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人生  作者: yoshi88
:21歳 第三章 無智と無謀の偽善者は、今日も素敵なマスクを被る 
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16.週末の金曜日

 ・・・「ヨシ君!ヨシ君!」


  ふん、ふん、と途中まで田川君の会話を聞きながら、カップにストローを差した

 ままズルズルを珈琲を啜っていた――。


「ヨシ君って!もうすぐ昼休み終わるよ、行こう!」


  遠い夏の記憶に幽体離脱していた僕の魂は、直ぐに現実に戻ってきて、慌てて田川君の後を追いかけた。


(...今日は金曜日。花金(はなきん)だ!・・・いや、この表現は死語かな...。)


 仕事帰りに田川君と映画を観に行こうと約束していた日だ。


 先月のある日曜日、2人で偶々観に行ったトムハンクス主演の「フォレストガンプ一期一会」に感動した僕達は、その後「アポロ13」を観て完全に映画にどハマりしてしまい、最新の話題作「タイタニック」を観に行こうと決めていた。


 内容が事前に知ってしまうと面白さが半減してしまうので、あまりテレビは見ないようにしていた。


 田川君の家には元々テレビが無いので、彼も内容は知らないだろう。


 ・・・18時、事務所に何時もの終業を告げるチャイムが流れてくる。


 5分前からもう既に帰りの支度は出来ている!いつもは所長が、


「お疲れ様」


 と先に出て行くのではあるが、今日は僕達の方が早い。


 向こうから田川君が僕達の部屋にやってくる。


「所長、お疲れ様でした!」


 (はや)る気持ち抑えつつも、足早に僕達は駅へ向かった――。


「お腹が空くから、先にご飯を食べてそれから観ようか?」


「うん、そうしよう」


 田川君も嬉しそうだ。


 ・・・金曜の夜の梅田(うめだ)はとても混んでいた。きっと何処の店も満員かもしれない。


「じゃぁ、あそこにするか?その前にミックスジュース飲まへん?」


 僕がそう田川君に告げると、


「おっけー!」


 まだ、「あそこ」しか言ってないのに、"阿吽(あうん)の呼吸"で田川君には不思議と伝わるのだ。いや、大体僕が決めて、その殆どに田川君は「いいよ」と行ってくる。


 長年連れだった夫婦のような漫才師の相方のような、そんな切ってもきれないような間柄、これが「親友」というものかも知れない...。


 僕達は梅田の地下、8方向全てに繋がっている阪神電車の改札の方に向かっていった。


 別に阪神電車に乗車する訳ではないが、改札のある裏側、通りから隠れた場所に僕達の目当てのミックスジュース屋さんがある。


「元祖大阪梅田ミックスジュース」1杯200円!激安だ。


 日本中探してもこれ以上に安いミックスジュース屋があるとは思えないほど、安い。1969年つまり僕が生まれるもっと以前から値段が据え置きらしい。


 僕達は此処で喉の渇きを麗し、取り敢えず映画館から程近い、最近お気に入りのカレー屋さんを目指す。


 思えばこのカレー屋さんとの出会いも衝撃的だった。


 今日みたいな混雑している休日、僕と田川君は建築専門書籍が充実している本屋、「旭屋(あさひや書店」で数冊の建築雑誌を購入し、その帰りお腹が空いていたので何処か店に入ろうとしたが、休日の午後という事もあり、何処もお客で溢れかえり、少し待つ必要があった。


(...面倒だなぁ...。)


 混んでいる地下街をふらふら歩いていると、右側の狭い通路の奥の方にひっっそりと佇んでいる一つの看板に目が留まった。


 ・・・何か書いてある...。


 "あなたは、本当に美味しいカレーを食べたことがありますか?"


(...あぁ、出会ってしまったからには行くしかない...。)


 このキャッチフレーズに心を鷲掴(わしづか)みされてしまった僕と田川君はいそいそとその店に吸い寄せられて行った...。


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