしていたのに、一抹の寂しさを感じてしまう。


 メニューが配られると早速僕は「ビーフカレー」を選んだ。


 田川君は少し迷いつつも、時間を掛けて「チキンカレー」を選択する。


 そして、お互いセットドリンクは冷たい「チャイ」にした。


 どんな店でもそうだが、僕は何時もメニューを見るなり、大抵30秒以内に決めてしまう癖がある。


 これは良い時もあるが、ちゃんとメニューを見ていない事もあり、田川君が頼んだ方にしておけば良かったと思う事も偶にある。


 多分2人共が性急(せっかち)だったり、逆に2人共がのんびり屋では上手くいかず、お互い性格が違うから上手くいくのだろうと常々思う。


 他愛もない会話をしながら待っていると、早速カレーの薬味が同じサイズの独特の丸い器に6種類運ばれてきた。


 定番のらっきょや福神漬け、チーズやピクルス。他に紅ショウガとあと1種類は見た事はないが、恐らく野沢菜(のざわな)漬けを細かく刻んだもののようだ。


 薬味を見ただけで、


(...この店はきっと当たりだ!...。)


 と確信してしまった。


 次にメインのビーフカレーとチキンカレーが運ばれてくる。


 薬味より大きいが統一感のある半円状の銀製の器に、ルーとライスを別々に分けられている。


 ライスはバターライスらしく、ライスのおかわりは自由らしい。


 早速バターライスを自分の皿にとりわけ、その上にカレールーを掛ける。薬味のらっきょと野沢菜漬けも一緒に盛り付けると完成だ。


 一口食べただけ理解した――。


 濃厚なルーと軽い触感のバターライス、・・・肉の柔らかさ、冷たくてシャキシャキした薬味達...。


 辛口が少し苦手なので、甘口を選択したがそれでも少しだけスパイスの辛さが舌を刺激し、噛みしめる毎に何度も何度も口の中一杯に喜びが広がっていく。


 "あなたは、本当に美味しいカレーを食べたことがありますか?"


 あの独特の言葉の意味を噛みしめながら、"至福の一口"が脳と舌をいったりきたり、身体中、全身をぐるぐると駆け巡る...。


 気付くと2人して、


「美味しい、美味しい」


 さっきからそればかり...。


 食後、良く冷えたチャイが運ばれてきた。


(...・・・参りました...。)


 ごった返す梅田地下街の中心で、人知れずひっそり佇むこの看板とカレー屋は、僕達の中で、間違いなく"生涯忘れる事はない名店"となってゆく...。


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